心身の声に、耳をすませて
身体についてのひとりごと
ふと氣がつくと、身体が悲鳴をあげている。 そんな経験は、ありませんか。
私がはじめて自分の身体と深く向き合うことになったのは、出産後のことでした。
産後まもなく、亜急性甲状腺炎で入院することになり、その時に、ずっと体に隠れていた橋本病が発覚したのです。それまで氣づかなかった身体のサインが、出産という大きな出来事をきっかけに、一氣に表面に出てきたのだと思います。
そこから、私の身体は少しずつ悲鳴をあげるようになりました。
髄膜炎で入院したこともあります。 慢性疲労症候群といわれたこともあります。 そして今は、橋本病、シェーグレン症候群、子宮腺筋症、子宮筋腫とつきあいながら、ちょうど更年期の時期も重なって、ホルモンの揺らぎの大きい日々を過ごしています。
いま振り返っていちばん苦しかったのは、子どもがまだ小さかった頃の入院でした。
病室のベッドのなかで、天井を見つめながら、 「この子のそばにいてあげられない」 「早く帰って、抱きしめたい」 「母親や旦那に子どもをみてもらえることはありがたい、感謝」そんな思いがこみあげてきました。
もっと苦しかったのは、「この病氣が、いつ回復するのかわからない」「私が居なくても子どもは育つことは承知してる…」「でも寂しい」「怖い」「何で私がこの病氣になったの」という感覚だったかもしれません。
明日には動けるようになるのだろうか。 一週間後には? 一ヶ月後には? それとも、このまま……?
先の見えない不安が、焦燥感となり、やがて恐怖感に変わっていきます。
「何もしてあげられない」 「もう、前のようには戻れないのではないか」 そんな思考が、ぐるぐると頭の中をめぐっていました。
身体がつらいだけでも十分しんどいのに、そこに「こころ」の苦しさが重なると、ほんとうに行き場がなくなってしまうのですね。
あのときの私は、たしかに、ひとりで抱えていました。
看護師として、そして公認心理師として、私はずっと「ひとの心身を支える」仕事をしてきました。けれど振り返ってみると、いちばん後回しにしていたのは、自分自身の心と身体の声だったのかもしれません。
毎日、自分の心身の声を聴くこと。 当たり前のようで、いちばん難しかったこと。 そのことに氣づかせてくれたのが、これまでの病氣たちでした。
今の私が大切にしていることを、少しだけ書いておきたいと思います。
ひとつは、しっかり眠ること。 睡眠は、神経系を整えるうえでとても大切です。こころの安定にも直結します。眠ることを、いちばんの「セルフケア」として置くようになりました。
ふたつめは、自分の氣もちに素直になること。 「こうあるべき」「こうしなければ」の声よりも、「今の私はどう感じている?」という声のほうに、耳をすますようになりました。
みっつめは、自分自身に許可を出すこと。 休んでいい。弱音を吐いていい。今日は頑張らなくていい。 そんなふうに、自分にやさしい言葉をかけてあげられるようになってきました。
よっつめは、誰かに想いを話すこと。 ひとりで抱え込まず、ほんの小さな「しんどい」「こわい」「さみしい」を、信頼できる誰かにそっと話してみること。
話すことで、答えが出るわけではありません。病氣がすぐに治るわけでも、不安が消えるわけでもありません。けれど、「ひとりで抱えていたもの」を、誰かと「一緒に見つめてもらえた」という感覚は、それだけでこころを支えてくれます。
話すということは、自分の氣もちを、自分の外に出してあげること。 そして、「ひとりじゃないよ」と自分自身に教えてあげること。
いざ自分が「聴いてもらう側」になってみて、あらためて感じたのです。
話すことには、こんなにも大きな力があるのだ、と。
そして、「今ここ」を大切に生きること。 先のことを心配しすぎず、過ぎたことを悔やみすぎず、 いま目の前にある、ちいさな有難さを感じること。
病氣は、つらいものです。 けれど同時に、大切なことを、たしかに教えてくれました。
もしいま、この記事を読んでくださっている方が、 身体のことで苦しんでいたり、 先の見えない不安のなかにいたり、 自分のことを後回しにしてしまっていたら、どうか、あなた自身の心身の声に、そっと耳をすませてみてくださいね。 そして、その声を、信頼できる誰かにそっと話してみてくださいね。
あなたは、ひとりじゃないから。

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