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金目鯛と、目が合った。

スーパーの魚売り場で
それは起きた。

冷蔵ケースの隅に
でーんと鎮座する金目鯛のお頭。
オレンジ色の大きな目が
こちらをじっと見ている。
視線を感じた。

私も見た。

向こうも見ている。

「……買う?」と目が言っている気がした。

すごい存在感。
負けた。かごに入れた。
魚に論破されたのである。

家に帰って煮付けにした。
しょうゆ、みりん、酒、砂糖。
生姜も入れた。えらい。私はえらい。

ところが鍋の中でも
あいつはずっとこちらを見ているのだ。

ぐつぐつ煮られながらも
目だけはしっかりしている。
「どうだ」と言っている。
なんなんだ、まったく。

器に盛って、生姜をのせた。

おいしかった。
こってりして、やわらかくて
とてもおいしかった。

食べながらも目と合った。

最後まで目と合った。

ごちそうさまでした、と私は言った。
こんなに真剣にお礼を言ったのは
久しぶりのことだった。

まあ、いい買い物だったと思う。
たぶん。

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