光と闇で変化する身体 高校生編 #1
S高校合格発表の日
掲示板の前は、人で埋まっていた。
白い紙に並ぶ番号を、みんな必死に探している。
葵は少し離れたところで立ち止まった。
心臓が、やけに静かで、逆に怖い。
「……行こっか」

隣で結が小さく言う。
二人で、一歩ずつ近づく。
紙が視界に入る。
番号の列が、ぼやけて見える。
(……あったらいいな)
そのくらいの気持ちで、
でも本当は、強く願いながら。
――見つけた。
自分の番号。
一瞬、理解が遅れる。
それから、じわっと実感が追いつく。
「……あった」
声が、かすれる。
すぐ隣で、結も息を飲む気配。
「……葵、私も」
その一言で、全部がほどけた。
二人は顔を見合わせて、
言葉にならないまま、笑った。
冬の空気が、少しだけやわらぐ。
(ここに、行けるんだ)
どの自分でも、
息ができる場所へ。
春、新しい日
S高校の登校初日。
クローゼットの前で、葵は少しだけ立ち止まる。
スカート。
パンツ。
シャツの色も、組み合わせも自由。
(……どうしよ)
迷う。でも、怖くはない。
“決められる”から。
今日は、少しだけ柔らかい気分だった。
だから、シンプルなトップスに、
軽く揺れるスカートを合わせる。
鏡の前に立つ。
(……いいかも)
誰かの正解じゃなくて、
“今日の自分の正解”。
玄関を出ると、
春の風が少しだけあたたかい。
待ち合わせ場所には、結がいた。
「おはよう」
振り向いた結は、
パンツスタイルに、ゆるめのシャツ。
少しボーイッシュで、でも柔らかい。
一瞬、お互いを見て――
「……似合ってる」
ほぼ同時に言って、
少し笑ってしまう。
前みたいに、戸惑いはない。
ただ、“その日の相手”を受け入れるだけ。
「今日、どんな感じで過ごす?」
結が自然に聞く。
「うーん……
とりあえず、楽しむ」
「いいね、それ」
並んで歩き出す。
男の日でも、
女の子の日でも、
中性の日でも。
どの日でも、
この道は同じように続いている。
S高校の門が見えてきた。
新しい場所。
でも、不思議と怖くない。
(ここなら、大丈夫)
そう思えたのは、
きっと一人じゃないから。
春の光の中で、
二人の影が、並んで伸びていた。
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