違法民泊への対策はなぜ進まない?中央区の現状はどうなっている?
ほづみゆうきです。今回は、さまざまな報道や住民の声を通じて関心が高まっている「違法民泊」について。
中央区に限った話ではないですが、最近民泊ではないかと思われる利用や、見慣れない人の頻繁な出入り、ごみ出しや通行の問題などに不安を感じているという声を耳にします。こういう記事が出て、とりわけ晴海フラッグでは話題になったところです。
この記事は1年前のものですが、現状においても分かりやすい形での逮捕や営業停止などといった処分は行われていないのが実態なのでご批判もいただいております。区民の皆さんの立場からすると、「困っているなら、 なぜすぐ止められないのか」と思うのは自然な流れです。
とはいえ、仕組み上やや難しい部分があるのと、実際には多少なりとも動いている部分はあったりもします。今回は、わたし自身が議会で確認した中央区の現状とあわせて、違法民泊の取締りがどのような仕組みで行われ、なぜ遅々として進まないように見えるのかも含めて整理してみることにします。
中央区の現状
行政としての所管はそもそもどこになる?
まずは基本的なところからで、この民泊の行政の中での所管について。この民泊の許認可や取り締まりを東京都がやるのか、もしくは中央区がやるのかといった話です。
一般論として、民泊に関係する法律である住宅宿泊事業法や旅館業法での許認可等の権限は都道府県側にあります。ただし、例外的に中央区を含む特別区(いわゆる23区)には保健所が設置されており、これらの業務も区が担うことになっています。
一方で、違法な営業をずっと続けるなど悪質な事案に対しての取り締まりは警察との連携で行うこととなっています。
この役割分担については様々にすでに明らかになっていますが、直近の文書では厚生労働省は2026年1月の通知では以下のように整理されています。

違法な民泊に対して、都道府県知事等(この中に区長も含まれる)に対し、無許可営業者への報告徴収、立入検査、緊急命令の権限を十分に活用すること、さらに、繰り返しの指導にもかかわらず違法な民泊サービスを続ける悪質事案については積極的に警察に情報提供し、取締りを求めることを示しています。
なお、「繰り返しの指導にもかかわらず」と限定されていること、そして「警察に求める」となっている部分がポイントで、区は基本的にこの問題に対応する権限が委ねられているものの、即座に対応できるというものにはなってません。ここが後述しますが、なぜすぐに対処できないのかという点に関わっています。
そもそもの中央区における民泊
次に、中央区における民泊のルールについても整理しておきます。
中央区は民泊に対してかなり厳しいルールを設けている自治体です。区のWebサイトに明記されているとおり、中央区では区内全域を制限区域としており、住宅宿泊事業、いわゆる民泊新法に基づく民泊は、原則として「土曜日正午から月曜日正午まで」の宿泊に限定されています。

図示してみるとこんな感じ。

特に、この期間の設定は厳しいものです。土日の営業しか認めないということで、平日にしていたらそれ自体でもはや「違法」な営業ということです。
この4月に墨田区では運営が厳格化で似たような制限をかけるようですが、中央区は以前からこのような形となっています。
なお、民泊を行うためには届出を行うことが必要で、この届出されている施設は中央区のWebサイトにリストが公開されています。

現時点で最新のリストは2025年10月31日時点のもので、このリストによれば105件。このリストにないところで営業をしていれば、これもまた即座に「違法」という扱いです。ちなみに、「晴海」エリアに届出をされた住宅はゼロ。「晴海で民泊」という時点で違法ということです。
現在の通報状況は?
基本的なルールは上に書いたとおりですが、これまでに書いたとおり中央区で話題となっているのはこのルールに則っていない違法な営業。これに対しては区民の方などからの通報を受け付け、中央区が随時対処するということになっています。
この状況は特段どこにも公表されているものではないことから、3月の予算に関する委員会においてその状況を確認しました。その結果がこちら。
通報件数:18件
対応中:4件
完了:14件
違法性確認:1件
通報されたのは合計18件で、違法性が確認されたものが1件。こちらについては管理会社などの協力を得て滞在者への調査や部屋の所有者に対する指導を行っている、ということでした。
反対に言うと、まともに対応されているのは今年度は1件だけとも言えます。「少なすぎる!」とお思いの方もおられるでしょうが、これが現実です。過去にこれまでの状況も議会で聞いているのですが、2018年以降で違法性が確認できたのはわずか4件のみ。今回の件がおそらく5件目です。

なぜ遅々として進まないのか?
手続き上の段取りの問題
「違法性が確認できたものが1件」ということで、1件であったとしても違法性が確認できたのならばなぜさっさと取り締まらないのだ!とお思いかと思います。たとえ1件であったとしても、中央区の中で取り締まりが毅然として行われたならば、現状で違法な営業をしている人たちに対しては「次は自分になるかもしれない」といった牽制になるでしょう。
しかしながら、すぐに対応というわけにはいかないというのが実際のところのようです。先の通知にも警察の取り締まりの対象とされているのは、「都道府県知事等による繰り返しの指導等にもかかわらず、無許可営業を改善せず、依然として違法な民泊サービスを提供し続ける悪質な無許可営業者」。

「繰り返しの指導等」を行っても改善しない「悪質な無許可営業者」とみなされなければ取り締まりの対象にはならないということです。
実際のプロセスとしてはまずは相談や通報を受けて現地確認や状況証拠の収集を行う。そこで違法性が確認できれば改善指導。それを何度も実施しても従わないということが明らかである場合にのみ措置命令等の行政処分を行うことができるということです。こんな流れです。
1.「相談や通報を受ける」
↓
2.「現地確認や状況証拠の収集」
↓
3.「改善指導」
↓
4.「悪質な場合は告発・処分」
したがって今年度に違法性が確認できた1件というのは上記の「3.」の段階にあるものです。この段階に至ったものが区内の実績としてもほぼないはずで、この1件は貴重な1件。改善指導にもかかわらず今後も違法な営業を続けるといった行為が確認できれば「4.」に至ることになるはず。ぜひ、しっかりと監視していただきたいところです。
なぜそうなっているのかという点については、立入検査や営業停止などの措置が営業する人たちの権利制限に繋がりうるというところからのようです。厚生労働省のFAQでも、無許可営業者への報告徴収や立入検査は事業者の権利の制限を伴うことから、「旅館業が営まれていることが明らかな場合」を基本に想定しているとあります。

住民感覚では「違法ならすぐ止めてくれ!」となるのですが、行政実務では違法性の確認と手続を積み重ねながら進めざるを得ない。だからこそ、表からは動いていないように見えるという面があります。
京都市での民泊関係での事例
この取り締まりに関して、違反している内容は異なりますが京都での事例は参考になります。京都市は4/17に条例で定めた民泊施設への駐在義務を怠ったとして事業者に対して30日の営業停止命令を出しました。
この命令に至るまでに京都市は繰り返し指導していたものの、それでも違法な形での営業が確認されたことから今回の措置に踏み切ったことと記事中に触れられています。以下のような記述もあり、異例な内容のようです。
市に届け出をしたり許可を受けたりしている民泊で市が営業停止を命じるのは初。自治体による民泊への営業停止の行政処分は極めて異例とみられる。
京都市でもこれらのプロセスを辿った上で今回の営業停止命令に至ったということは、これらの措置に対して相応のハードルがあるということを示しています。
現状で進んでいる取組は?
なかなか歯がゆいところではありますが、それでは何も変わっていないのかというとそういうわけでもありません。
厚生労働省の対応
これまでこの記事で取り上げてきたのが厚生労働省の通知。これ自体が2026年1月に発出されているように、この違法民泊の問題に対してより強いスタンスで臨むという意思の現れといった内容になっています。

「警察を始めとする各関係者との連携強化を図っていただき、これまで以上に実効性のある指導等を行っていただくようご協力を」とあります。
また、この通知には過去の事例を踏まえての具体的な命令や罰則等の事例の記載もあります。

民泊に関する過去の通知としては2015年に「旅館業法の遵守の徹底について」といったものがあったようですが、これはかなりふわっとしたことしか書いていませんでした。

これと比較すると2026年1月の通知は警察との連携について明示している他、罰則等も実例をまとめて示しているなどかなり具体的な内容となっています。実効性は今後の運用次第ではありますが、これは以前より一歩踏み込んだメッセージと言って良いでしょう。
東京都の対応
また、東京都では2026年度の予算で民泊施設に関する苦情や通報を一元的に受け付ける専用窓口を設置することになりました。

これは苦情などを電話やAIチャットで相談を受け付けるもので、今回取り上げている無許可での営業に対する通報にも対応するようです。
これによって、住民の側で「どこに言えばいいか分からない」という壁が少し下がることになること、そしてそれによる通報件数の増加が期待されます。
中央区としてできること
最後に中央区としての部分。中央区として取り立てての新たな取組があるわけではないですが、昨年の報道以降は区民の皆さんに加えてわたしを含め複数の議員からも関連の質問が出てきていることもあり、取り組まなければならない問題という思いは出てきてると思います。
先に挙げた厚生労働省の通知は悪質な事案に対しては断固とした処分を求めるもので、処分を前向きに行うことの後押しとなるでしょう。また、東京都の相談窓口が設置されることで通報件数はさらに増加することになるでしょう。
わたしとしてはこれらの状況変化をしっかり踏まえて、対処が十分に行われているのかという点を今後もチェックしていきます。
最後に
今回は、中央区における違法民泊の現状とそれに対する国や都の動きについて整理してきました。
本来、住宅であるはずのマンションの一室が不特定多数の旅行者等によって利用されることは騒音やゴミ出しの問題のみならず、マンションのセキュリティ低下を招き、区民の平穏で安全な生活を脅かす深刻な事態です。
一方で、実際の取締りは証拠の確認や法的手続が必要で、どうしても時間がかかります。この点は今回説明してきたところですが、なかなか歯がゆいところ。とはいえ国や都でも課題意識をもって少しずつであれ変わってきている要素はありますので、区としてもこれらを受けて毅然とした対応を行うことが求められていると感じます。
わたしとしても、議会で引き続き現状を確認しながら、実効性ある対応につながるよう取り上げていきます。気になることや、お困りのことがあれば、ぜひご相談ください。

