処女と童貞の非対称性・愛と性の価値観に潜むジェンダーのゆらぎ

童貞にこだわる女性はいるのか――“初めて”をめぐる男女の心理差

 前回の記事では、「処女性にこだわる男性心理」について取り上げました。
“自分が最初の男でありたい”という欲求の裏には、本能的な独占欲や比較への恐れ、社会的な観念などが絡み合っていました。

 では反対に―
「童貞である男性」を好む女性は、存在するのでしょうか?
 この問いは単なる興味本位ではなく、男女の愛と性に対する価値観の違いを浮かび上がらせる興味深いテーマです。


■ 「童貞を好む女性」は少数派――だが確実に存在する

 一般的な傾向として、女性が「男性の性的経験」を重視する割合は、男性が「女性の性的経験」を重視する割合よりも低いとされています。
 これは多くの調査でも示されており、たとえばアメリカの社会心理学者デイヴィッド・バス氏の研究では、男性はパートナーの性的独占を強く意識する一方、女性は「誠実さ」や「安定感」「思いやり」をより重視する傾向があると報告されています。

 とはいえ、「童貞の男性を魅力的と感じる女性」がまったくいないわけではありません。
 その心理には、いくつかの特徴的な傾向が見られます。


■ “自分が初めての女”という優越感と安心感

 まず挙げられるのは、「自分が初めての相手である」という特別感です。
 この感覚は、男性が“処女性”に価値を感じる心理と非常に似ています。

 女性の中には、「自分だけを見てくれる」「他の女性と比べられない」という安心感を求める人もいます。
 また、“初めての相手”になることで、相手の中で唯一無二の存在になれるという自尊心の満たされ方もあります。

 ただし、ここには「相手を支配したい」というよりも、「大切に思われたい」という愛情欲求の側面が強いように感じます。


■ 「経験がない=誠実そう」というイメージ

 次に、童貞男性を「誠実」「一途」「純粋」といった肯定的イメージで捉える女性もいます。
 過去の恋愛経験が多い男性に対して「遊び慣れている」「浮気しそう」と警戒する女性は少なくありません。

 特に恋愛で傷ついた経験のある女性ほど、誠実で安全な関係を求める傾向が強くなります。
 そのため、“性的に未経験である男性”を「安心できる人」と感じることもあるのです。

 一方で、そうした女性の多くは「童貞だから好き」というよりも、「誠実そうな印象があるから好き」というニュアンスであり、童貞であること自体が目的ではないケースがほとんどです。


■ 「未完成な男性を育てたい」心理

 一部の女性は、「自分色に染められる男性」に魅力を感じます。
 これは心理学的に“母性的欲求”や“支配的愛情”と呼ばれる傾向に近く、「自分が導く存在になりたい」「成長を一緒に見届けたい」という動機から生まれる感情です。

 童貞男性は、恋愛や性においてまだ形が定まっていない“原石”のような存在。
 それを磨き上げるプロセスに喜びを感じる女性も確かに存在します。

 しかしこれは恋愛対象というより、育成欲求や優越感の延長線上にあることも多く、必ずしも“本気の愛情”とは一致しません。


■現代における“童貞”という価値の変化

 近年では、性経験がないこと自体が「恥ずかしい」「未熟」とされる風潮が弱まりつつあります。
 特に若い世代では、“自分のペースで生きる”という価値観が広がり、「経験の有無」よりも「誠実であるか」「心地よく関われるか」が重視される傾向にあります。

 また、性的少数者の理解が進む中で、“多様な性のかたち”が受け入れられつつあることも背景にあるでしょう。
 このような社会変化の中で、「童貞=劣等」「処女=純潔」といった旧来的なラベルの意味は、少しずつ薄れつつあるように思います。


■ 「初めて」よりも「これから」を重んじる愛へ

 結局のところ、男女問わず「初めて」に価値を感じるのは、相手の“過去”ではなく、“自分だけが特別でありたい”という人間の根源的な願望の表れです。

 しかし、成熟した恋愛とは“過去を問わないこと”でもあります。
 誰かの「最初」になるよりも、

“これからの人生を共にできる最後の人”であること

 そこにこそ、本当の意味での愛の深さがあるのではないでしょうか。


 童貞にこだわる女性は、確かに存在します。
 しかし多くの場合、そのこだわりの根底には「安心したい」「信頼できる関係を築きたい」という心理があり、それは単なる性的価値観ではなく、“心の安全基地”を求める感情です。

 そしてその意味では、男性が処女性に惹かれる心理も、女性が童貞に惹かれる心理も、どちらも結局は、「愛されたい」「唯一でありたい」という普遍的な欲求の、異なる形の表現なのかもしれません。

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