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組織は「言葉の定義」でつくられる──なぜMIMIGURIは「ファシリテーション」の定義を改訂したのか?

会社を経営していると、組織には自然と「馴染みの言葉」が生まれてくるものです。私たちMIMIGURIであれば、「創造性の土壌を耕す」「冒険的世界観」「探究」などといった言葉です。

これらは「共通言語」は、自分たちのカルチャーの土台になる一方で、長く使えば使うほど、思考を停止させる「マジックワード」になるリスクも秘めています。

共通言語に体重を預け続けると、人によって解釈もズレてきます。理念の解釈が多様であることは素晴らしいことなのですが、あまりにパースペクティブがズレてしまえば、コラボレーションの触媒としての機能が消失します。

たとえば、創業期に掲げた「挑戦」という言葉の解釈が部門や世代を超えてズレれてしまった結果、過度に言葉が神格化されて、実態として誰も挑戦しなくなってしまった….みたいな話もよく耳にしますよね。

ですから、組織づくりにおいては、「共通言語をつくる」ことと「その言葉の定義を見直す」ことを同時にやり続けなければいけません。

MIMIGURIが「ファシリテーション」を再定義した理由

MIMIGURIでは、半年に一度の全社総会で、自分たちの言葉を見つめ直し、再定義する機会を設けています。

そのたびに「また安斎さんが理念を再解釈してる(笑)」「また定義が変わったぞ!」とメンバーからツッコミが入るのですが、これも組織のアイデンティティを保つための重要なルーティンになっていると感じています。

そんなMIMIGURIが、最近向き合っている言葉があります。それは、私たちの事業を支える最重要技術である「ファシリテーション」です。

創業以来、これまで私たちは「デザインファーム」とか「文科省認定の研究機関」とか「組織に強いコンサル会社」だとか、自己紹介の仕方を模索してきたのですが、最近はあらためて「ファシリテーター集団」であるというアイデンティティを強めています。

ところが「ファシリテーション」は、長く使ってきた手段だからこそ、MIMIGURIの内部でも解釈は多様です。

いわゆるワークショップやプロジェクト進行するメンバーは「自分がファシリテーションをしている」ことを実感しやすいのですが、クリエイティブをつくるデザイナー、プロダクトに関わるエンジニアやマネジャー、コンテンツメイカーからマーケター、経営企画やコーポレートまで、それぞれが実はファシリテーターとして、これからの時代の価値創造を牽引するポテンシャルを秘めているという認識を強めたい。

そこで先日の全社総会では、この言葉を再定義する時間を設けました。

2020年の「ファシリテーション」の定義を振り返る

僕の代表作『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』では、以下のように「狭義」と「広義」のファシリテーションを定義していました。

  • 狭義のファシリテーション:ワークショップの司会者として、参加者に問いを投げかけ、創造的な対話プロセスを支援する行為

  • 広義のファシリテーション:問題の本質を捉え直し、解くべき課題を定義し、その解決プロセスに伴走すること

これはこれで当時考え抜いた定義なのですが、いまMIMIGURIが組織づくりの経営コンサルティングを通して体現している価値を考えると、どうもこの定義だけでは本質を捉えきれていない感覚があったのです。

2025年に改訂した「ファシリテーション」の新定義

そこで、2025年版として、ファシリテーションを以下のように再定義してみました。※あくまでMIMIGURIの定義です

「ファシリテーション」とは:
適応課題に起因するズレを解消することで
共同的な探究を支援する方法論の総称

この定義には、2つの大きなこだわりが詰まっています。

定義のこだわり①:生成AI時代、組織には「適応課題」が急増する

まず定義文の前半の「適応課題に起因するズレを解消する」についてです。

適応課題とは、人間の内面や関係性によって起こる問題のこと

適応課題とは、組織のメンバー間の関係性や内面、つまり目に見えない部分で起こる問題を指します。

拙著『冒険する組織のつくりかた』では、適応課題の特徴を「ズレ」と表現しましたが、具体的には言葉の定義や解釈などの「意味のズレ」、そして役割期待や期待値などの「期待のズレ」、そして仕事における意図やコミットメントなどの「動機のズレ」などがあります。

こうした人間の内面や関係性において発生する「ズレ」は、どんなに親しくても、どんなに能力が高くても、人間が集団で働く以上、必ず発生します。

AI時代、組織にはこれまで以上に適応課題が多発する

そして、これからさらにAIが発展して、多くの仕事に浸透するほど、職場の人間関係やモチベーションに関する「目に見えないズレ」は急増していくと考えています。以下の記事でも考察した通り、AI時代とは、人間が暴力的にプロセスから置き去りにされながら、それでも「やり切る衝動」が鍵になる時代だからです。

こうした時代に求められるのは、人間が、人間の内面や関係性を感覚的に受け止めて、目に見えにくい「ズレ」を解消することにあるとと思うのです。

「合意形成したはずなのに、なぜかAさんとBさんが微妙に噛み合わない」
「合意形成したはずなのに、ずっとあのメンバーはモヤモヤしている」

ファシリテーターは、こういうちょっとしたズレを察知して、可視化して、整えることで、組織の人間関係を健全に保つ役割を担います。これは、これまでのファシリテーションにおいても大切にされた考え方ですが、これからますます強調すべき機能であるため、定義に明言しました。

定義のこだわり②:解くべき課題の解決ではなく、「共同的な探究」を支援する

もうひとつのポイントは、定義文の後半の「共同的な探究を支援する方法論の総称」のところです。

解くべき課題の解決ではなく、顧客/仲間の探究に伴走する

従来の定義では「解くべき課題の解決プロセスに伴走すること」としていましたが、これはやや後ろ向きな姿勢に感じていました。もちろん課題を解決することは重要ですが、それだけでは短期的な成否に視野が留まってしまいます。

MIMIGURIが目指す「冒険的世界観」とは、短期的な課題解決/勝利の達成だけでなく、自分たちの好奇心を資源にしながら、中長期的に物事を楽しめる社会(=誰もが大人になっても探究できる社会)を指しています。

良いプロジェクト/経営とは、共同的な探究である

しかし誤解いただきたくないのは、これはビジネスで利益を出して、「余った時間で好きな勉強をしよう」とか「一人ひとり、楽しく学ぼう」などと言っているのではありません。

僕たちは、組織開発のプロジェクトにせよ、カルチャー変革のプロジェクトにせよ、新規事業開発のイノベーションプロジェクトにせよ、良いプロジェクトは、常に探究的であると考えています。

探究とは、この未知なる世界に好奇心を向けて、「答えのない問い」を立て、そこによりよい仮説を生み出そうとし続ける運動です。これ自体が、価値創造の根源であり、現代経営の鍵になる営みです。

外部環境が不確実で、未来の人間の困りごとや欲望が見通せない現代において、独自の事業を開発し、社会を変革している企業は、必ず「市場でいかに儲けるか」ではなく「社会/私たちにとっての価値とは何か」という視座を持っています。

組織づくりにおいても、単に「どうすればエンゲージメントスコアや心理的安全性が上がるか」に視野を閉じずに、そもそも「良い組織とは何か」「自分たちはどんな組織をつくりたいのか」を考え続けなくてはいけません。

実際に、MIMIGURIのコンサルティングは、クライアントの課題解決にコミットすることはもちろんですが、関わる人の好奇心を尊重・触発して、組織や事業の本質を探究するプロジェクトに変えてしまうポテンシャルを持っていると感じています。

以上を踏まえて、ファシリテーションとは、「課題解決の手段」ではなく「探究支援の手段」であるべきだと考えるようになりました。

そして、探究支援のアプローチは、ワークショップに限定されるものではありません。職種や役割に関わらず、適応課題を解消して、共同的な探究を支援できれば、誰もがファシリテーションが可能になる。だからこそ、「方法論の総称」という言葉を使っているのです。

※さらに踏み込んだ解説はこちらのVoicyも参照ください。


このようにして、自分たちが当たり前に使っている言葉の定義を定期的に見つめ直すことは、形骸化しつつあるかもしれない”共通言語”に魂を込め直して、組織のアイデンティティを再確認する契機になるのです。

MIMIGURIでは、共にファシリテーションを探究する仲間を募集しています。

最後に宣伝です。本記事で示した通り、MIMIGURIでは、ファシリテーションをこれからの時代の重要技術として位置付けながらも、そのアプローチは多様なものがあり、まだまだ発展の途上であると考えています。

MIMIGURIでは、この考えに共鳴する仲間を常に募集しています。冒頭で示した通り、いわゆる旧来的な「ファシリテーター」としての職種に限らず、コンサルタント、プロジェクトマネジャー、エンジニアリングマネジャー、コーポレートマネジャー、マーケティング責任者などなど、「冒険的世界観」や「ファシリテーション」に共感する方は、ぜひ以下のフォームからお気軽にお声がけください!

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