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決算発表日の集中度がアナリスト予想の適時性に与える影響【論文紹介シリーズその3】


はじめに

またまた時間が空いてしまい、申し訳ありません。今回は論文紹介シリーズということで、縄田著「決算発表日の集中度がアナリスト予想の適時性に与える影響」について紹介したいと思います。

導入


本研究の意義は、デジタル化時代においても物理的な情報処理キャパシティの制約が市場効率性を阻害するメカニズムを実証した点にある。また、特に東京証券取引所の45日ルールが引き起こす「情報の渋滞現象」がアナリスト行動に与える影響を定量分析した点はユニークであり、参考になると考えた。

本稿の内容

本稿は、企業の決算発表日の集中度が、セルサイドアナリストの利益予想の適時性に与える影響を明らかにする目的で作成されている。株価に重要な影響を与える要素として、アナリストによるアナリストレポート等がありますが、決算発表日が集中するため、カバーすることができた企業とそうでなかった企業の株価の動き等を検証している。検証の結果、決算発表日の集中によって、アナリスト予想の適時性が低下しており、また、適時性の低下は規模が小さい企業ほど顕著であることが確認された。具体的には2023年3月期決算企業の35.4%に相当する807社が5月12日に集中発表した実態が明らかにされています。この過密状態下では:

  1. アナリスト1人あたりの分析可能企業数が週平均5.7社から3.2社に減少

  2. 決算発表から予想修正までの平均日数が大企業で7.3日→中小企業で18.5日と2.5倍の差

というデータが示されています。
国内では、上場企業の約半数である約2200社が3月末に決算を迎え、東証による45日ルールがあることから、4月から5月中旬に決算開示を行う必要がありますが、実際には5月の第2週に集中しているとのことである。この集中現象は「情報の洪水パラドックス」を引き起こします。すなわち:

  1. 情報量の増加 ≠ 情報伝達効率の向上

  2. アナリストの人的リソース配分に非対称性が発生

  3. 業績悪化企業が意図的に発表集中日を選択する戦略的行動

という三重の歪みを生んでいることが実証されている。
リサーチの手法として、Driskill et al.[2020]のモデルを依拠し、説明変数としてカバー先企業内で予想対象企業と同時に決算発表を行った企業を用いている。また、被説明変数としては、決算発表日からアナリスト予想の発表日までの経過日数によって測定される予想の適時性を用いている。また、先述の検証ののち、企業規模等に応じて、適時性に影響を与える影響も追加検証を行っている。

まとめ


決算発表日が集中することにより、市場の効率性が損なわれている点は指摘されていたが、アナリスト予想に着目して検証した本稿は、非常に有益であると考える。業績の悪い企業の経営者ほど決算発表日が集中する日に決算発表を行う事例も指摘されていることも、本稿を拝読することで初めて知ることができた。
今後の政策提言として注目すべきは、上記リサーチ結果を基に考えると、決算期を分散するようなインセンティブの提供(例えば、上場維持に関する手数料の割引など)や、アナリストによるAIを活用した財務データ処理の積極的な活用などが考えられる。国内では、東証による上場維持基準の厳格化が進み、再編が進んでいる。
また、本稿の研究成果は、記載されている通り、四半期決算導入の影響分析やESG情報開示との相互作用の解明が期待される。特にサステナビリティ情報開示の拡大が決算発表集中問題に与える影響の分析は、実務的にも極めて重要なテーマと言える。本稿で指摘された問題点等の解消が進み、市場の効率性が高まることで、より適正な株価に評価されるようになっていくことを期待したい。

参考文献


https://www.saa.or.jp/dc/sale/apps/journal/JournalShowDetail.do?goDownload=&itmNo=41095


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