LLMに任せっぱなしじゃなくていい─Agent Scriptで変わるAgentforce設計
先日、Community Leader枠でSalesforce Towerに招待いただき、Agentforceプレス・アナリスト向け発表会に参加してきました!
Salesforce Towerでの「Agentforceプレス・アナリスト向け発表会」にCommunity Leader枠でご招待いただいた!
— Yuka_23_www (@Yuka_23_www) February 18, 2026
2/20GA予定のAgentforce Script、新しいAgent Builder、Data360のIntelligent Contextについて、デモや事例を交えた発表。
よりAgentが賢くなる未来が見えた✨️https://t.co/bbcVdRv2Tc
今回の記事では、その中で私が一番「おっ」と思った Agent Script の設計思想 を軸に、感じたことをまとめてみます。
まず、Agentforceの現在地から
発表では冒頭にいくつかの数字が共有されました。
リリースから約1年半で契約数は18,500社以上、前年比330%増。
外部LLMへの発行トークンは3.2兆以上。

正直、このスケール感はすごい。そしてSalesforceはこれを「実験フェーズ終了」の根拠として位置づけていました。
エージェント活用は「試してみる」から「成果を出す」フェーズへ、という宣言です。
本番まで辿り着けない問題がある
その一方で、発表の中で印象的だったのが、こんな言葉でした。
「エージェントを始めても本番まで辿り着けないという顧客の声が多い」

自社製品の発表の場で、この課題を正面から認めたこと。
そこに誠実さを感じるとともに、「あ、やっぱりそうなんだ」という共感もありました。
本番まで辿り着けない理由として挙げられたのが、大きく2つです。
① データが届いていない / 品質が不十分
信頼できるコンテキストが作れないため、エージェントがまともに動かない。
② AIの動作がブラックボックスに見える
「何をするか分からない」という不安が、本番投入を躊躇わせる。
この2つは、Agentforceに限らず、あらゆるAI導入でぶつかる壁だと思います。
Agent Scriptが解こうとしていること
ここからが本題です。
LLM(大規模言語モデル)は、自然言語の解釈が得意です。
でも、それゆえに「必ずメールアドレスを最初に確認する」のような、絶対に外してはいけない手順を守らせることが難しい側面があります。
自然文で「最初にメールアドレスを確認してください」と指示しても、エージェントが確認し忘れることがある。
複雑なプロンプトを書いてもまだ不安定さが残る。これは、LLMの"柔軟さ"と"確実性"はトレードオフになりやすいという構造的な問題でもあります。

Agent Scriptは、このトレードオフを解消するために設計されたスクリプト言語です。
if/elseのような決定論的なロジックをScriptで厳密に定義しながら、自然言語処理が必要な部分はLLMに任せる。
「柔軟性(LLM)」と「確実性(ルール)」のハイブリッドという考え方です。
例えば、返金処理や融資申請のような重要業務では手順を絶対に外せないという現実に対して、Salesforceが出した答えがAgent Scriptだった、ということです。
新しいAgentforce Builderで何が変わるか
Agent Scriptは、新しくなったAgentforce Builder上で使えます。
画面も刷新されて、自然文とScriptが同居するCanvas画面と、Scriptのみが表示されるScript専用画面を行き来できる設計になっています。

個人的に「これは嬉しい」と思ったのが、開発者でなくてもScriptを生成できる機能があること。自然言語からScriptへの変換を、AIが補助してくれます。Agentの設計をもっとチームで議論できるようになりそうです。
また、ScriptをコピーするだけでAgentを複製できる点も、実務での展開速度を考えると嬉しいですね!
Data360のIntelligent Context
もう一つの発表が、Intelligent Contextの強化です。
図や表を含むPDFやマニュアルなどのドキュメントをアップロードするだけで、Agentの回答ソースとして利用できるようになります。
ノーコードで設定でき、Agentでも簡単にセットアップ可能とのこと。


前提として大切なのは、「信頼できるコンテキスト」がなければエージェントはどれだけ賢くても機能しないということです。
Agent Scriptで動きを決定論的にしても、参照するデータや文書の品質が低ければ出力は信頼できない。
Intelligent Contextは、そのデータ品質問題に直接アプローチする機能です。
導入事例が示す、今のリアル
発表の中で、ある企業の内製事例も紹介されました。
(詳細は公開NGなので伏せます!)
約2.5か月でVersion1を構築し、成果も出てきている。
ただし「運用上は人のチェックがまだ必要」とのことでした。
そしてもう一つ、印象的な数字がありました。
お客様と話す前の準備時間が、40分から40秒に短縮されたという事例です。
ここで注目したいのは、Agentが「お客様の前面に立つ」のではなく、人が対応する前の準備を支える形で活躍しているという点です。
関連情報の収集や整理をAgentが担い、人はその内容を確認してからお客様と話す。まさに Employee Agent としての使い方であり、Human-in-the-loop のお手本のような事例だと感じました。
「AIエージェント=お客様と直接やり取りするもの」というイメージを持ちがちですが、人を前に出しつつ、その後ろでAgentが支える設計は、信頼性の観点からも、導入のしやすさの観点からも、とても現実的なアプローチです。
「AIが全部やってくれる!」という期待のまま走ってしまうと、きっとうまくいかない。
スモールスタートで、人のチェックを入れながら範囲を広げていくという進め方が、今の現実に合っていると感じました。
一番大事だと思ったこと
発表を聞いて改めて感じたのは、最後にまとめるとこういうことです。
「AI」や「AIエージェント」って言うと、最初から何でもできると思われがちです。でも実際は違う。
人を採用したら仕事を教える必要があるように、エージェントも最初から完璧には動きません。
少しずつ任せる範囲を広げていく、という手順を理解することが肝要です。
Agent Scriptは、その「任せる範囲」を設計者がきちんとコントロールできるツールです。LLMに全部お任せするのではなく、「ここは必ずこうする」という部分をScriptで担保して、残りをLLMの柔軟性に委ねる。
AIを育てる感覚、とでも言うのかもしれません。
いま担当しているエージェントの設計、「任せる部分」と「絶対外せない部分」がきちんと分かれていますか?
Agent Scriptは、その問いに向き合うための新しい手段になりそうです!
