【エレベーターあるある】静かなエレベーターでお腹が鳴って終わった話
エレベーターで、お腹が鳴りました。
しかも、逃げ場のない静かな空間で。
その瞬間、すべてが終わりました。
そのときはエレベーターには私ひとりだったんです。最初は…
ただ移動するだけの、なんでもない時間で、
ボタンを押して、ドアが閉まって、
あとは目的の階まで運ばれるだけ…
こういうときって、
なんとなく階数表示を見てしまう私…
スマホを見るほどでもないし、
かといって何をするでもない。
あの数十秒って、
意外と手持ち無沙汰な時間。
途中の階で、ドアが開きました。
そして、人が乗ってきました。
――あ、来た。
この瞬間です。
エレベーターって、他の人が乗ってきた瞬間から
急に沈黙の空間になりますよね。
さっきまでただの空間だったのに、
知らない人がひとり増えただけで、
一気に「無言を守る会場」みたいに感じます。
別に誰も
「ここでは絶対静かにしましょう」
なんて言っていないのに、
なぜか全員が自然と口を閉じて、静かに…
あの空気、なんなんでしょう?
何故かは分かりませんが…暗黙の了解みたいな?
しかもその日、私は入口側に立っていました。
……はい、来ました。
ボタン係です。
これもエレベーターあるあるだと思うのですが、
入口付近にいる人って、
なぜか急遽ボタン責任者になりますよね。
誰も任命していないですし
マニュアルもない…
でも、なんとなくその場の空気で決まるといいますか…
「何階ですか?」
小さめの声で聞いて、
言われた階を押して、
誰かが降りるときは「開」を押す。
本来はただ立っていただけなのに、
気づけばその数十秒だけ
エレベーター運営側みたいな立場になっています。
毎回ちょっと不思議です。
そんなことをぼんやり考えながら、
静かなエレベーターに揺られていました。
そのときです。
――まずい。
お腹が鳴りそう。
そういえばお腹空いた…
しかも、
「ちょっと鳴るかも」ではなく、
「これは鳴るやつかもしれない」という、
かなり明確な予感。
静かな場所でお腹が鳴りそうなときって、
急に全神経をそこに持っていかれません?
私、お腹鳴るタイプなので余計に…
頭の中が一瞬でそれ一色になりました…
「今はダメ💦」
「今じゃない…」
「お願いだからこの空間だけはやめて💦」
必死に祈ります。
呼吸を浅くしてみたり、
少し姿勢を変えてみたり、
お腹に落ち着いてくださいと念を送ってみたり…
でも、こういうときに限って、
めちゃくちゃ空気を読まないんですよね…
むしろ
「今が一番いいタイミングですけど?」
みたいな顔で主張してくる。
そして――
ぐぅ〜
……。
…鳴りました。
しかも、思っていたよりちゃんと鳴りました。

小さくもなく、
完全に聞こえる側の音量でした。
エレベーターの中って、
ただでさえ静かです。
機械の低い音と、
たまに聞こえるわずかな作動音だけ。
その中で、お腹の音だけが
妙に生々しく響きました。
…恥ずかしい…
本当にそう思いました。
顔を上げられませんでした。
見られている気がする。
いや、見られていなくても見られている気がする。
隣の人は何も言いません。
でも、その何も言わなさが
いちばん気まずいんです。
たぶん向こうも、
触れないのが優しさだと思ってくれていたんだと思います。
でもその優しさが、
逆にこちらの恥ずかしさを増幅させています。
「今の音、聞こえてませんよ」みたいな
やさしい無言ほど、刺さるものはないです。
何かしなきゃ、と思いました。
でも何をしたら正解なのかわからない。
その結果、
とっさに私が取った行動は――
咳払いでした。
コホンッ。

……いや違う。
絶対違う。
今思えばあれは、
「今の音の主、私です」と
自分から名乗り出たようなものだった気がします。
誤魔化したかっただけなのに、
あの咳払いでむしろ
“今の音、私でした”のテロップを
自分で出した感じがしました。
黙っていれば、
もしかしたらワンチャン
「エレベーターの音かもしれない」
で押し切れたかもしれないのに。
なぜ私は、
自ら補足説明を加えてしまったのか。
あのときの自分に言いたいです。
「余計なことだけはするな」と。
でも、もう遅いんですよね。
エレベーターは何事もなかったかのように
静かに上昇を続けていて、
その数秒だけが異常に長く感じる。
こういうときに限って、
目的の階が遠いのもあるあるです。
やっとドアが開いたとき、
本気で少しホッとしました。
降りる瞬間、
ちゃんと普通の顔をしていたつもりです。
でも心の中ではたぶん、
かなりの速度でその場から逃げていました。
今回のことで、
私の中の「エレベーターあるある」が
また増えました。
・エレベーターは人が乗ってくると急に静かになる
・入口側にいる人は、だいたいボタン係になる
・静かな空間のときに限って、鳴ってほしくない音が鳴る
本当に、なんなんでしょうね。
たぶんこういうのって、
誰にでも一度はある気がするんです。
その場ではちゃんと恥ずかしくて、
あとからじわじわと…
そういう小さいけど恥ずかしい事って、
意外とたくさんありますよね。
静かな美容院とか、
授業中とか、
会議前とか。
「よりによって今?」みたいなタイミングで
身体だけが自由すぎること、たまにあります…
できれば二度と味わいたくないけれど、
たぶんまたいつか、
どこかの静かな空間で私は祈ると思います。
「今だけはやめて」と。
みなさんも、
こういう日常のあるあるや
ちょっと恥ずかしかった事ってありますか?
