優しくされた人は、誰かに優しくしようと思うはず。♯52ヘルツのクジラたち
たった一言に救われることがある。
仕事がうまくいかず、いっぱいいっぱいになった時。
中途入社で頼れる人がまだいなかった。
ふと隣の席の人が、「顔色わるいよ。大丈夫??」
ときいてくれた。
その一言に、あの時心がふっと軽くなったのだ。
この人になら今の悩みを話せそう。
そこから抱えている不安を聞いてもらった。
もちろん状況は変わらない。目の前にある仕事が進むわけでもないし、明日もまた上司に詰められるだろう。
でも、確かにあの時気持ちが楽になった。
もう僕はとっくの昔に、その会社を退職したが、
真っ先に思い出すのは「大丈夫?」と聞いてくれたあの瞬間のことだ。
ふとした優しさは、その人の人生を変えるかもしれない。
そんなことを町田そのこさんの、「52ヘルツのクジラたち」を読んで思いだした。
52ヘルツとは誰にも届かない声のこと
まずはやはりタイトルから引き込まれる。
他のクジラには絶対に聞こえない声を出すクジラがいる。そのクジラは、他のクジラには絶対に聞き取れない52ヘルツの鳴き声だ。
どれだけ泣いても、どれだけ叫んでも一生を通して誰かに気づいてもらえない。
「孤独」の象徴として知られている。
物語の主人公は、両親に搾取され続けた女性、貴瑚。
いわゆる毒親問題だ。
そんな貴瑚が、母に虐待されている少年と出会い、人生をやり直していくという内容。
2021年の本屋大賞となった本作は、声にならない孤独にそっと寄り添ってくれるような本だ。
優しさによって前を向く
僕が印象的だったのは、
親から逃げれないと言う貴瑚に対して、美晴とアンははっきりと「間違っている」と伝えるシーン。
死ぬくらい追い詰めてくるものはもう「恩」とは呼べないんだよ。それは「呪い」というんだ。
この声に導かれ貴瑚はやっと自立へと向かい始める。
泥沼に入ってしまってる時は一人で這い出るのは本当に難しいと思う。
だからこそ優しく力強くサポートしてくれる人の存在が大事だ。
1人ではどうしようもないことはたくさんある。
アフリカでたくさんの優しさに出会った。
アフリカでも、僕はたくさんの人に優しくしてもらった。
南アフリカでバックパックを全部強盗されたとき、なんで?と頭が真っ白になった。
その時に頼った警察の方の優しさを、僕はずっと忘れない。
大泣きする自分にずっと寄り添ってくれた。
命があってよかった!と。
最後にはポケットマネーで、滞在費の援助までしてくれたのだ。
振り返ってみて思い出すのは、
バックパック盗られた悔しさよりも、その警察官の方の優しさの方だ。
あの人と同じように僕も誰かを助けたいと思う。
優しさは伝染していく。
52ヘルツのクジラたちでも主人公は、虐待されている少年を支えるために奔走する。
それはきっと友人達に救われたからだろう。
優しさは伝染していくのだ。
だって優しくしてもらうと、やっぱりその思いをなんとか返したいと思うから。
でもそれをその人に返すなんてやっぱり難しいから、
今度は誰か他の人を支えたい。という思いに変わるのだと、僕は思う。
目の前の誰かを、そっと優しく支えることは、その人の人生を変え、
さらにはその先の人の涙も救うことになるかもしれない。
