春抱きSS「硝子色の疵痕」
ふせったーからの再掲となります。
※少々グロい表現あります。 苦手な方はご注意下さいm(__)m。
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ドラマ撮影スタジオ。成瀬が犯人を追い詰めるシーンのリハーサルが終わった。次は本番。岩城はメイク室で左足首にガラス片が刺さった特殊メイクを施されている。
香藤が心配そうにメイク室を覗き込む。
香藤洋二: 岩城さん、大丈夫?その…メイク、結構リアルだな。
岩城京介: 大丈夫だって。ただのメイクだろ。お前こそ、本番でちゃんとできるんだろうな?
香藤洋二: そりゃあ、もちろん!でも…その、痛々しいのを見ると、ちょっと…。
岩城京介: (笑みを浮かべ)心配性だな、相変わらず。役に入り込みすぎんなよ。これは演技だ。
撮影が始まった。成瀬が倒れ込み、足首の傷口がアップになる。香藤演じる諸田がメスを手に取る。
香藤洋二: (震える声で)メス…、メスだな…。(ゴクリと唾を飲み込む)
岩城京介: (成瀬のセリフで)諸田…、早くしろ…!犯人は…まだ近くにいるかもしれん…!
香藤の手が震え、メスが宙を彷徨う。監督の「カット!」の声が響く。
何度かテイクを重ねるが、香藤はメスを持つ手がどうしても震えてしまう。
岩城京介: (休憩中、香藤に近づき)どうしたんだ?らしくない。あんなに練習しただろ?
香藤洋二: だって…、本当に痛そうで…。こんなこと言うの、おかしいって分かってるんだけど…。
岩城京介: 洋二…、お前…まさか、本気で心配してるのか?俺の足を?
香藤洋二: 当たり前だろ!岩城さんが傷つくのは…見たくない。
岩城京介: (少し照れながら)バカ。これは仕事だ。それに、俺は大丈夫だ。お前は、法医学者・諸田秀一を演じろ。冷静に、的確に、患者を救う医者を。
岩城京介: 大河ドラマで織田信長を演じた時のこと…覚えてるか?あの時の自刃シーン、何度も練習しただろ。あれを思い出せ。痛みは演技だ。俺を信じろ。
香藤洋二: 分かった。もう一度、やる。信じてる。岩城さんのこと、誰よりも信じてる。
撮影が再開された。香藤は深呼吸をし、メスを握りしめる。その表情は先ほどまでの戸惑いを消し、冷静な法医学者のものへと変わっていた。
香藤洋二: (低い声で)成瀬さん、麻酔は無しだ。時間がない。我慢してください。
岩城京介: (苦悶の表情で)ああ…、分かってる…、早く…、早くしてくれ…!
香藤は迷いなくメスを傷口に当て、切開していく。岩城もまた、織田信長の自刃シーンを思い出し、激痛に耐える成瀬を見事に演じきった。
諸田が救急車を呼び、成瀬が搬送されるシーンでこの日の撮影は終わった。
撮影後。岩城は香藤に近づき、肩を叩く。
岩城京介: お疲れ。今日の演技、最高だったぞ。特に、メスを入れる時の顔、マジでゾッとした。
香藤洋二: (少し照れくさそうに)ありがとう。でも…、やっぱり、本当に痛そうだったから…。
岩城京介: だから言っただろ、大丈夫だって。ほら、腹減った。茶碗蒸しでも食いに行くか?
香藤洋二: 茶碗蒸し!いいですね!あ、でもその前に…岩城さん、足…見せてください。
岩城京介: (笑って)ったく、しょうがないな。ほら。
岩城はメイクを落とした足首を見せる。そこには、特殊メイクの跡がわずかに残っていた。
香藤洋二: (岩城の足首を優しく撫でながら)本当に…、何ともなくてよかった。
岩城京介: だから言っただろ。さあ、行くぞ。茶碗蒸しが冷めちまう。
二人は肩を並べて歩き出した。夜空には満月が輝き、二人の未来を照らしているようだった。
