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もう、忘れてしまってもいいのに

空音(そらね)のソラより。


ふいに
思い出してしまう夜があります。

もう二度と会うことのない人。

きっと忘れてもいいはずの出来事が
なぜか心の奥に沈んだまま
ときどき、声もなく浮かびあがってくるのです。

そのたびに
胸のどこかが、すこしだけ
きゅっと縮こまります。

あれは未練ではなく
ただの記憶なのに。

でもね、空を見ていると
思うことがあるんです。

いまの自分の中に
その人の笑い声が
ほんの少しだけ残っている気がして。

そうか、これは
さよならの続きを
心がずっと手のひらに包んでいたのだと
ようやく気づくのです。

やさしくなれなかった自分も
笑いあえた時間も
言えなかったことも

すべて
過ぎていくものなのに。

それでも
時々、あたたかい涙になって
こころをぬらしてくれるから。

私はきっと
忘れなくていいものまで
忘れたくないのかもしれません。

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