舞台 「No Sing, No End!」 観劇レビュー 2025/09/12


公演タイトル:「No Sing, No End!」
劇場:赤坂RED/THEATER
劇団・企画:メトロンズ
脚本:池田一真
演出:中村元樹
出演:赤羽健壱、池田一真、児玉智洋、純、田所仁、川上友里、福井夏
期間:9/10〜9/28(東京)
上演時間:約1時間40分(途中休憩なし)
作品キーワード:コメディ、梨園、コント、笑える
個人満足度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
2016年にNETFLIX『火花』で脚本構成、2017年には映画『火花』の構成協力を務めるなどしてきた作家の中村元樹さんが作演出を務める演劇ユニット「メトロンズ」の新作公演を観劇。
「メトロンズ」は、2019年に東京NSC(吉本総合芸能学院)東京校9期の同期である、中村さんとお笑いコンビ「しずる」「ライス」「サルゴリラ」の7人で結成した演劇ユニットである。
9回目の本公演を迎える今作では、脚本を「しずる」の池田一真さんが担当し、演出は中村さんが担当している。
また「ライス」の関町知弘さんは舞台『ハリーポッターと呪いの子』に出演中のため、客演として劇団「はえぎわ」、「ほりぶん」所属の川上友里さんと「柿喰う客」所属の福井夏さんを迎えての公演となっている。
私自身、「メトロンズ」の公演自体初めての観劇となる(YouTubeでも過去作を視聴していなかった)。
以前から気になっていた演劇ユニットだったのだが、川上さんと福井さんが客演するというのが観劇の決め手になった。
物語は、梨園を中心に繰り広げられるコメディである。
千葉県のとある場所に「岡村梨園」と書かれた看板の梨園がある。
都内から徳則(児玉智洋)と聖(川上友里)という夫婦が梨園にやってきて、ワンオペで梨園を経営する山崎(純)に梨を取ってきてもらう。
そこに近所に暮らす緒形(田所仁)が「岡村梨園」にやってくる。
こんな所に梨園があったかという話をしていると、山崎が持ってきた梨を徳則・聖夫婦は食べてその美味しさに感動する。
しかし、そこに突然囚われの身の秀雄(池田一真)と妻の貴子(福井夏)が姿を現し、山崎にこの梨園を乗っ取られたと訴えるが...というもの。
「しずる」も「ライス」も「サルゴリラ」も、テレビやYouTubeでコントを見たことがある程度で、演劇として観るのは初めてだった。
演劇好きな私の正直な感想は、脚本はもっと面白く出来る要素あっただろうと思ったし、客演の役者の演技に助けられている部分が大きくて、もっと観客を笑わせてくれるような演技を観せて欲しかったというところ。
まず脚本については、劇中で繰り広げた設定をしっかり最後に回収して欲しかったし、それぞれの要素をもっと深めて欲しかった。
たとえば、少しネタバレになってしまうが「岡村梨園」を今まで経営していた秀雄と貴子と秀雄の祖父の間には対立があった訳だが、その設定は非常に物語にする上で面白く出来る部分であるにも関わらずその後はほとんど何も登場しないし、秀雄が音楽をやりたくて東京に出てその姿に貴子が惹かれたというエピソードももっと深掘って面白く出来たのではないかと思う。
色々要素を広げるだけ広げておいて、あまり深掘らずに終わらせてしまうのは勿体無いと思ったし、それをやれば脚本ももっと面白く出来る気がした。
一番謎だったのが、緒形のキャラ設定である。
事情をまとめることを得意とする緒形は、人に恋をするとまとめる能力が劣ってしまうという設定だったが、この設定がメインの物語に対して全く活かされていないように思えて、なぜその設定を入れたのか謎であった。
色々な要素が散乱していて、結局それらが脚本として巧みに回収されていない点に勿体なさを感じた。
ただ、舞台美術に関してはかなり作り込まれていて見応えがあった。
赤RED/THEATERのやや狭めのステージにあそこまで梨園などを盛り沢山仕込んで、色んな仕掛けも用意している点は良かった。
そして終盤になると舞台美術が一気に切り替わって梨の実のある梨園になるのも素晴らしかった。
演技面に関しては、割と無駄な間があるなと思っていて、その間が観客の没入感を削いでいるような気がした。
たとえば、とある登場人物が何か台詞を長々と発している時に、普通の人間であればその台詞に対して周囲の人が何かしら反応をしながら聞くことになると思うのだが棒立ちになってしまっていて、台詞が終わったら次の人が話すみたいな台本をただ進行するみたいな印象を受けたので、もっと空間としてシーン作りをしていかなければいけないのではと感じた。
だからこそ、客演の川上さん、福井さん以外に関しては役者として引き込まれる感じがあまりなかった。
一方で、聖役を演じた川上友里さんの、普段の演劇で拝見する強烈なパワーを持った妻役はとても見事なものだった。
川上さんのあの良い意味での化け物感は川上さんじゃないと出せないよなと思う。
そして、貴子役の福井夏さんも素晴らしかった。
福井さんの何かに歯向かうように演じる姿が格好良くも感じられて素敵だった。
心から素晴らしいなと思う演技を披露できる役者は本当に尊敬する。
福井さんはそのパターンだなと思っていて、観客を自然と引き込む演技に長けていた。
「しずる」が「キングオブコント2025」の決勝進出が決まったタイミングで、タイムリーな形で「メトロンズ」を観られたのは良かったのだが、演劇好きを引き込むにはまだまだ脚本・演技面で試行錯誤を重ねて欲しいと思った。

【鑑賞動機】
あの「しずる」「ライス」「サルゴリラ」が結成したという演劇ユニットということで、第5回公演の『ホームルール』を上演している辺りで初めて知って興味を持っていた。そして今回の上演では、役者として非常に素晴らしくて気に入っている川上友里さんと福井夏さんが出演されるということで観劇することにした。
【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)
ストーリーに関しては、私が観劇で得た記憶なので、抜けや間違い等沢山あると思うがご容赦頂きたい。
暗転が明けると「岡村梨園」の入り口で秀雄(池田一真)が一人でビートを刻むような歌を口ずさんでいる。「テーデン、テーデン、ピーチクチク」と。再び暗転する。
暗転が明けると、千葉県の「岡村梨園」には都内からやってきた徳則(児玉智洋)と聖(川上友里)という夫婦がいた。そこへ、この近くに住む緒形(田所仁)がやってくる。緒形はこんな所に梨園があると梨を撮りに行こうとするが、聖は子供たちに梨を持って帰るのだからダメだと緒形に言う。徳則は聖に対して、そんな失礼なことを言うなと叱り緒形に謝る。緒形はこの近くに住んでいたが、こんな立派な梨園がここにあるとは知らなかったと言う。きっと新しい梨園なのではないかと。
そこへ梨園の経営者である山崎(純)が梨を持ってきて梨園の奥から現れる。秀雄と聖は、山崎が持ってきてくれた梨を食べ始めて美味しいと感激する。あまりの美味しさに聖は我を忘れて狂ったような言動を見せたりする。
しかし、突然「岡村梨園」の右側にある茶色木造の巨大な小屋のような建物の中から、秀雄が顔だけ姿を現す。秀雄は山崎のことを訴える。あいつは自分たちの梨園を乗っ取って監禁したのだと。徳則、聖たちは驚く。
山崎はこう言う。秀雄とその妻である貴子(福井夏)の夫婦で経営する「岡村梨園」は、それまで祖父が経営していた梨園と違って、ネット上でプロモーションをしたりと利益追求に走ってしまったことが許せなくて乗っ取ったのだと言う。4年前から計画していて、近くに梨の実を埋めて育てていたのだと。
それに対して秀雄は、自分たちの祖父はあまりにも利益追求をしない梨園の経営をしていて家族がずっと不満を抱いていたと言う。祖父は、地元の学校などに無償で梨を配ったりして全然家族に対する還元がなくて不満だらけだったと。だから最初は秀雄はどんな梨園の実家が嫌で東京に出て音楽活動をしていた。そこで売れようと活動をしている最中に貴子と出会った。
しかし、秀雄は東京での音楽活動が上手く行かず梨園の実家の跡を引き継ぐことになった。貴子も巻き込まれて千葉の梨園をすることになったということである。
秀雄と貴子の二人はずっと小屋に監禁されていたので、二人を小屋から解放する。
緒形は今までの経緯を要領よくまとめる。まとめが凄いと周囲から称賛されるが、あまりにも先のことまで予見して話して当ててしまうので恐れられてしまう。
緒形と聖は連絡して警察を呼んでくることになる。
徳則の釣り友達には警察の人間もいるらしい。聖は戻ってくると緒形と良い感じの関係になっていて、徳則とは喧嘩をしてしまう。
そこへ、秀雄の同級生で隣の梨園を経営する須藤(赤羽健壱)がやってくる。秀雄と須藤は話していて、「アリ」という品種の美味しい梨を育てようというプロジェクトを始めることにする。
その日の夜、緒形と秀雄は二人きりで話していたが、緒形のまとめの力が弱っていることに気が付く。
暗転する。
2026年2月になる。秀雄と須藤は「アリ」という梨の品種の栽培を試みようとスケジュールを引いてやってきたが、敢えて失敗してそこから学ぶというスタイルを取ったことによって、結果育成に失敗してしまう。そのことについて聖には呆れられる。
では今度は、「アリ」の育成を成功させるためには馬の糞を肥料にしたいので馬を飼育する所から始めようと言う。そして、ハチミツも梨の栽培に必要になるので、養蜂も始めようと言い出す。また同じノリで桃も栽培しようとも言い出す。聖は呆れてしまう。
暗転して2026年5月、馬の飼育、養蜂、桃の栽培にも手を出し始めた秀雄と須藤たちだったが、なかなか「アリ」の栽培は上手く行ってなさそうだった。
そんな中、貴子は「岡村梨園」の祖父が残した品物を整理していると、ラジカセとカセットテープを発見する。貴子はそのカセットテープをラジカセから流してみると、そこには秀雄が幼少期に歌っていた歌声が録音されていた。「ズッチ、ズッチ、ズッチ、ピーチクチク」と言っている。
その録音を聞いた秀雄は、これは自分が小さい頃に歌っていた曲で、この曲を梨に聞かせていたのだと言った。植物には音楽を聞かせると成長に良い効果が与えられることが言われているが、「アリ」の栽培もそれを活かしたら良いのではないかと閃く。
暗転する。
暗転が明けると、ステージ上は梨園になっており、そこには巨大な一つの梨が実っていた。
秀雄、須藤、緒形、徳則、聖、貴子、そして山崎は梨園に駆けつける。徳則と山崎は車椅子に乗って療養中だった。巨大な梨に向かって秀雄が「テーデン、テーデン、ピーチクチク」と歌い出す。梨は音沙汰がなかった。再び秀雄は梨に向かって歌い始める。それに続いて、須藤、山崎、徳則たちも歌い始める。そしてみんなで歌い始めると、梨がパカっと開いて光り輝き始めるのだった。ここで上演は終了する。
きっとこの物語の主題は、みんなで「アリ」という梨の新種を育成するというプロジェクトだったのだろうと思うが、「アリ」プロジェクトが登場したのも物語が始まって中盤以降で、もっとメインに物語として扱っても良かったと思うし、途中の馬を育てる、蜂を育てる、桃を育てるみたいなくだりをもっと丁寧に描写しても良かったと思う。「アリ」プロジェクトをメインするにしては、そのプロセスの描写が薄いし、それ以外の要素が多かった。
そしてそれ以外の要素に関しても、伏線としてちゃんと回収されるのであれば良いが、伏線として活きていない気がした。秀雄の祖父が「岡村梨園」をやっていて利益追求せずに無料で近所に梨を配ってしまった結果、家族あ苦しい思いをしたという設定はもっと上手く活用した方が物語として面白みが出ると思うし、秀雄が音楽をやっていたというのもラストの歌を歌って梨を開花させるくらいにしか活きていなくって、もっとヒューマンドラマが見たかった。ヒューマンドラマ要素が弱いので、脚本に引き込まれるシーンが乏しくその辺りをもっと深掘って欲しかった。
そして緒形のキャラクター設定がよく分からずだった。そもそもまとめが上手いことによって、そんなに人々は感心するだろうか。そのキャラクター設定が不自然すぎるし、それが脚本全体に良い方向に活用出来ていない気がして、どうしてそんな設定を入れたのかよく分からず消化不良だった。

【世界観・演出】(※ネタバレあり)
赤坂RED/THEATERという比較的ステージの狭い劇場に対して、隅々まで舞台装置が作り込まれているイメージだった。そして舞台終盤になると大きく舞台セットが切り替わる演出も素晴らしく手の込んだものだった。
舞台装置、舞台照明、舞台音響、その他演出の順番で見ていく。
まずは舞台装置から。
終盤以外の舞台セットの構造は、下手側に「岡村梨園」と書かれた梨園の母屋の入り口があり、上手側に秀雄と貴子が監禁されていた小屋があった。一番下手側には樹木が複数植えられており、多分梨ではない。その上手側横には緑色の屋根の古びたお店のような建物があり、屋根の部分に「岡村梨園」と書かれている。この建物自体もかなり年季の入った建物のように感じた。建物の中には梨が試食できるように台と腰をかける用のベンチが置かれていた。その奥には人が入っていけるほどの通路があるらしく、山崎は基本的にそこからデハケしていた。
上手側には巨大な茶色い木造の小屋がセットされていた。扉があって、その横に正方形で小さく頑張って人が一人出入り出来るような穴が開けられていた。そこから秀雄と貴子は監禁された後に出てきた。小屋の周辺にも草木がセットされていて、舞台全体がいかにも自然豊かな感じをイメージさせていた。
デハケは、「岡村梨園」の奥に向かう通路と、上手側にあるくらいだった。
終盤になると舞台セットは一気に様変わりする。舞台一面が梨園になって樹木が生い茂った状態になり、網のようなものがステージ全体に張られて、そこに葉が生い茂っていた。そして、上手側にその網の所から大きな梨が一つ実っていた。梨と言われるとちょっとデカ過ぎるような大きな梨で、「アリ」と別名を名付けた方がしっくりくるかもしれない。全員が歌を歌うと、その「アリ」はパカっと開く仕掛けになっていた。
舞台装置自体は色々仕掛けが施されていて工夫があったのだが、終盤で梨園にステージを様変わりする時に人が何かを仕込んでいる感じが薄ら分かってしまったので、もう少しなんとかならないかと思った。しかし、真っ暗な中で作業も出来ないと思うので、今作をやろうとするのならこれが限度かなとも思った。
次に舞台照明について。
舞台照明は、日中と夕方と夜のシーンで照明に変化を入れている点が印象的だった。日中は日差しが強い白や薄い黄色い照明で、夕方はオレンジがかった照明で、夜はブルーの照明で時間帯を表現していた。序盤の秀雄が「テーデン、テーデン、ピーチクチク」と歌っているシーンは夕方だったのでオレンジ色の照明だった。また、秀雄の前で緒形が急にまとめられなくなって戸惑ってしまうシーンは夜だったなと記憶している。
あとは、終盤のシーンで梨がパカっと開いてミラーボールみたいな役割を果たしてキラキラと光輝く演出は良かったと思う。
次に舞台音響について。
BGMは割とよく流れている印象だった。暗転中や劇中でも音楽のあるシーンがあった記憶だった。
あとは、ラジカセからの録音がちゃんとラジカセから流れているように聞こえたり良かった。
最後にその他の演出について。
客演の川上友里さんが良い意味でお暴れ出来るような脚本とシーンを作ったのは良かったと思う。梨を食べて美味しいと感激して暴走したり、草木を纏って登場するシーンはインパクトがあったし、観客の記憶に残りやすいものだったと思う。川上さんだからこそ出来る演技を上手く活かしていた。
「テーデン、テーデン、ピーチクチク」というフレーズは何を着想として生まれたのか気になった。「しずる」の池田が脚本を書いていて頭に浮かんできたのだろうか。気になった。
あとは単純に観劇していて梨が食べたくなった。そろそろ梨の季節にもなって美味しい時期にシーズンとしてもタイムリーなネタを持ってきて上演するという発想は良かった。
ラストで山崎たちがどうして車椅子で登場したのかの理由がよく分からなかった。きっと私が聞き逃してしまったと思うのだが、その辺りの説明をもっとして欲しかったかも。

【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)
「しずる」「ライス」「サルゴリラ」から結成された「メトロンズ」のメンバーと小劇場演劇でお馴染みの客演たちという座組だったが、正直演技は客演の方に助けられている印象を受けた。出し切っている感じは全体的にあるのだが、もっと演劇としての演技の技術を磨いて欲しいなという感じだった。
特に印象に残った役者について見ていく。
まず一番良かったのは、聖役を演じた劇団「はえぎわ」と「ほりぶん」所属の川上友里さん。川上さんの演技は、ハイバイ『て』(2024年12月)、劇団アンパサンド『歩かなくても棒に当たる』(2024年8月)、PARCO PRODUCEのミュージカル『おとこたち』(2023年3月)、ほりぶん『一度しか』(2022年10月)、ワタナベエンターテインメント Diverse Theater『物理学者たち』(2021年9月)で演技を拝見している。
川上さんの演技は、良い意味で化け物のように騒ぎ立てて笑いをとる芝居が非常に素晴らしい印象を持っているが、今作でもそういった川上さんにしか出来ないような演技が披露できる余地を残しながら脚本が作られていて良かった。
夫の徳則に噛み付くシーンや、梨を美味しいと貪り尽くすような仕草はどこか獣っぽくて良かった。さらに、秀雄や須藤が「アリ」の栽培に敢えて失敗している様を見て怒り散らす感じも良かった。
また、草木に覆われた格好で登場するビジュアルもインパクトがあって、川上さんが演じているからこそ成立する演出が沢山あって良かった。川上さんのキャラクター性はこの作品ではしっかり活かされていたと思う。
次に、同じく客演で貴子役を演じた劇団「柿喰う客」所属の福井夏さん。福井さんの演技は、城山羊の会『平和によるうしろめたさの為の』(2024年12月)、柿喰う客『禁猟区』(2022年12月)、しあわせ学級崩壊(※現在は解散している)『終息点』(2021年7月)、柿喰う客『夜盲症』(2020年11月)で演技を拝見している。
福井さんは何かに怒りを露わにするキャラクターを演じるのが物凄く上手くて、特に城山羊の会『平和によるうしろめたさの為の』ではそういう立場を演じていたが、今作でも良い意味でキレキャラが健在で演技を観ていて爽快だった。
夫の秀雄と共に山崎に小屋に閉じ込められた貴子だが、山崎に対する敵意剥き出しな感じとかが好きだった。福井さんが語る台詞は力がこもっていて、観客を引き込む力があって上手いと思う。台詞もしっかり耳に残って良い役者だなとつくづく思った。
また秀雄に対する愛情も感じられて良かった。音楽をやっている秀雄に惹かれて結婚して、結果的に音楽は上手くいかなくて千葉で梨園を手伝う身にまさかなってしまったが、それでも秀雄と別れず懸命に支える力強さ、格好良さがあった。
独特な感じの役で魅力を感じたのは緒形役を演じた「ライス」の田所仁さん。田所さんの演技は、劇場では初めて拝見する。
ミステリアスな感じで容量よく話をまとめるキャラクター性が今作の中では尖っていて目立っていた。ただ、劇中の会話に対してやや不自然なテンポの会話もあって、ちょっと没入感を妨げていたようにも思う。そして、これは脚本上の問題だと思うが、このまとめる能力が秀でているキャラ設定がメインのストーリーにあまり活かされていないように思えて勿体なかった。
迫力という点では、徳則役を演じた「サルゴリラ」の児玉智洋さんも良かった。児玉さんの演技も劇場では初めて拝見する。
妻の聖との夫婦喧嘩は力が入っていて見ものだった。割と声に迫力がある人なので、もっと羽目を外した役をやってもやり切れるんじゃないかと思う。さすがお笑い芸人だと感じさせるコメディ俳優という感じが良かった。

【舞台の考察】(※ネタバレあり)
ここでは、初めて「メトロンズ」の作品を観劇した演劇好きの感想としてつらつらと思ったことを記載しておく。
まずは、「しずる」が9年ぶりに「キングオブコント」で決勝に進出したということでおめでたいなと思う。決勝進出が決まった矢先のメトロンズ『No Sing, No End!』の上演だったので、きっと楽屋では「しずる」の決勝進出を他の役者やスタッフで祝いながらの開演だったのかなと想像する。
「しずる」は、テレビ番組『爆笑レッドカーペット』をやっていた時からよく知っていたので、凄く懐かしい気持ちにもさせてくれた。あの頃は「しずる」も若かったので、その当時と比べると年齢は重ねていると思うが、それにしては若々しい印象も感じた。特に池田一真さんに関してはあまり変わらないなと当時のビジュアルからしても思う。
「しずる」などが「メトロンズ」として演劇団体を結成して活動していたのを知ったのは、第5回公演の『ホームルール』の上演時で、この時色々な都内で上演中の公演を調べていたらたまたま見つかったという感じだった。
その頃から気になっていて、今回満を辞して観劇をしたのだが、脚本が「しずる」の池田さんということで普段演劇の脚本を書く人でないからか、なかなか荒削りな感じが否めなくて勿体無いという印象だった。もっと面白く出来る要素は沢山あるよなと思った。
普段は、中村元樹さんが脚本を担当しているみたいなので、中村さん作演出で今度は観てみたいなとは思うところである。
また「メトロンズ」の所属メンバーも、基本はお笑い芸人でコントがメインの人たちなので、演劇の演技という観点だとまだまだな部分も否めなかった。こういう評価を私は下して良いのか分からないけれど、もっと演劇のお客さんを囲い込みたいのなら、脚本構成、演技ともに見直しが必要だろうなと思う。
「しずる」の池田さんが今作で描きたかったのは、やはり音楽やお笑いな演劇といったエンタメによって救われるものがあることを強調したかったのかなと思う。「アリ」という新種の梨が実ったのは、秀雄をはじめみんなで歌を歌ったからである。歌無しでは、新しい品種を育成することは出来なかったのである。
また、秀雄や貴子は「岡村梨園」の経営に対して利益追求ばかりをし過ぎて山崎に監禁されてしまった。この辺りにも資本主義社会への皮肉が見受けられるなと思った。
タイトルにもあるように。歌わないと終わらないというのは良いなと思った。みんなで歌えばハッピーエンドになる。歌って最高だ。まさにそんなメッセージが強く込められていると感じた。
最近では、ダウ90000の躍進をはじめ、コントと演劇の境界がどんどん曖昧になっていると感じるので、お笑い芸人たちが作る演劇もどんどんレベルアップしてほしい。

↓川上友里さん過去出演作品
↓福井夏さん過去出演作品

