民法(担保物権)(19)根抵当権の処分⑥根抵当権の準共有者の権利譲渡、権利の放棄
【根抵当権の準共有者の権利譲渡】
第398条の14【根抵当権の共有】
① 根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
② 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第398条の12第1項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
前回話した根抵当権の一部譲渡にあっては、根抵当権の共有が生じました。このように根抵当権に共有が生じた場合についての論点が、398条の14第1項に定める各割合の特約や優先の定めの特約、第2項に定める共有する部分の譲渡です。なお、注意を要するのは、根抵当権の共有状態が生じるのは、根抵当権の一部譲渡の場合だけではないということです。つまり、最初の根抵当権設定契約から根抵当権共有の形態で設定する場合も勿論あります。
根抵当権を甲乙で共有している場合において、甲が自分の権利ついて譲渡するに際し、最初に注意すべきは根抵当権の場合、持分という概念がないということです。だから持分の譲渡というのではなく、権利の譲渡というのであって、これは不動産登記法における登記申請書の書き方に影響をおよぼします。
次に注意すべきは、398条の14第2項にあるように、398条の12第1項の規定により権利を譲り渡すことができるということです。398条の12第1項というのは、全部譲渡の場合です。つまり、譲渡する場合は全部譲渡しかできないということです。分割譲渡も一部譲渡もできない。これは、分割譲渡や一部譲渡の場合、それでなくとも細分化された甲乙の権利関係をこれ以上細分化するのを避けるためだと思われます。もっとも、甲のみ乙のみの権利を譲渡するのではなく、甲乙合わせて根抵当権全部を譲渡しようとするときは、分割譲渡も一部譲渡もできることはいうまでもないですね。
次に注意すべきは、これも2項に規定されているように、譲渡するには他の共有者の同意を得なければならないということです。普通の共有であったら、自分の持分を譲渡するのに他の共有者の同意を得なければならないということはないですよね。これはなぜか。よく考えれば分かるところですが、1項に規定するように各共有者はその債権額の割合に応じて弁済を受けるわけですよね。そして、根抵当権の確定前は、このそれぞれの債権額というものが確定していない。甲としては、乙ならば、そんなに債権を生じさせないだろうと安心していたのに、勝手に乙から丙に変わってしまったら不安を抱くはずです。そこで、譲渡には他の共有者全員の同意が必要であるとしているのです。したがって、自由に分割請求もできないということになります。
そして、この共有根抵当権の譲渡については、根抵当権が確定する前でなければできないということ、根抵当権設定者の承諾も必要であるということは、全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡の場合と同様であり、その理由も同じです。なお、利害関係人の承諾も極度額が変わらないのだかっら不要ということになります。
【根抵当権の準共有者の権利放棄】
譲渡でなく放棄になるとどうなるか。その基本的論理構造は譲渡の場合と同じですが、注意すべきは、乙が譲渡する場合には他の共有者の同意と根抵当権設定者の承諾が必要でしたが、放棄の場合はともに不要だということです。乙が放棄してくれたら、甲は単独になるのだから、むしろありがたいわけだし、設定者の負担も減ることになって問題はないからです。あとは同様です。
