日本は本当にジェンダー不平等? 教育分野におけるジェンダーギャップを解説
#YourChoiceProjectの谷口です。本記事では教育分野に着目します。
本記事の導入はこちら:日本は本当にジェンダー不平等?導入編・ジェンダー・ギャップの現状を解説
1.教育分野におけるG7諸国のジェンダーギャップ指数
日本は、教育分野におけるジェンダー平等は比較的高水準であると言われることが多いように思われます。表1(WEF 2024:135, 181, 187, 215, 219, 357, 361)&(WEF 2023:217)を参照すると、確かに識字率や中等教育への入学割合において1位となっています。初等教育への入学割合については、2024年のデータは掲載されておらずわかりかねるため表1では省略しましたが、2023年時点では1位であることが確認できます(WEF 2023:217)。しかしながら、表1(WEF 2024:135, 181, 187, 215, 219, 357, 361)&(WEF 2023:217)で他のG7諸国の順位を見てみると、識字率や中等教育入学割合における1位はそこまでめずらしいことでもないということが確認できます。それを示すように、日本の教育分野における総合順位は146ヶ国中72位でまずまずですが、G7諸国に限ると、フランス、イギリス、アメリカが同率1位であることがわかります。ドイツが91位で日本よりも低い順位ではあるものの、日本はそこまで高順位ではないどころか、むしろ低い順位です。さらには、2023年の順位は47位ですが、2024年の順位は25位下がって72位に位置しているのです。しかし、スコア(WEF 2023:217)&(WEF 2024:219)を見てみると、2023年は0.647ですが、2024年は0.663であり、むしろ平等性は上がっているのです。つまり、日本は平等性が下がったのではなく上がっており、さらに他の国々も日本以上に上がっていることがわかります。
2.日本の教育分野における特異点
日本の教育分野における順位に関して(WEF 2024:135, 181, 187, 215, 219, 357,361)、識字率や中等教育の入学割合での高順位に目が行きがちですが、真に着目すべきは高等教育における入学割合ではないかと考えられます。日本は107位というかなり低い順位に位置しているのに対し、他のG7諸国はすべて1位に位置しています。このことから、日本が有する「高等教育入学割合における大きなジェンダー・ギャップ」は特異かつ深刻であることが見えてくるのではないでしょうか。高等教育の入学の時点でその実情があるならば、その後社会に出て経済分野や政治分野に進出する際にも大きな影響が生じうることは自然です。ゆえに、根本である教育を改善することは他分野における改善にもつながるのではないだろうかと私は考えています。
3.進学率の差は当事者の学力のせい?
山脇・河野によると、日本において男女の進学率が完全平等に達しているのは徳島だけであり、国際的に平等とみなされる水準を超えているのは徳島・熊本・沖縄・東京のみであるそうです(山脇・河野 2024:61)。逆に言えば、残りの43道府県では国際的な平等水準を下回っていると言えます。男女間の進学の差に関して、本来的に学力に性差はないということは注意せねばなりません。図6(OECD 2023:Indicator 1)を参照すると、男女間で数学のスコアに大きな差がないことがわかります。加えて、日本の女子学生のスコアはG7諸国やOECD加盟国の男女の平均よりも高いです。したがって、男女間の進学率の差を当事者である女子学生の学力に責任転嫁するような言説は論外であり、この高水準の学力を損なうような日本の現状は不合理です。

4.大学進学における格差の原因
大学進学における格差の原因について、山脇・河野は①学力や心理的問題など個人に内在する要因と親や教師からの処遇の違い、②本人が身を置く文化的・経済的環境、③地域内の構造的要因を挙げています(山脇・河野 2024:62-63)。また、江森・川崎は①資格重視傾向、②自己評価の低さ、③安全志向、④保護者のジェンダー・ステレオタイプ、⑤地元志向を挙げています(江森・川崎 2024:75-180)。両著に共通して、根本的な原因は当事者である女子学生の進路選択を阻害する親や教師などの大人や社会に内在するジェンダー・ギャップであるとわかります。ゆえに、教育分野におけるジェンダー・ギャップを直接的に解決するためにはたらきかけるべき対象は、当事者である女子学生というよりはむしろ周囲の大人や社会であるという事実がより広く認知されるべきであると私は考えています。
その他の分野の考察は下記リンクよりご覧ください。
【経済分野】
日本はジェンダー不平等? 経済分野におけるジェンダーギャップを解説
【健康分野】
Coming soon
【政治分野】
Coming soon
また、これらの記事の導入である「はじめに」もご覧ください。
日本は本当にジェンダー不平等?導入編・ジェンダー・ギャップの現状を解説
参考文献
江森百花・川崎莉音, 2024,『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』光文社.
OECD, 2023,『G7 Dashboard on Gender Gaps 2023 Japan』,(2025年1月30日取得, https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_g7g8/pdf/g7_summit_2023_01.pdf ).
WORLD ECONOMIC FORUM, 2023,『Global Gender Gap Report 2023』,(2025年1月30日取得, https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2023.pdf ).
WORLD ECONOMIC FORUM, 2024,『Global Gender Gap Report 2024』,(2025年1月30日取得, https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2024.pdf ).
山脇絵里子・河野銀子, 2024,「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数が示す二つの不平等」『世界』985:58-65.
本記事は以下の論稿の表現を改め、再構成したものである。
谷口史恩『ジェンダー平等;日本の現状と国益への影響』(2025年)

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