⑥番外編:AIから切り離されたタイ北部の山に入って考えたこと
前の記事:⑤お土産選び編:AIは娘が気に入るお土産をセレクトできるのか?
今回滞在したタイ北部のパーイは亜熱帯の山に囲まれている。せっかくだから観光名所だけでなくそういう原始的な場所にも分け入りたい。そんな風に考えてGoogleMAPを眺めていると宿泊所の脇に流れている川の上流にポツンと「メーイェン滝」というマークがあるのに気がついた。気になってネットで調べてもはっきりとした情報が出てこない。AIに聞いてみると一応トレッキングルートはあり、川を何度も渡渉しながらトータルで7時間ぐらい歩くことも分かった。異国の亜熱帯ジャングルをガイド無しで一人で歩くのは少し怖さがある。何よりネットが繋がらない山中なのでAIが使えず今回の旅の趣旨から外れてしまう。しかしこれまでAIの言いなりになってきた筆者は少し冒険がしたくなった。

よし、行ってみよう!
タイのジャングルを空想しすぎて肩に力が入る筆者
まず川を何度も渡るので水陸両用の靴が必要だ。地元の雑貨店でおじさんに相談すると薄暗い店の奥から靴を持ってきてくれた。

地元の人が山作業をする時に使うというゴム靴らしい。これがカンフーシューズみたいでイカしている。80バーツで約400円、良いもの手に入れた。
7時間もネットがつながらないジャングルを歩くためまずはしっかりと情報収集と準備が必要だ。AIに気をつけた方が良いことを聞いてみた。

注意する点をAIに聞いてみた
ネット情報が乏しいためかAIも何となく歯切れが悪い。水分を採れとかルートを確認しろといった一般的な話が多い。その中で特に目に留まったアドバイスとしては、①コブラとサルに気をつけろ、②棒を持て、という2点。
コブラ!、、いるのかそんなのが。。
まずは蛇について聞いてみた。

タイコブラ、、強力な神経毒を持つ。更に10メートルのアミメニシキヘビもいるらしい。。こいつらに襲われたらどうしよう。。念の為コブラに噛まれた時の対処法を聞いておく。

まず蛇から遠ざかり、かまれた場所を洗い、患部の上を縛り、心臓より下にして、、、よし対策はわかった。
サルもいるらしいな。サルの対策は比較的大丈夫そうだ。。でももしサルとコブラが同時に襲ってきたらどうしよう。。

まずはコブラの対処が最優先らしい(それまでサルは待ってくれるのか?笑)。サルとコブラが互いに牽制し合う状態を作れば良いのだな。
しかし、腰痛持ちの筆者がもしその時に丁度ギックリ腰になってしまったらどうしよう。。

1.まずはギックリ腰の痛みを抑える
2.視界の端でコブラの動きを確認しながらそっと後ろへずり下がる
3.食べ物をサルの視界内に投げて気をひく
4.腰の負担を避けて四つん這いで移動して逃げる
とりあえずイメージトレーニングのためにこのシーンを描画してもらう

ww「動きが鈍い状態でこの2匹と戦うのはかなり厳しそうだが、乗り切ってほしい。。!」というAIの激励を見て少し気持ちが楽になった。
流石に元コンサルだけあって我ながら頭でっかちだ。しかしこれでサバイバルのシナリオ分析はできた(笑)。
泥だらけになりながら聞こえた名経営者の声
トレッキング当日、スクーターで登山口まで行きカンフー靴に履き替えて川沿いに降りていく。そうだ、まず棒だ。あたりを見渡すと丁度良い竹棒が落ちていた。

この格好で亜熱帯ジャングルの川を歩く。まるで敗残兵である。
実はこの辺りはまさに太平洋戦争で多大な犠牲者を出したインパール作戦の中心地だったようだ。成績優秀エリートの牟田口中将による兵站を無視した強引な作戦展開により、撤退時に数万人に上る餓死者を生んだ最悪の作戦である。過酷な撤退で飢餓状態にある日本兵に当時のタイの農村の方々はお粥を分け与えてくれたらしい。生き残った人たちはこの一杯で救われたと今でも感謝の気持ちを忘れないという話を聞いた。こんな話を知って山に入ると何か熱いものがこみあげてくる。
山に入ると清流沿いにトレッキングルートが伸びていた。川をジャブジャブ歩きながら山奥へと進んでいく。道沿いにはバナナの木やシダ類が生い茂り、頭上には亜熱帯の植物がぶら下がっている。

ズボンはずぶ濡れで、川と山を繰り返し歩くため体中がどんどん泥まみれになっていく。汗だくになり、虫がまとわりつき、息が切れる。自分がもし戦時中に青年期を過ごしていたら何日も飲まず食わずのままこんな風に山中を彷徨っていたのだろうか。AIは大量な情報をくれるけどこういう生々しい感覚は体験からしか得られない。

シナリオ分析とか言っていた筆者が少し恥ずかしくなってきた。デジタルの世界に生きていると情報と論理だけで知ったような判断をしてしまう。頭脳明晰の牟田口中将が現実を観ずに犯した過ちを、AIを使って何でも解決しようとする私たちに重ねて少し殺伐とした気持ちになった。
一方で、今回の旅を通してAIは筆者に前進するきっかけをもたらしてくれた。異国でひとり料理教室をしたり、史跡をめぐったり、この山に分け入ったのもAIによる後押しだ。AIをきっかけにして知らないことにチャレンジする、自分の力で前進する、そのプロセスに人間ならではの意味がありそうだ。もしかしたらAIは人間を代替するのでは無く、人間自身が進化するチャンスを与えてくれるものなのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いているとある著名な経営者の名言を思い出した。彼は禿げかけた自身の額を指してこう言ったそうだ。
「私の髪が後退しているのでは無い。私が前進しているのだ!」
正にこの感覚だ。
筆者は今、AIという額を侵食する頭髪を振り切り現実の未来に前進し続ける禿げ頭なのではないだろうか。

「私は後退しているのではなく、前進しているのだ」という
テーマが伝わる一枚
旅のおわりに
川と山を交互に歩き続けること約3時間半、水の音が遠くから聞こえてきた。木々の間から滝が見えた!

メーイェン滝は思っていたよりも奥ゆかしい佇まいだった。ここまで苦労して来る場所かというと微妙だ。でもこの瞬間タイの山奥に誰にも知られずひとりでいると自分の魂が何かに照らされているような感じがした。筆者は滝壺に近い岩に座り、うっすらしぶきを浴びながら持参してきたバナナを食べた。そしてもと来た道を3時間かけて歩き帰路に就いた。

今回の旅を通じてわかったのは、AIは自分を映す鏡のような存在だということだ。理屈には理屈を、恐れには恐れを、笑いには笑いを返してくる。つまり使う人の考えや気持ちを増幅するような作用があるということだ。もしかしたら自分を代替すると思っている人は本当に代替されるのかもしれない。でも今回の旅のように人が前進しチャレンジし実存を謳歌しようと思えばそれへの武器と勇気をくれることも分かった。
つまり「バカとハサミは使い様」ということだ。(最後のまとめが我ながら雑すぎる 笑)
AIを使い倒して未知の世界に踏み出そう!
これでAI一人旅シリーズは終了です。筆者のくだらないブログに付き合っていただきありがとうございました!
また何か面白いことを思いついたら書きますので、是非フォローお願いします!
庭坂 陽
