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夜の声薬局

第一夜 シャッターを閉める夜

日々の忙しさに疲れると
心の中に、モヤモヤとした感情が生まれて、
ついついそんな心のうちを、愚痴ってしまったりしてしまう。
そんな日は心のシャッターを、
そっと閉めたくなる夜がある。

絵:クオ.ジェントル

夜の声薬局は、
そんなモヤモヤとした気持ちのある
夜にだけ、
静かに現れる。
そこには、少しおっちょこちょいな
変わり者の店主がいる。


その日現れた彼女は
コートの前をきちんと閉じたまま、
ゆっくりと椅子に腰を下ろした

バッグを、
膝の上でぎゅっと抱きよせながら

誰かを悪く言った言葉が、
ジワジワと自分の胸に突き刺さってくる

いつから私は
人を悪く言うようになってしまったのだろう…
心が汚いのかも…
そう思うと、自分が少し嫌いになる

そんな時、
人は心のシャッターを閉めたくなる

誰とも話したくない
でも、
誰かには気づいてほしい

今夜はそんな彼女のお話だ。

私は
少し離れたところに、
腰を下ろした

視線が合うと、
彼女はほんの少しだけ、
笑顔を向ける

そして、すぐに、
目を伏せた

私は、
特別な会話はしなかった

この場所では、
言葉は、必要のない時もある
ただ一緒にいるだけでいい

小さなキャンドルの灯りが、
彼女を照らすと
少しだけ、
落ち着いたような顔になっていた。

私は
しばらくして、
小さな紙を一枚、
テーブルの上に置く

それが今夜の処方箋だ

受け取るかどうかも、
その人に任せる。
それが、この場所のルールだ


彼女は、
すぐには、手を伸ばさなかった

立ち上がる前に、
静かに紙を手に取り、
バッグの中へしまう

今夜の処方箋の言葉は、
こうだった


シャッターを無理に
開けないでいい夜もある
そんな日は、
蜂蜜を入れた
あたたかいホットミルクでも飲んで
ゆっくりとした夜をお過ごしください


彼女は、
その夜、
蜂蜜を少し入れ
ホットミルクを飲んでみた

カップを両手で包んで、
湯気を眺めているうちに、
だんだんと心が落ち着いてきて
まぶたが、少しずつ重くなる。

その夜は、
シャッターを閉めたまま、
彼女は深い眠りについた

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