夜の声薬局 第一章を終えて 夜の声薬局を書く理由

なぜ、夜の声薬局を書く事になったのか。

もともと夜の声薬局は、
文章ではありませんでした。

自分の声で、
誰かの眠れない夜に寄り添えたらと思って始めた、
小さな音声配信の名前でした。

だから、
薬局の前に、
まず「声」があります。

私は昔から、
人の相談を受けることが多い人間でした。

話を聞くことは好きです。

けれど、
困ったことに、
私は聞いた話を忘れられません。

あの人は大丈夫だろうか。

あの時の言葉で傷つかなかっただろうか。

何年経っても思い出してしまいます。

だからきっと、
カウンセラーには向いていません。

共感しすぎて、
自分まで飲み込まれてしまうからです。






それに、
夜の声薬局が必要だったのは、
誰かのためだけではありませんでした。

母の抗がん剤治療。

娘の病気。

年齢を重ねるたびに増えていく、
心配事や責任。

病院へ向かう電車の中や、
長い待ち時間。

そんな時間に、
何か楽しみを見つけたかった。

誰かを励ますためというより、

自分自身に優しくするために。

自分の言葉で、
自分を癒す場所が欲しかったのだと思います。


最初は、
数夜で終わるつもりでした。

こんなに続くとも、
10夜まで辿り着くとも思っていませんでした。

けれど、
書いているうちに気づいたことがあります。

人は、
正しい答えが欲しいわけではない夜があるということです。



私は、
アロマの資格も、ハンドマッサージセラピストの資格も持っています。

栄養士の資格も持っています。

身体に良いことも、
心が少し楽になる方法も、
それなりに知っています。

でも、

人が本当に苦しい夜に欲しいものは、

意外と答えではありませんでした。



「それは辛かったね」

「大変だったね」

「今日はもう頑張らなくていいよ」



そんな言葉だったりします。

だから夜の声薬局には、
正解がありません。

処方箋は出すけれど、
治し方は書いていません。






私は、
今でも人の相談を受けます。

たぶんこれからも受けると思います。

でも、
昔みたいに全部背負おうとは思わなくなりました。

その人の人生は、
その人のものだからです。

私にできるのは、
少しだけ隣に座ること。

夜の声薬局も、
同じです。

治す場所ではなくて、

ほんの少しだけ、
一緒に座る場所。



10夜を書き終えても、

人生は続いていきます。

母の治療もあります。

娘の病気もあります。

仕事に行けば、
相変わらず色々あります。

それでも、

自分の言葉で自分を癒しながら、

また誰かの隣に座れたらと思っています。



夜の声薬局を読んでくださった皆さまへ。

本当にありがとうございました。

そして、

もしまた眠れない夜があったら、

ふらりとお立ち寄りください。

薬は出せませんが、

温かいお茶くらいなら、
ご用意しておきます。

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