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夜の声薬局 第七夜|閉じた世界の中で

夜の声薬局は、
今日は「分からないままの夜」に、
ひっそりと現れた。

その人は、
理由を探すことを、
もうやめていた。

何がどうなっているのか。
どこが行き止まりなのか。
考えようとすると、
それだけで息が浅くなる。

だから、
分からないままでいることを、
今夜だけ、選んだ。

扉を開けて、
椅子に腰を下ろす。

背中を預けるほどではない。
前に進めるほどでもない。

ただ、
ここに座ることだけは、
今の自分に、許せた。

私は、何も聞かなかった。
言葉にすれば、
きっとこの人は、
説明できない自分を
責めてしまう。

それは、今夜の仕事じゃない。

棚の奥から、
小さなスノードームを取り出す。

売り物でも、
特別なものでもない。
ずっと前から、
そこに置いてあるだけのもの。

私は、
それを静かに揺らした。

透明な球の中で、
白い粒が、
ゆっくりと舞い始める。

その人は、
何も言わずに、
その動きを見ていた。

閉じているかどうかも、
出られるかどうかも、
今は考えない。

ただ、
動いているものが、
目の前にある。

雪が落ちきるまで、
私たちは黙って、
同じ景色を眺めていた。

それで、
十分な夜もある。

やがてその人は、
静かに立ち上がり、
小さく会釈をして、
扉を開けた。

何かが変わったわけではない。
状況も、
まだそのままだ。

ただ、
何も決めなくていい時間が、
確かに、
ここにあった。

家に帰り、
灯りを落とす。

棚の奥に、
昔からあるスノードームを見つける。

絵:クオ.ジェントル


理由はない。
ただ、
そこにあった。

その人は、
手に取って、
しばらく、何もしなかった。

揺らさなくても、
置いておくだけで、
今夜は十分だった。

夜は、
静かに流れていく。

雪は舞わないまま、
球体の中は、
変わらず、静かだった。

夜の声薬局は、
分からない夜にも、
そっと灯っている。

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