答えはいらない。ただ、言葉になるまで聞いてほしい夜がある。
仕事で嫌なことがあった夜。
家に帰ってからも、
昼間の会話を何度も思い返してしまう。
「あんな言い方をしなければよかった」
「どうして、分かってくれないんだろう」
仕事は終わったはずなのに、
頭の中では、まだ終わっていない。
誰かに話しても、
「気にしなくていいよ」
「こうすればいいんじゃない?」
すぐに答えが返ってくる。
正しいのだと思う。
それでも、自分の中に何かが残る。
欲しかったのは答えではなく、
自分でも分からない気持ちを、言葉になるまで一緒に探してもらうことだったのかもしれない。
以前のわたしは、
「話を聞くこと」と「答えを返すこと」を同じように考えていた。
部下との1on1でも、沈黙が続くと質問を重ね、自分の経験を話す。
部下のためのつもりだった。
振り返れば、
沈黙に耐えられない自分が、言葉で間を埋めていた。
わたしの考えを伝えるだけでは、
部下の言葉は増えなかった。
自分も、仕事で嫌なことがあるたびに、
「なぜ、分かってくれないのか」
と考え続けていた。
答えを相手の中に探している間は、
自分では変えられないことに気持ちを奪われていた。
当時は、自分軸や他人軸という考え方も知らなかった。
頭の中にあるのは、
「腹が立つ」「もう嫌だ」という感情だけだった。
同じことを繰り返したくなくて、
仕事や人との関わりについて書かれた本を読むようになった。
本で知った考え方を使い、
自分に問いかけてみた。
何があったのか。
どう感じたのか。
自分は、何を大切にしたかったのか。
一つずつ分けて考えると、
ただの「イライラ」に輪郭が生まれてきた。
「腹を立てている」と思っていたけれど、
本当は、頑張りを分かってほしかった。
言葉にして初めて、
自分が抱えていたものに気づくことがあった。
その経験を、部下との1on1にも生かすようになった。
聞こえてきた言葉を返し、
「今の話は、こういうことで合っていますか?」
と確認する。
言い直されたら、もう一度聞く。
沈黙したら、
言葉が出てくるまで待つ。
少しずつ、
自分の言葉で話してくれる場面が増えていった。
言葉になっても、
職場の状況や相手がすぐに変わるわけではない。
それでも、
「自分は何に苦しんでいたのか」
「本当は何を大切にしたかったのか」
そこに目を向けられる。
頑張り方を少し変える。
今日は仕事のことを置いて休む。
自分で選べる次の一歩が、
見つかることもある。
思い浮かぶ人がいるなら、
「答えはいらないから、5分だけ聞いてほしい」
その一言からでもいいと思う。
職場では話しにくいことも、
利害関係のない相手だから話せる場合がある。
事情を知らない相手に話す中で、
初めて自分の考えが言葉になることもある。
会社で続けてきた、この対話。
会社の外でも役に立てるかもしれないと考え、
文章を交わしながら仕事や人間関係のモヤモヤを整理できる場をつくりました。
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