へんてこ・ぶひぶひ・サニーデイズ Part2
ゆでひよこクラブの投稿サイト「ペンシル」が賑わっている。
年に一度、夏に開催される「喪作大賞」。
僕も「エセエッセイ部門」に初応募した。
作品名は「へんてこ・ぶひぶひ・サニーデイズ Part2」だ。
応募総数はなんとジャスト1万。
締切から1週間後、一次通過の通知が届いた。
この1週間、ずっと通知アイコンが気になって、仕方がなかった。
ひとの投稿に小さなケチをつけては、エアコメントばかりしていた。
そして、この結果。
嬉しかった。
自分へのご褒美にと、商店街にある和喫茶「あんころがし」に足を運んだ。
ノートパソコンを開いていると、おかみさんが声をかけてきた。
「1次通過が9999作品だって……」
サイトを覗いてみると、審査員の論評が載っていた。
編み物作家アミー
「リリアンを、ツブアン、コシアン、と書いた作品はすべて落とした」
表記揺れを見られたのか、思い込みを見られたのか。
厳しい世界だなと思った。
手芸好きのおかみさんの表情がどこか哀しげだった。
二次審査についても、書かれていた。
ー、漢字間違いが100箇所以上の作品は落選とする
大丈夫かな、僕の作品。
不安になってきた。
そういえば、「〜ください」を「果菜」と変換したままだったかも。
急いで、投稿内容をチェックした。
全部で99箇所、大丈夫なはず……
1週間後、二次通過の通知が届いた。
数え間違いがなかったようで安心した。
「果菜」の単語登録を勧めてくれた、八百屋のおやじさん。
どこから仕入れてきたのか、審査情報を教えてくれた。
「三次審査は、一人称の不備が100箇所以上あると落選らしい」
一人称の不備?
私、俺、僕、自分。
主語揺れ、大丈夫だったかな。
「私」を平仮名で統一していたはず。
あっ、しまった!
わたしを、たわしと打ち間違ったところ、なおしていないかも。
急いで、投稿内容をチェックした。
「たわしの頭って、わたしみたい」と書いてある……
やばい、主人公の髪型に触れるシーンが100近くある。
やってしまった……
Vol.100までシリーズ連載したから、チェックが甘くなってしまった。
落選通知の不安を打ち消すかのように、エアコメントに没頭した。
意外にも1週間後、三次通過の通知が届いた。
そういえば、蚊取り線香でボヤ騒ぎを起こした、金物屋のぼやじいがぼやいていたな。
「みんな流行りに乗って、薄っぺらいんだよ。わしの文章なら、予選通過しないはずがない……」
とか言ってたけど、ぼやじいも、八百屋のおやじさんも、いつまで経っても予選落ちだし、おかみさんに至っては、一次通過すらしたことがないって、言ってたな。
そう考えると、僕はすごいのかもしれない。
せめて、本戦まで残りたい。
商店街に垂れ幕とかは、恥ずかしいからやめてほしいけど。
予選の最終審査について、ひとこと告知があった。
ー、余韻
セリフとセリフの間は100行くらい空けておいたはず、大丈夫。
ただ、もっと空けたほうがよかったのかな……
祈るような気持ちで、最終審査の結果を待った。
その間、僕のエア通知ボタンは、批判の返信で溢れることになった。
数日後、「なんとか通過したみたいだね」と、頭の上を飛び回っていたコバエが教えてくれた。
いよいよ、本戦は日本葡萄館。
公開審査になった。
もしかしたら、水着審査があるかもしれないと思い、ZIZITOWNで水着を購入しておいた。
会場に足を運ぶと、すごい熱気だった。
本戦まで残った強者たちが勢ぞろいだ。
あれ、あんころがしのおかみさんだ。
敗者復活したんだな。
確かに、審査員アミーの論評ひどかったもんな。
アミーのホームページ「あみあみあみーご」はサーバーダウンしていたし。
商店街総出で、ゴーグル評価に☆1をつけまくった効果があったのかな……
会場が暗くなった。
いよいよ、はじまる。
舞台袖から、名物編集長ベランダ・ストリップが出てきた。
映画「ラップを着た露出魔」のモデルになった人だ。
「今日はみなさんの作品ひとつひとつを丸裸にします!」
審査員が紹介された。
予選から引き続き審査に入る、編み物作家のアミー。
そして、経済評論家のマイカル富岡が紹介された。
「審査作品は9999、100日間の長丁場です。どうぞよろしく!」
会場から盛大な拍手が巻き起こる。
前方席はプレミアム席100万円で、テントを張っている人もいる。
あれ、八百屋のおやじさんだ。
予選通過したんだ。
本業はさっぱりらしいけど、アフィリエイトで相当稼いでいるらしい。
ぼやじいは落選したかもな……
「ぼやが乾くまで」のコメント欄は大炎上だったし。
レビュー評価が高いと、敗者復活できるんだけど。
おかみさんは毎日100人にまんじゅう配っていたらしい。
そういえば、商店街のメンバーは、初日でレビューされるはずだって、そのへんの犬が教えてくれたっけ。
あっ、はじまった。
いきなり、おかみさんの作品からだ。
「父さん、あんこだって、しょうがないじゃないか」
アミー「私、あんこ大好きです」
いきなり火消しに走ったな、アミー。
マイカル「トウサンという呼びかけがイヤだな」
おかみさん、母さんにしなかったんだ。
自分のことを詮索されるのもイヤだもんな。
マイカル「ワタシの分析だと、チョコやクリームも売れ筋として……」
ベランダ「それはどうかな。あんこがぼやけてしまうかも」
ベランダ「なんで子どもがこんな物言いなのか、気になるよね」
決勝進出となった。
ぴょんぴょん小躍りしている、おかみさんが見えた。
次の作品です。
八百屋のおやじさんの作品だ。
「果物、野菜の見分け方教えちゃうぞ❗️SALE情報も❤️」
タイトルどうなのよ、おやじさん……
アミー「私、果物も野菜も好きです」
まったく節操がないな、アミー。
マイカル「ワタシの分析だと、アイテムとプライスで勝負しているね。彼女から買いたくなるな」
浅い分析だな、おやじさんのカモじゃないか、マイカル。
ベランダ「クリックしたくなるよね、ノウハウ商材系は強いね」
決勝進出となった。
ぴょんぴょん小躍りできない、おやじさんが見えた。
次の作品です。
「へんてこ・ぶひぶひ・サニーデイズ Part2」
あっ、僕の作品だ。
会場が一瞬静まり返った。
悲痛な表情で、ベランダが言った。
「意味がわからない」
アミー「ほんと意味不明、大嫌い」
マイカル「ワタシの分析では、ノーノーナンセンス」
ベランダ「期待に応えられていない、落選です」
あっという間だった。
ホンモノのコメントが胸に刺さった。
僕の夏は終わった。
喪作大賞2026
大賞
「コバエ、台所飛んでるってよ、カンチョーの夏」
審査員特別賞
「そのへんの犬と、1on1」
反省会だ。
タイトルですが、ヘンテコはともかく、豚が出てこないのに、ぶひぶひはよくわかりません。
例えば、ピョンピョンにすれば、ウサギの可愛らしさで、許された可能性があります。
次に、サニーデイズをサマーデイズにするかの議論もありましたが、どちらでも結果は変わらなかったと判断します。いっそのこと、正月サマーくらいの反転が欲しいところです。
それから、いきなりパート2は強引すぎたかもしれません。
エピソード0のように、後から序章を作れるようにしたのは裏目に出ました。
Vol.100まである連載タイトルをパート2にしたことも、読者を混乱させています。パート101なら、差別化をはかれたと考えます。
総じて、タイトルと内容が合っていません。
読了率は、マイナス100%と予想します。
続いて、内容です。
なぜ、主人公の頭がタワシなのか。
どうして、恋人のお尻にイワシが刺さっているのか。
イワシでカンチョーしたのは誰なのか……
チョッピーとの1on1はVol.100まで続いた。
喪作大賞。
ヘンなテンションも、鼻息の荒さも、書き殴った夏も。
衝動だけでは、パート2とは言えなかった。
おかずいっぱいだった弁当容器の上を、コバエが飛んでいる。
蚊取り線香を焚いてみたが、期待には応えられていないようだ。
窓を開けると、そのへんの犬の遠吠えが聞こえてきた。
人でもない、文字でもない声に、なんだかほっとした。
