メカニカルシールはなぜ壊れるのか?──塗料設備における考察
はじめに
メカニカルシールの採用は、漏れ防止・シャフト摩耗の抑制・メンテナンス工数の削減など、設備保全の合理化を目的として進められてきた。私の体感では、塗料設備において「とにかく壊れる(壊す)」という印象。
本記事では、塗料という特殊流体を扱う現場から、メカニカルシール故障の構造的背景を考察する。
1. 顔料という“敵”──粒子径と摺動面の関係
塗料には最大10μm程度の顔料と呼ばれる固形分(溶けていない)が含まれ、粒度分布のピークは数μm。
一方、メカニカルシールの摺動面は0.25〜2.5μmで管理される。
この差から、固形分が摺動面に侵入する可能性は高い。
さらに、圧力分布が不均一な場合、収納部の隙間にばらつきが生じ、設計上の限界(2.5μm)を超えることもある。結果として、粒子が摺動面に入り込み、摩耗や損傷を引き起こす。
2. 故障の兆候と“トドメ”現象
通常は、粒子の侵入によって徐々に摺動面が摩耗し、漏れ量の増加がメンテナンス時期を知らせる。それすら怠ると、摩耗によってできた隙間に大きな異物が入るなどして、トドメがさされて、割れたり欠けたり、大きな破損に至る。
しかし、何の予兆もなく固定環・摺動環を割ってしまうことがある。
このような破損が一基で発生すると、同様の条件下にある他のポンプでも連鎖的に破損が起こることがある。原料変更やロット変更などによる粒子成分や硬度の違いが故障の引き金となる可能性が高い。
3. 運転条件と圧力の影響
吐出圧力が高いと、摺動面にかかる圧力も高くなる。
異物が摺動面に存在する状態で圧力がかかると、点接触による局所的な高応力が発生。
これは理論上、無限に近い力が一点に集中することになり、割れが起きても不思議ではない。
4. メンテナンス vs. 安定稼働──現場のジレンマ
夜間や無人運転を行う場合、私はグランドパッキンの採用を進言する。しかし、現場側はメンテナンス工数の削減を優先し、メカニカルシールの採用を望む。結果として、突然の故障による設備停止や漏れによる惨状が発生する。
終わりに
メカニカルシールの故障は、単なる設計ミスや運用ミスではなく、流体特性・圧力条件・素材特性が複雑に絡み合った“必然”とも言える。
昔、偉い人にメカニカルシールの突発漏れを撲滅しろって言われたことがあり、たぶん、できるから、テスト用にメカニカルシールとりあえず100個買ってくれと頼んだら諦められたことがあります。まずは壊れる条件を追求してみたかったのを思い出しました。そういうラボ的な検証もときには必要だと思いますが、予算がかかり過ぎますね。けど、それから突発の漏れでゴタゴタと文句言われることはなくなりました。
読んでいただきありがとうございました。

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