レポート1「みさぼんのお店 BONGSTA(ボングスタ)」
「やっかいな依頼が舞い込んだらしい」
私は机の上の依頼書をネコに向けてヒラヒラと振った。
「断れば?」とネコが言った。
「そうもいかないだろ」
私は肩をすくめ、車のキーを手に立ち上がった。
秘密組織「TWINS(ツインズ)」
名前は聞いている。しかし内情はほぼ謎だ。
分かっているのは、組織を取り仕切っているのが双子姉妹の妹の方で、
「みさぼん」
そう呼ばれていることくらいだ。
そのTWINSが、長野にレストランを出すらしい。
なんともキナ臭い話だ。一体、何を企んでいるのか?
それを探るのが今回の私の仕事だ。
探偵ヨッシャーロックの。
相棒のポンコツ車に乗って現地へと向かう。
長野県松本市中条12-2
みさぼんはそこを根城にしているらしい。
道中で二回ほど妨害を受けた。(道を間違えた)
私に動いてほしくない勢力があるようだ。腕利きのスパイ達の顔が浮かぶ。UNCLE0011……。W……。おそらく彼女達の仕業だろう。
「なに、いつものことだ」
私はそううそぶいて、30分ほど余計に老車に鞭をうち、ようやく松本市に着いた。
ぐるりと山に囲まれ、市内にも川が多い。
松本城。風情のある街並み。

この地で一体何をしようというのか。
私はnoteの特派員として、オープン前のレストランの事前取材という名目でアポイントを取ってある。
記者として潜入するのがもっとも手っ取り早いのだ。
いよいよ、TWINSのアジトに到着した。駐車スペースも結構ある。
驚いたのは、普通に「TWINS」と表札が出ている。堂々とした秘密組織だ。
問題のレストランはその奥にある。
まさに隠れ家的な店だ。



調査資料用に写真を撮っていたら、すぐにみつかってしまった。
しかも、TWINSのツートップ自らのお出迎え。

双子とは聞いていたが、こんなにそっくりだとは……。
まるで合成写真のように見えてしまう。
一体、どっちがみさぼんだ!?
ここで読者の皆様にも推理してほしい。
はたして、どちらがみさぼんなのか。
答えは巻末の動画資料に載せておくので確認してもらいたい。
さっそく店内に入ると、まるで誰かの家に遊びにきたかのようなホーム感。
スリッパに履き替えるので、脱ぎ安い靴で行くのがオススメ。←ブーツで行ってしまったヤツ。
しかし、裸足になりたくなる心地よさそうな木の床である。
私のように訓練をつんだ者でなければ、あっという間に警戒心を解かれてしまうだろう。
メインルームに入ると、まずこちらに目を奪われる。



これは、屏風。
みさぼんのお父上が中国で買い求め、船便で持ち帰ったものだそうだ。
大工さんが壁に埋め込んでくれて、日の目を見なかった屏風が、今や立派なタペストリーになった。
まるで、亡きお父上がこの店を護ってくれているみたいだと私は思った。
もちろん、私は両脇の美女が好きである。
そして、反対側の壁は一面本棚になっている。

ふふふ。
アジトっぽくなってきたではないか。
この本棚が扉になっていて、奥には秘密の通路があるのだろう。
私くらいになると、この手の仕掛けはすぐに見破ってしまうのだ。

本棚の上のダルマが怪しい。
一周年の時に目を入れるのだと言っていたが、おそらくこのダルマを動かすと本棚が動く仕掛けだと思う。
そこへ、長野の塩尻市で放し飼い養鶏をしている「ゆりっぺ」さんが卵を持ってきてくれた。
お店の立て看板も書いてきてくれたようだ。

ゆりっぺさんは、リアル「バロン」と言っていいくらいのイケメン猫を飼っている。猫好きらしい可愛い看板。

ちゃっかり私も卵を分けてもらう。
自家製の発酵飼料を毎日手作りというこだわりっぷりなので、本当においしい!
ゆりっぺさんの記事もお礼代わりに載せておこう。
そして、店内で神棚を発見。
これが例のやつか、と思う。
調査資料にあったみさぼんの記事も載せておこう。

そして、いよいよ料理をいただくことに。
BONGSTAでは決まったメニューがないそうだ。
季節ごとに旬なものを提供したいという思惑と、出来るだけ取り決めのない自由なお店づくりというコンセプトによるものだ。
○モーニング
おかゆ、おにぎりセットの2種類。
¥1000
○ランチ
週変わり。
2種類から選べる。
ドリンク付。
¥1500
○ディナー
要予約。
¥3000~
いずれも税込。
いつ行っても旬なものが食べられるというのは嬉しい。
私は偏食がないので問題ないが、食の好みが激しい人やアレルギーの人は事前に相談しておくとよいだろう。
かなりワガママは聞いてもらえそうである。
今回いただいたのがこちらのランチ。

忖度なく、本当に美味しい。
卵焼きの卵はもちろんゆりっぺさんの。もともと美味しい卵を生かす上品な味付け。神。
全体的に言えるのが、とにかく丁寧。一つ一つの食材に惜しみ無く手間をかけているのが素人にも分かる。
ここまで愛情深い料理は、めったに食べられないと思う。
こんな料理を作るシェフとはいかなる人物なのか。
おそらく組織のナンバー3。マークしておかなくてはならない。
料理人歴何十年ということで(みさぼんの情報はいつもアバウト)、和洋中なんでもこい。
すべての食材を美味しく料理するという特殊スキルを持っている。
料理界のブラックジャックと勝手に命名。
にも関わらずだ。

これはデザートのプリンの試作なのだけれど(もちろん、ゆりっぺさんの卵)、器によって火の入る時間が違うらしく、卵の種類によってそれを変えたり、寝かせる時間を色々試したりと、飽くなき研究心!
すごいと思う。
この正体不明の謎のシェフだが……
独り言がめっちゃ多い。
厨房から話し声や笑い声、歌まで聞こえてきたので誰か他にいるのかと思ったら、シェフ一人だった。
これは、一人で食べに来ても飽きないなと思った。
モーニング、ランチ、ディナーとシェフ一人でこなすらしい。
休みは日曜の夜と月曜日だけ。
「働かせすぎじゃない?」と言ったら
「だよねー。あっはっは」
とみさぼんは笑った。クラムボンみたいに。
可哀想なシェフ……。
「ちょっとこっちに来て」と、みさぼんが言った。
そして、私は店の2階へと連れていかれた。
まずいな、と私は思った。
正体がばれたか?
よくて監禁、最悪は口封じで……と怯えていたら、案内された先は綺麗な和室だった。
新しい畳とスキッとした白い障子。
なんと、ここを無料で解放するという。
ワークショップをするなり、イベントやら、ちょっとしたお店をやるなり。
「部屋代もらえば」と言ったが、
「ランチ食べてくれればいいんだ」とみさぼんは言う。
ボスがそんなに商売っけがなくて大丈夫なのかとも思うが、まぁ、みさぼんらしい。
障子を開けると、連なる山々が見えた。
遠くない将来、
ここは変人達の巣窟になる予感がした。
さて、そんなこんなで、これにて調査は終了である。
日本長野化計画やら、長野への首都移転をもくろんでいたわけでもなく、料理に怪しい薬をまぜて怪人にするでもなかった。
怪しげと言えば、せいぜい店内に春風のような優しく心地よい魔法の風がふいているくらいのものだ。
調査報告書にはこう書く予定だ。
「TWINSは長野を平和にする秘密組織である」
そもそも、店名である「BONGSTA」はエスペラント語。目指すのは世界平和なのかもしれない。

~おまけ~
みさぼんのインタビュー動画を撮りました。
12分と少し長いのですが、どっちがみさぼんクイズの正解とお得なお知らせもありますので、よろしければご覧下さい。
