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F7 友よ、答えは風が語りかける


友人というのは、どうしても変なヤツばかりになってしまう。
なぜなら、ただ一般論や常識論を言われても面白くもなんともないので、蜂が花の蜜を吸うように、結果的におかしな事を口にする人達に引き寄せられてしまう。
中でも、親友と呼べる男が一人いる。
向こうがどう思っているかは知らないけれど。

「とね」というのがそいつの名前で、奥さんと一緒にゲストハウスを作っている。そろそろ出来上がるはずなので、ワクワクしながら連絡を待っている。忘れられている可能性もないではないが、ただ待っているのも何なので、彼について記事にしてみよう。
ただの暇潰し回である。


ONE PIECE占いというのを職場でやったことがある。
私は「サンジ」だった。
うん、ヨッシャマンはサンジだよね、と皆に言われた。多分、料理が好きで女性が好きだという点に引きずられていると思う。
とねは間違いなく「ルフィ」だった。
声が大きくて、豪快に笑う。いつも輪の中心にいる。
とねとはパチンコ屋でバイトしていた仲で、どちらも全くパチンコの知識がないという変わり種同士だった。尋常でないくらい忙しい店で、我々はともに背中を預けながら、野ネズミのように駆けずり回っていた。
オーバーリアクションで豪快にボケるとねと、知的に微笑みながらクールに突っ込む私。名コンビだったと勝手に思っている。
さながらパチンコ界のタカ&ユージといったところ。(美化)

一発でとねが只者ではないと分かるエピソードがある。
どう考えても邪魔にしか思えない大きなギターを肩にかけ、東南アジアを旅して回ったのだ。本当に邪魔で後悔した、と後に語る。
「2ヶ月で帰ってくるから」と当時の恋人に言い残して空港に向かい、2年間帰ってこなかった。
もちろん振られた。


よく一緒に酒を飲んだ。
仲間内で飲んでいても、いつもとねと私が最後まで残っていた。
一番印象に残っているのは、目が覚めたら二人して外の階段で寝ていたことだ。段差を護る、運慶と快慶の像みたいに。
足元には空の缶ビールが星屑のように点在している。よく2人とも転がり落ちなかったものだ。
「なんでここで寝てる?」
「憶えとらん」
月見酒でもしていたか?
とねは半裸だった。


リアルで私の事を「ヨッシャマン」と呼ぶのは彼だけだった。
ラーメン屋に入った時も、水を入れに席を立ったとねが、
「ヨッシャマンも水飲むー?」とそのデカイ声で言うものだから、注目を浴びてしまった。
恥ずかしい。
ヒーローだと思われるではないか!
まったく。
そのとねが数年前に、奥さんと一歳になったばかりの娘を連れて遊びにきた。
初対面で私の事を「ヨッシャマン」と呼んだ奥さまの事を、私は一瞬で好きになり、やっぱりとねの奥さんだなぁと思った。


東南アジアで、とねは大麻に味をしめていた。
とにかく平和な気持ちになるんだ、と彼は言っていた。
また吸いたいなぁ、と言っていたので
「うちにあるよ」と私は言った。
「マジで!?どれくらいの量?」
「これくらいかなぁ」と私はおにぎりを握るくらいの手を見せた。
「そんなに!?少しもらっていい?」
全部やるよ、と私は答えた。必要ないから、と。
とねは大喜びで、早速仕事終わりにうちにやってきた。
少年のように瞳を輝かせるとねに、私はそれを手渡した。
「へ?」と、とねがキョトンとする。「なにこれ」
「タイマ」
私が差し出したのは、古いキッチンタイマーだった。

未だに持っている

「ぶはははははは」
とねはこれまでで一番デカイ声で爆笑し、膝から崩れ落ちた。
いつも笑わされてばかりだったので、ようやく一矢報いた。


本当に、一緒に飲んでいてこれほど愉快な男を私は他に知らない。
最後に、彼が話してくれた、私の1番のお気に入りの話を。
とねが、友人とマクドナルドに行った時だ。
とねは、たまたま自分が飲んでいたコーラの氷が「M」の形にへこんでいるのに気が付いた。
そこで友人に言った。
「マックってすげーよな。氷もMの形にしてるんだぜ?」
「マジか!」
まんまと信じ込んだ友人に、とねはしてやったりとほくそ笑んでいた。
それから月日が経ち、そんなこともすっかり忘れていた頃、とねはまた違う友人とマックにいた。
その友人がとねに言った。
「知ってるか?マックは氷までMにしてこだわってるんだぜ?」
それを聞いたとねは、
「マジで!?すげぇ!」
と驚いた。
しかし、何かが引っ掛かっていたのだろう。
数日の後に気が付いた。


自分のついた嘘にだまされた事に。


いつのまにか、友人の間でとねの嘘が旅をしていたのだ。
そんなとねが、東京を離れ、和歌山に移住して、ゲストハウスをやろうとしている。
面白いに決まっている。

「ヨッシャマンも和歌山に住んじゃえよ!」と誘ってくる。
和歌山の山暮らしか……。
いいな。
本気でぐらついている。

とりあえずは、早くゲストハウスの招待メール送ってこい。

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