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偽恋の野望|ショートショート

「おい、ちょっとこれやってみろよ」

大学の友人であるテルヒコからあるゲームを勧められた。

「偽恋の野望?」

タイトルからして著作権的に大丈夫なのかなと思ったが、そもそも「偽恋」って?

「参加者が偽りの恋を演じ合って最後にフォーリンラブさせた方が勝ちっていうゲームさ」
「ふーん」

恋愛には興味がない。仮に彼女が出来ても金はかかるし、相手を喜ばせる場所に行かなきゃいけないし、正直言って面倒だ。それならバイト代はそっくりそのまま自分に使って好きなことをしたい。

恋愛に冷めている俺がこんなゲームをやったところで、果たして楽しめるのだろうか。

「どうせ課金制だろ?恋愛絡みで金使いたくないんだよな」
「一部課金が必要な場合はあるけど、大半はタダなんだぜ。やってみたけど結構面白いからちょっと試しにやってみてよ。タダだからさ」

しきりに勧めてくるので、気乗りしないけどお前が言うならやってみると伝えたところ、

「おお、我が親友よ!じゃあ友達紹介ってことでレアアイテムゲットできるわ」
「なんだよ、そういった魂胆か」
「えへへ、まあな」

テルヒコにいいように使われた感はあるが、いつも俺からの飲みの誘いを受けてくれるし、少しでも借りが返せればいいかと考え直した。



大学から帰宅後、早速PCを開き「偽恋の野望」へアクセスした。

いかにも悪だくみしそうな顔のキャラクターたちを前面に押し出したトップページに思わず苦笑した。

ーーこんなゲームやって性格歪みそうだけどな

そう思いつつ、始めの参加者登録をしてスタートボタンを押すと、何やら街の中に参加者と思しきアバターがたくさん歩いていた。

ーーそもそもこのゲームの参加者って全員偽の恋をして相手を落とすためにやっているんだよな?それじゃあ全員信用できないじゃん

すると、薄紫色の髪の毛をした女のアバターが近づいてきてチャットで話しかけてきた。

「あのーはじめまして。いきなり話しかけてごめんなさい。お願いがあるんです」
「お願い?」
「この世界を牛耳っている「偽恋」を一緒に倒しませんか?」
「このゲームって参加者を偽の恋に落として倒すゲームなんじゃないの?」
「それは表向きのルールです。裏では「偽恋」を通じて制作会社がゲーム内の参加者同士のやり取りをネタにしてドラマ化して儲けようとテレビ局などに売り込んでいるんです」
「なぜそんな裏事情を知っている?」
「ワタシはこの制作会社の社員だからです。でもこの話を誰も信じてくれなくて」

ーーつまりは内部告発か

俺は信用しようかどうか迷ったが、とりあえず変な動きをし出したら速攻PCの電源オフにしてやろうと思い、この女アバターの話を聞こうと思った。

「その「偽恋」ってやつはどこにいるんだよ。それにそいつを倒した後はこのゲームはどうなる」
「偽恋は普通のアバターに扮してこの街をさまよっていますが、ワタシはどれが偽恋なのか分かっています。ワタシが持っている「ラーの鏡餅」を投げつければ真の姿を現すでしょう。そして偽恋を倒したら、このゲームがバグりだしてそのまま消滅するでしょう」
「なるほど。武器はどこで手に入る?」
「ワタシに課金してくれれば何でも手に入りますよ」

ーー怪しすぎる

「課金せず退治したい」
「武器がないと倒せませんよ、早く課金してください!」
「いきなり金の話をする奴は信用できんわ」

押し問答としているところ、ある男のアバターが近寄ってきた。

「お前ハルキか?」
「テルヒコ?」
「やっぱり。早速始めてくれたんだね」

テルヒコと会話しているところ、押し問答していた女アバターがいきなり叫び出した。

「あ、この人よ!それ!」

手に持っていた「ラーの鏡餅」をテルヒコに投げつけた瞬間、画面全体が赤い不気味な光を発したかと思うと、先ほどの街から打って変わって、ラスボスが住んでいそうな廃墟な城に様変わりしていた。

「貴様ー!」

テルヒコのアバターがみるみる変化して、巨大な「イカ」に姿を変えた。

こ、これがラスボス!?

拍子抜けしている俺のことなどお構いなく、他のアバターたちを「捕食」しだした。

「一緒に戦いましょう」

先ほどの女性アバターがイカに向けて短剣を構える。

よし、俺も!と操作しようとしたら、ポップアップで何かが表示された。

「▶たたかう にげる どうぐ はいる」

ーーえ、今どきコマンド入力!?

最近のオンラインゲームは自分で操作して武器で斬りつけたりするものだと思い込んでいたが。ここだけ妙に古臭い。

そうこうしているうちに、他のアバターたちが「イカ」に食われていく。

画面の前であたふたしていた俺だったが、コマンドの中に気になるものがある。

「はいる」?

興味本位で「はいる」をポチっと押したところ、いきなりディスプレイからニョキっと両手が出てきて俺に掴みかかった。

「うげっ!?」

半ば強引にディスプレイに引きずり込まれた俺は、アバターを捕食中の「イカ」の目の前に放り込まれた。

ーーえ、え、えー!!

完全に丸腰の状態であたふたしている俺に目を付けた「イカ」が巨大な触手を向けてきた。

「これを使って!!」

女アバターが俺の足元めがけて短剣を投げてきたので、俺はその短剣を「イカ」の触手に刺してみた。

「うぎゃああああああああ」

なんとその触手は「イカ」の急所だったのか、けたたましい悲鳴を上げながら転げまわったあげく、そのまま動かなくなってしまった。

「ラスボス弱っ!!」
「ありがとう!これでこの世界も平和が訪れるわ」

女アバターが顔を真っ赤にしてもじもじしながら近づいてきた。

間近で見るとリアルならアイドルにでもなれる澄んだ瞳のべっぴんさんではないか。

「わたし、強い人が好きなんです。だからその…」

そういうなり俺にギュッと抱きついてきて、そのまま唇を近づけてきた。

まさかこんな展開が待っているとは。

俺は接吻する寸前で目を閉じようとしたまさにその時、妙な殺気を感じたと思ったら、

「お前をフォーリンラブしたまま殺せば一生分のボーナスポイントが手に入るんだよ!あの世へ行け!」

女アバターがいつの間にか右手に持っていた短剣を振りかざしていた。

「うわああああああ」

俺は女アバターを突き飛ばすと、さっきここの世界から入ってきた空間に向かって全力疾走した。

女アバターもすぐに起き上がって、先ほどの清廉な顔など幻だったかのような悪魔の形相で追いかけてきた。

「待てー!!オレの獲物ー!!」

何とか空間に身を投げ、ディスプレイから抜け出せた。

と思ったのもつかの間、女アバターもこちらに来ようとしていた。だが、空間が閉じられようとしていて、ディスプレイから体半分が出た状態で短剣を振り回しながらジタバタしている。

「おのれ、おのれ、おのれ!!」

今にもディスプレイから抜け出しそうな勢いに、俺は手元にあったゲーミングチェアをディスプレイめがけて思い切り投げつけた。

バリーン!!

大きな音とともにディスプレイが粉々に砕け散り、あの女アバターの姿も消えていた。

「ハアハアハア…ハア」

俺はどっと疲れ、静けさが漂う部屋で大きなため息をついた。



翌日、大学構内でテルヒコを見かけたので、昨晩のことを抗議したが、

「え?昨日、俺、実家に帰っていたから大学には来ていないんだけど」

その言葉に唖然とした表情の俺を見て、

「ああ、詐欺かなんかに遭ったんだろ?最近は巧妙化しているからな、アハハ」

陽気なテルヒコは、俺の災難も知らずケラケラ笑いだした。

ーーでは、あのテルヒコは一体

ふとあることを想像したとき、膝に力が入らないくらいの脱力感を覚えるとともに、当分オンラインゲームには関わらないと誓ったのだった。




■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌

■小説専門マガジンに参加中です✨️

■創作系メンバーシップ「虹色創作部」に入部しています🍀



新年になって初投稿です🙂今年もマイペースに投稿していきます🙄

ここまで読んでいただきありがとうございました🎵




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