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ポジティブガールの魔法陣|ショートショート

目の前に配られた問題用紙を確認すると、目を瞑り、大きく深呼吸をした後、いつものように頭の中で魔法陣を描いた。



始まりのチャイムとともに目を開く。



ワタシなら、できる!




ワタシは幼い頃から魔法使いに憧れていた。


家の箒にまたがり、おもちゃ屋さんでお母さんに買ってもらった、当時人気アニメの魔法使いの帽子を被りながら、マンションの廊下を走り回っていた。

また、魔法を覚えたくて、近所にある大きな図書館へ行っては魔法書が無いか閉館時間になるまで探し続けたことが何度もあった。



そんなある日、お母さんからあることを教えてもらった。


「あんず、今日はとてもステキな魔法を教えてあげる。お父さんには内緒ね」


そういうなりお母さんがある魔法を耳元で囁いた。

それを聞きながらワタシの瞳が輝き出した。


その後、お母さんから教わった魔法を使い始めた。

教わったとおり、頭の中で考え出した魔法陣を描き、そして魔法の言葉を発する。

すると、全身から力が湧いてくるように感じ、何事に対しても臆することなくポジティブな気持ちになった。




時は経ち、小学生になる直前の3月。
お母さんが突然いなくなった。


お父さんに尋ねると、


「遠くへ行ってしまったよ」


とても悲しそうに答えた。


何故お母さんがいなくなったのか、幼いワタシには分からなかった。

それ以降、お父さんは何も語らないからワタシも聞かなかった。


お父さんはプロの小説家を目指していたのだが、どこの出版社からも相手にされず、これまでは大手企業で働いていたお母さんの給料で生計を立てていたが、それが突然途絶えてしまったため、昼間は派遣労働者として働き、夜は執筆活動するなど多忙を極めた。

一方、ワタシにはいつも笑顔で振る舞ってくれた。


でもワタシは感じていた。
お父さんがとても辛い思いをしていること。



お父さんを支えなくっちゃ!



そう決心した日から、ワタシのポジティブな性格が一層強くなった。



何ごとに対しても魔法を使えば何でもできる


ワタシは何者でもない
でも、ワタシは何者にでもなれる



まるでワタシが思い通りに魔法をかけているように運命が上手く回りだす。




さらに月日は流れ、中学生になった頃にお父さんが名誉ある文学賞を受賞したことがきっかけで、作家として一気にブレイク。

生活が楽になり、これまで住んでいたオンボロマンションから、都内の新築タワマンに引っ越した。




無事に憧れの高校に入学して、初夏の陽気になり出した頃。



ピンポーン



インターホンのモニターを見ると、マンションのエントランスに女性が立っていた。


髪は老婆のように白髪が目立ち、ツヤがなくべっとりしていた。

身なりはところどころに汚れや開いた穴が目立ち、荷物はボロボロのスーツケースに大きなビニール袋が二袋。

まるでおとぎ話に出てくる人相の悪い魔女のように鋭くて粘り気のある眼差しでカメラを睨みつけていた。


「どちら様ですか?」


「あんず?」


その老婆はワタシの名前を呼んだが誰だか分からない。


「お母さんだよ」


「お、お母さん!?」


ワタシが幼い頃に記憶していたお母さんとはあまりにかけ離れていて、あの当時の面影はカケラもない。


このお母さんであろう老婆が言うには、10年前に消えたのは小説家として全く芽が出ないお父さんに愛想を尽かせて別の男と駆け落ちしたんだと。

その後、男とは上手くいかなくなり、3年前に家を追い出されてから各地を転々としていたが、いよいよ生活苦となり、お父さんを頼ろうと知り合いを頼りながらこのマンションにたどり着いたとのこと。




安っぽい昼ドラかっ!!




「あの時は突然いなくなってゴメンね。つらい思いをさせたよね。これからは改心するからまた一緒に住みたい」


涙をこぼすお母さん。



お母さん・・・



つかの間の沈黙。



その沈黙をワタシが破る。


「お母さんから教えてもらった魔法があったから辛いことなんて1つもなかったよ。あの時のことは恨んでないよ。ありがとう」

「でもね、お父さん最近再婚したんだ。ニュース見てない?今ブレイク中の女優・掛川ミクだよ?凄いでしょ!まだ20歳だからワタシと歳が近いし友達感覚で楽しく過ごしているんだ。お父さんはデレデレしっぱなしだから執筆に影響するんじゃないかと心配しちゃうくらいだよ」

「だからお母さんが戻ってきても居場所ないし、そもそもお父さんが許さないと思うから一緒に住めない、ゴメンね!」


ワタシのまくし立てるような話し方にポカンと呆気に取られるお母さん。

さらにテンションを上げて話すテンポを加速させた。


「あ、そうそう、ワタシ高校生になったんだよ!これもお母さんから教えてもらった魔法のおかげ!本当に感謝しているよ、ありがとう!」

「お母さんもあの魔法使えるんだから大丈夫。最後に一緒に声を出して叫ぼうよ!」


ワタシはどんどん気持ちが高揚し、幸せのゲージが振り切れていた。

お母さんはフリーズしたままだが、そんなことお構いなしに頭の中で例の魔法陣を描いた。



「行くよ、せーの!」



思いっきり息を吸い込んで、ワタシの思いの丈をぶつけるように魔法の言葉を唱えた。






「ケセラセラ!!」



(2,054文字)



■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌


■小説・ショートショート専門マガジンに参加中です✨️


今回のサムネは、Alpakaさんから初めてお借りしました🎵

いつもステキなイラストを投稿しており、みんフォトにも一部登録してあるので、今後もショートショートやエッセイ等でお借りしようと思います😌



次回の「よしまるショートショート劇場」は、3月22日(土)よる9:00に投稿します✨️


ここまで読んでいただきありがとうございました🍀




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