読書ピクニック|掌編小説 #虹色創作部
本屋で、ある考えが脳内に舞い降りた。
大学生活を送る中で、いつも同じ仲間たちとの関わり合いに倦怠感を持ち始めたワタシは、人生にスパイスを効かせるちょっとした変わり事をしたいと考えていた。
大学からの帰りに急な雷雨に遭い、自宅の最寄りにある本屋へ逃げ込んだ最中に閃いた。
たまたま料理コーナーを素通りした時、ふとそのことが思い浮かんで、居ても立ってもいられなくなり、雷鳴が轟き土砂降りの中をびしょ濡れになりながら走り出した。
自宅に到着し、自分の部屋に掛けてあったリュックサックの中に、必要な物を投げ込み、玄関から飛び出そうとした。
母親が玄関に姿を現すなり、ずぶ濡れの服のまま出かけようとするワタシに少々驚いた様子だ。
「帰ってきたばかりなのに出かけるの?そんなずぶ濡れのままで?」
「ちょっと行ってくる~」
「あ、ちょっと、どこ行くの」
母親には行き先を告げず、雨合羽を着込むなり、早歩きで「ある場所」へ向かった。
針のような雨が容赦なく雨合羽に突き刺さる。
雷の轟音の中、スタスタと無我夢中で歩き、坂をグングンと登った先に、目指した目的地があった。
そこは、ワタシが住んでいる街が一望できる丘の公園内にあるカフェ。
今日は定休日のため誰もいない。
こっそりとそのカフェの屋根付きテラスに忍び込み、雨合羽を脱ぎ捨てると、リュックサックに入れてきた物を全て取り出した。
レジャーシートを敷き、その上に座ると、部屋から持ってきた何冊かの本を積み上げ、昨日食べ切れずに放置して湿気って不味くなっているであろうポテトチップス、ランタン、ここに向かう途中の自販機で購入したアップルジュース、頭にはヘッドライトを装着して準備完了。
これで誰にも邪魔されずに存分に本の文字の一つ一つを堪能できる「読書ピクニック」が整った。
早速持ってきた本のうち、先日父親から借りたホラーサスペンス小説を読み始めた。
読み進めていくうちにゾワゾワとしてきて数頁読んだだけで閉じた。
冒頭での凄惨な事件の描写があまりにも生々しく吐き気を催すような内容に、濡れた身体が冷えてきたこともあり、急に寒気を感じてきた。
――これを前菜に持ってきたワタシがバカだった
気を取り直して、次の本を選んだ。
お口直しにぴったりなキリッとした酸味のある爽やかな味。
それは、今春に上京した親友から贈られた、とある作家の詩集だった。
ワタシに伝えたかったことが凝縮してあると言われ、毎日欠かさず読んでいる大切な詩集。
一つ一つの詩を噛みしめながら、遠く離れた親友との楽しかった日々に思いを馳せる。
次の本を手に取った瞬間、ブラックコーヒーを飲んだようにひどく苦みのある味に様変わり。
本棚から無意識に取り出したそれは、高校の先輩から告られた時に渡された恋愛小説だった。
好きでも何でもなかったので断ったが、
「この小説、僕たちの出逢いにそっくりで、それで君に運命を感じたんだ」
と言いながら強引に渡され、そのまま返す機会を失った。
――小説と全然似てないし
この小説を書いた作家の大ファンだけど、先輩のせいで、渡されたこの小説だけはいつも苦い顔をしながら無理して読んでいる。
その後は、好きな作家のエッセイや推しアイドルの写真集など、その本を手に入れた当時の頃の記憶を辿りながら、少しずつつまみ食いをしていく。
もぐもぐと本を咀嚼することに集中しているうちに、いつの間にか雷雨が通り過ぎ、荒れ狂っていたことなんて忘れたかのようにすっきりとした夜空が顔を出していた。
――雨の上がった後の夜景は普段以上にキラキラしているから一番好き。ピクニックのフィナーレにぴったり
ワタシは本を持ちながら立ち上がった。
リュックサックの奥底に入れていたスマホに、行き先も告げずに出て行ったワタシを心配した母親からの着信が何十件も入っていることなど知らず、眼下に広がる煌びやかな夜景を独り占めするかのように、いつまでも見つめていた。

(1,595文字)
■小説専門マガジンに参加中です✨️
■この度、虹くりっぷさんのメンバーシップに参加しました😌
この作品は、虹くりっぷさん企画参加作品です。
今回が初参加です✨️
ステキな企画をありがとうございます🎵
一から物語を書くときに、たまにみんフォトからイラストや写真を選んで物語を連想することはありますが、指定されたイラストから物語を連想することは今回が初めてで、また違った脳みその使い方ができて面白かったです🙂
また、上で書いたとおり、虹くりっぷさんのメンバーシップに参加しました😌
虹くりっぷさんのアカウントは伸び盛りですから、今後もっと活動の幅が広がるよう微力ながら応援していこうと思います✨️
自分もあやかりたいという邪な気持ちも…は半分冗談ですが(それでも半分😂)、創作の引き出しが増やせたらいいなと考えています🙃
公募用作品の創作にメドが立ったので、昨夜からnote投稿用の作品をボチボチ書き始めています。
他の企画モノにも参加予定です。
ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
