創造主が握る運命|ショートショート #シロクマ文芸部
「バス停で待っているね」
スマホからメッセージを入れると、すぐに既読になり、「OK」という絵文字が送られてきた。
塾からバスで帰ってくる小学生の娘を迎えに、自宅から1~2分程度の場所にある最寄りのバス停へ向かう。
手には黒い傘。
夜になってからポツポツと雨が降り出してきたからだ。
「バス乗ったよ」
娘からメッセージが届く頃には既にバス停に到着していた。
バス停の後ろにはファミレスがあるが、それ以外は住宅のみ。夜9時に差し掛かっていたのと、夜になって降り出してきた雨の影響からか、人影はなかった。
傘を差し、スマホをいじりながらバスが来るのを待つこと5分。
バスが遠くの交差点を右折して来るのが見えた。
バスが前に止まり、ドアが開いた。
しかし、誰も降りてくる気配がないのだが、バスが一向に発車しようとしない。
何か変だな・・・
辺りは静寂な夜に包まれ、雨がしとしとと降り続いている。停車してドアが開いてからのなんとも言えない「間」が不気味だった。
オレが乗車するのを待っているような気がする
そう思うなり、見た目は何ら変哲もないバスに乗り込んだ。
プシュー
「ごきげんよう」
ドアが閉まると同時に、後方の座席から声が聞こえた。
声の主は、ブレザーを着た長い髪の少女だった。
「あなたはとても運がいい人です」
「運がいい?」
「そうです、ワタシに会えるのは世界でもほんの一握りです」
バスがゆっくりと発車した。
オレとこの少女、それから運転手以外は誰も乗車していなかった。
「ワタシはこの世界の創造主です」
「はい?」
「あなたの身体も娘さんの身体も何もかもワタシが創造した人間なんです」
「言っていることがいまいち理解できないが」
「ふふ、理解できなくて当然です。そんなこと誰も信じられないですからね」
あどけなさが残る少女はクスリと笑うと、
「ワタシの顔、もっと近くで見てみてください」
オレは、少女の座席まで近づくとハッとした。
「そうです、ワタシの顔、アナタの娘さんが高校生になった時の顔や身体にしたんです。よく分かりましたね。さすが血の繋がったお父さんです」
少女がそう言った瞬間、辺りは一面暗闇に支配され、オレと少女だけが闇に浮かび上がっているような光景に変わった。
「君がこの世界の創造主だとしたら、一体何しにオレの前に現れた?」
「創造主は思いのほか孤独で暇なんです。この世界にはもう充分すぎるほどのモノを創り出してきましたからね。だから、たまにこうやって直接人と会ったり、ほんのちょっと運命を変えたりしています」
「運命を変える?」
「はい。良い運命と悪い運命をバランス良く」
「悪い運命って?例えばどんなことなんだ?」
「この世界から消えてもらうことです」
「!!」
「さすがにいきなり消したらおかしいですので、不慮の事故や事件、病気などにして」
「そんなことをやって楽しいのか?君は」
「うーん、楽しいというわけではないですけど。なるべくドラマチックにしようとはしています。さっきまでアナタの運命も変えてみようかなと考えていました」
笑みを浮かべながら淡々と受け答えする創造主を見ていて、だんだんと腹が立ってきた。
「君が創造主だということが本当だとして、オレの運命を変えたければ変えてもらって構わない」
「・・・」
「たとえ君がオレの運命を変えてこの世から消ええたとしても、オレにとってそれが「運命」に違いない」
「オレは運命に抗わず、そのまま受け入れる」
「だが、君はそのうちに後悔する。何故なら君が創造してきたモノたちは、「君が欲していたモノ」なのだから。それを消すとなると自分自身を否定することになる」
「・・・」
「君には分からないかもしれないが、この世界の人々はみんな一生懸命に生きている」
「そうやって自分の運命を切り開こうとしている人間に対して、君の行いはあまりに惨い」
「本当に目も当てられない世界なら全て終わらせても構わないが、この世界で生きている人間たちをもう少し信じてほしい」
オレが話している間、沈黙していた少女の姿をした創造主が口を開いた。
「アナタの言うとおり、ワタシが欲していたモノを創造しました。しかし、人間だけはいつまでも争いが絶えません」
「そこで、創造主のワタシが運命を握ることで、自分の意のままにしたかった。でもそれは創造主の独りよがりな解釈でしたね」
「アナタのような人間が少しでも増えたらきっと今以上に素晴らしい世界になる気がします」
「アナタとその周りの方々の運命は、アナタに委ね、ワタシは遠い空の向こうから静かに見守ります。アナタに幸あらんことを」
⋯ブーブーブー
スマホのバイブでハッと我に返った。
気づいたら先ほどと同じファミレスの前で立っていた。
先ほどの出来事は夢だったのだろうか
スマホの画面を覗くと娘からだった。
「お父さん、今どこにいるの?」
「え、ああ、バス停まで迎えに来たんだけど、どこ?」
「何言ってんの?お父さんがバス停にいないからもう一人で帰ってきたよ」
「え?今、ファミレスの前のバス停だけど」
「は?最近バス経路変わったの知らないの?今はそこにバス停なんてないよ、酔っ払ってんの?」

(2,073文字)
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企画内容
「バス停で」から始まる
小説・詩歌・エッセイなどを
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みんなで読み合うお遊び企画です。
締切は4/13(日)23:59。
記事には #シロクマ文芸部 をつけてください。
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もう少しコンパクトにまとめるつもりが、少々長くなってしまいました💦
昨夜、長女が珍しく塾からバスで帰ると言い出したので(普段は車)、最寄りのバス停まで迎えに行きました。
そんなときに、たまたまお題が「バス停で」でしたので、始めの部分は昨夜の出来事そのままです🙂
ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
