身勝手に黄昏|掌編小説 #シロクマ文芸部
夕焼けは黄昏どき。
学校から帰宅後、台所にいた母には何も告げず、家から10分ほどのところにある多摩川まで無我夢中で自転車を漕いだ。
終わった…
多摩川の河川敷にある野球グラウンドの芝生まで来ると、そのまま自転車を放り出してその場で寝転んだ。
空を見上げると、夕日に照らされた雲が真っ赤に染まり、空一面が燃えているように見える。
そう。今のワタシの心のように。
どこから歯車が狂ったのか。
あれだけ楽しくやっていたのに。
大勢の人たちとも仲良くやっていたのに。
それがある時から急に気持ちが変わってしまった。やればやるだけ虚無感が増すばかり。
こんなことやっていて一体に何になるの?
周りの人たちのためになっているの?
そう考え出してから、これまで何も悩まずとも難なくできていたことが、三十分、一時間と、だんだんと延びてゆく。
しまいには何をどうすれば良いのか、自分でも分からなくなってしまった。
しばらく遠ざかっていたある日。
ふと自分が手がけたものを見返した。
偽善、欺瞞、見栄、エゴ、仮面
そんな言葉しか思い浮かばず、すぐに閉じた。
これは本当のワタシじゃない
ウソついているだけ
ゴメンね、みんな…
これで終わらせようと、自分の本当の気持ちを深く刻むようにぶつけた。
こうして出来上がった作品は、これまでのような幸せを運んできた作品とは真逆の作品が生まれた。
この世の全ての負のエネルギーを吸い込んで生まれたような、グロテスクで誰もが目を背けたくなるような作品…。
そう、これが等身大のワタシ
こんなに醜い女の子
だからこれまでごめんなさい
その言葉を添えて、昨夜、世に送り出した。
きっとみんな離れていっちゃうよね
でも後悔はしないよ
もう開くつもりはなかったのだが、この燃え上がっている空を見上げた後、すっくと起き上がり、いつものようにスマホの画面を指でなぞる。
「あれだけステキな作品の裏では苦悩していたんですね。今回の作品を見てその苦悩に気づきました」
「あなたの作品に何度励まされ、癒やされたことか。これからも続けてくださいね」
「この作品は気持ちが前面に押し出されていて、僕は醜いなんて思わなかったよ。これからも応援しているよ」
ワタシが身勝手に黄昏ていただけだった。
その時、電話が鳴った。
母からだった。
「そろそろ夕飯できるから帰ってらっしゃい」
ワタシが倒していた自転車を持ち上げた時には、太陽が沈みかけ、穏やかな表情の月が優しく照らそうとしていた。

(1,000文字)
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