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刀剣乱舞と日本美術史の沼

5年くらい前にテンペラ画のアトリエに行く途中のこと、差し入れにファミリーマートでチョコレートを買ったら「これどうぞ、最後です」と半ズボン少年の絵柄のクリアファイルがもらえた。

「何のキャラ?」と思ったら小さな文字で”活撃!刀剣乱舞”のロゴがあった。それについてはよくわからないが、ファイルは便利なので使っていた。
(のちにアニメだと知った)

そして、そんなことは数年間すっかり忘れていた2022年夏、東京国立博物館で開催された沖縄返還50周年の記念展覧会”琉球”で金ぴかの刀剣”千代金丸”を見た。

柄も鞘も金ピカ✴️
琉球王朝の最後のほうで尚王という統治者が北山王という統治者から戦利品として分捕ったものだという。
「わおー」と思って見終わった後、休憩所に座っていたらアニメキャラぽい等身大パネルが3つ並んでいて、女子高生たちがワイワイしながら写真を撮りあっていて、一人で来ているおとなの女の人たちともお互い声を掛け合って記念撮影をしていた。

それが、初めて遭遇する、刀剣乱舞Online のゲームプレイヤーである審神者の姿だったのだった。

で、その等身大パネルのロン毛のイケメンが刀剣男士”千代金丸”だったらしい。

女の子たちが立ち去った後、スマホで壁に貼ってあるDMMどっとこむのQRコードをダウンロードしたらゲームが始まってしまった。

あああ、なんでやねん?と思いつつぽちぽちしてついでに戦闘してみたら、戦闘に勝つといろんな刀剣男士がドロップしてきて自己紹介とかを始めた。

「刀剣が自己紹介?」

そういえば、その前の年、名古屋の徳川美術館に行ったときに刀剣の展覧会をやっていたがキャプションに変なこと書いてあったことを思い出した。

備前長船 本作長義 (山姥切のうち一振り)

「山姥切ってなんぞ?そういうカテゴリがあるってこと?」と思っていたら、刀剣乱舞Online の初めのあたりでもう一振りの山姥切りだっていうやつを発見した。

その時に初めて備前長船 長義に「レプリカ」があることを知った。

「そういうことか~」

ゲームをやらないとそれが何かわからんままだった。

刀剣乱舞Onlineはちょっとへんてこなイケメン?キャラが声優さんの声で「ああでもない」「こうでもない」と言いながら戦う変なゲームで、無料で遊べるしまあいいか?と思ってやっていたのだが、自分、育成ゲームにはまりやすい体質だったということを忘れていた。
無料だし、ひまがあるとぽちぽちとゲームをやることになった。

すると、特に求めていないのにどんどん刀剣男士の人数が増えてきて、お世話をしないと成長しない。弱っちいまま戦闘に出すと死んじゃうし、ドラクエみたいな救済や復活なくその生を終えてしまう。泣ける。

どんどんやってくる刀剣男士も、上から目線のオレ様とか、やけに卑屈なやつとか、ツンデレ、スパダリ、甘えん坊、天然、女装子などなど、よくこれだけ思いつくもんだと思うくらい性格ちがう刀剣男士が勝つといい気になったり、負けると悔しがったり、反省したり、捨て台詞を吐いたりして戦うほんとに変なゲームだ。

しかも、やる気出すと”脱ぐ”っていうサービス(?)もある。

美少女ゲームのカウンターカルチャーなのか?

しかし、永青文庫のコラボレーション企画や京都の”新撰組展”、東京国立博物館150周年記念の国宝展コラボは大まじめだ。
こっちも刀剣男士が自己紹介してくれなかったらぜんぜん興味持てなかったと思うが永青文庫の収蔵品である細川家のコレクションも歌仙兼定がいなかったら今ほど有名でもなかったように思う。

以前、偶然名古屋に行ったときに見た徳川美術館の、ずらずら―っと並んだ重要文化財や国宝の刀剣みても何がどう違うのかぜんぜんわからず「刃物?」としか見えてなかったし。

正直、日本美術史の教科書を見ても「何時代に何がつくられていたのか?」がさっぱりわからなかったのだが、刀剣乱舞のメインビジュアルである”三日月宗近”を打った刀工、三条宗近という刀工が平安末期の人だと知ったので大変助かった。

平安末期に日本の戦乱が始まったということだ。

ストーリーがあるわけではないが、刀剣乱舞は”三日月宗近”ではじまり”和泉守兼定”で終わる日本における戦乱の歴史が軸となっているようだ。

平安末期に始まった武士の治世が、幕臣として戦った新撰組の敗北で終わるということがわかると日本史はすごくわかりやすい。

源氏に始まり足利、前田、織田、豊臣、上杉、戦国武将には疎い私だが、刀剣が自己紹介してくれるとその時代に何があったか調べられるので大変にありがたい。

細かな話になるが、昨年、京都の”新撰組展”で沖田総司が宮川空に宛てた手紙を読んだ。
読みやすい楷書の文字で、あれやこれやと世間の話を書いた後文末で「ついでですが、山南さんが亡くなりました。自分のことは次の手紙で書きます」というような内容の文で、内なる強さとともに静かで誠実な人柄であったことが読み取れた。そして、近藤勇の手紙では、池田屋で沖田の三段突きが激しくて、加州清光が折れたことが伝えてあった。

審神者の多くが「世界一かわいい!」と絶賛する沖田の佩刀、加州清光は少年と青年の境界にあるような美少年で、強がりで、はかなげで甘えん坊だ。1600年代に加賀藩のお救い小屋で暮らす乞食清光が鍛ったその刀は幕末に池田屋騒動で折れて修復できずに捨てられた切ない歴史を持った、今はもうどこにもない刀剣だ。

新しい刀剣を鍛刀すると「俺のことも忘れないように」と主にくぎを刺すのもなかなかに切ない。審神者に忘れられたらもう、世界のどこにもなくなる存在だからかもしれないとおもうと、確かにぎゅっとしてあげたくなる。

ちなみに、最初にクリアファイルの柄になってのは鎌倉時代に打たれた薬研藤四郎という刀剣で織田信長の持ち物だったこともあるが”徳川刀剣台帳 焼失の部”に記載のある幻の短刀だった。いろいろな文書に記述のある名刀だったので昨年レプリカがつくられたと聞いている。去年、本能寺で出会った刀剣研究会の人に教えてもらった。

自分ももう、すっかりオタクに染まりつつある。

刀剣乱舞Onlineの沼、もう、スマホ版でも8年目だと聞いているが、その深さゆえにメディアミックスも当分拡大しそうだ。

このページのカバーイラストに加州清光描いてみた。とあるサイトで公開したところたくさんの方に気に入ってただけたようだ。

いまは刀剣の維持と修復を支える審神者の皆さんの愛にも感銘を受ける。

今年もみなさんが応援してくださるよう、私も祈っている。

#ハマった沼を語らせて

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