第21回 close の正体 ― 人間は「境界」で世界を理解する
「 inclusive(インクルーシブ)」という言葉を耳にする機会が増えました。 障害がある人もない人も、共に生きる。 でも、なぜそれが「閉じ込める(close)」と同じ仲間なのでしょうか。
では、これらに共通点があるとしたら、何でしょうか。
一見バラバラに見えるこれらの語は、すべて――
👉 「閉じる」という一つの動き
から生まれています。
核にある語源
共通しているのは、
👉 clud / claus(閉じる)
閉じる。囲む。区切る。
この動きが、
👉 内と外を分ける=境界をつくる
close ― 境界を生む動き
· close = 閉じる
👉 開いていたものを閉じる
👉 内と外が分かれる
「閉じる」とは
👉 世界に線を引くこと
👉 閉じた“結果”として、
👉 状態や空間が生まれます
closure = 閉じた状態
👉 終結・締めくくり
(議論や関係が「閉じる」と、closure が生まれる)
closet = 小さく閉じた空間
👉 クローゼット
include / exclude / inclusive / exclusive
· include = in (内に) + clude (閉じる) → 含む
· inclusive = すべてを内に含む
· exclude = ex (外に) + clude (閉じる) → 排除する
· exclusion = 排除
· exclusive = 外を締め出す → 排他的な
👉 同じ「閉じる」でも、
· 内に閉じる → include
· 外に閉じる → exclude
👉 境界の引き方が意味を決める
インクルーシブ教育
インクルーシブな教育とは、「誰を含めて、誰を排除するか」という境界線を引く作業をやめることだと言い換えられます。
Exclusive(排他的): 境界線を引いて、特定の人を「外」へ。
Inclusive(包括的): 境界線を取り払って、全員を「内」へ。
この「閉じる(clud)」というイメージを、 「誰かを排除するための壁」から、 「全員を包み込む膜」へと転換させる。
それがインクルーシブ教育の本質です。
conclude / conclusion
· conclude = con (完全に) + clude (閉じる)
👉 終わらせる
→ 結論づける
· conclusion = 結論
議論は本来「開いている」もの。
それを閉じた瞬間、
👉 結論が生まれる
disclose / disclosure
· disclose = dis (否定) + close (閉じる)
→ 閉じていたものを開く→ 明らかにする
· disclosure = 情報開示
preclude ― 前もって閉じる
· pre(前に)+ clude(閉じる)
👉 先に閉じておく
→ 起こらないようにする/妨げる・排除する
We should not preclude the possibility of a peaceful solution.
(平和的な解決の可能性を(最初から)排除すべきではない。)
seclude / recluse ― 閉じて離れる
· seclude = se (切り離して) + clude (閉じる)
→ 隔離する
· recluse = re(戻る・引く)+ cluse(閉じる)
👉 外の世界から身を引いて
👉 自分の中に閉じる人
→ 隠遁者
👉 閉じる方向が「内側」に向くと、
👉 社会との距離が生まれる
enclosure ― 閉じられた空間
enclosure = en(中へ)+ closure(閉じる)
👉 内側に閉じる
👉 囲いをつくる
→ 囲い・囲われた場所
👉 閉じることで、空間が生まれる
enclosure とは、
👉 閉じることで“内側”が成立した空間
The enclosure marked the boundary of the lord’s domain.
(その囲いは領主の支配領域の境界を示していた)
👉 閉じることで、
👉 「ここから内側が支配される世界」になる
■ なぜ「閉じる」が重要なのか
人は世界をそのまま見ているのではありません。
👉 区切って理解している
ここまでが自分
ここからが他人
これが問題
これが結論
一見バラバラですが、共通しているのは一つです。
👉 すべてに境界がある
人は、
連続したものに線を引き
曖昧なものを区切り
👉 意味を生み出している
つまり、
理解とは、境界を引くこと。
そして「close」とは、その境界をつくる動き。
世界は最初から分かれているのではない。
人が「閉じる」ことで、世界は意味を持つ。
まとめ
· close:閉じる → 境界をつくる
· include / inclusive:内に閉じる → 含む
· exclude / exclusion / exclusive:外に閉じる → 排除する
· conclude / conclusion:完全に閉じる → 結論
· disclose / disclosure:閉じていたものを開く → 明らかにする
· preclude:前もって閉じる → 起こさせない
· seclude / recluse:内に閉じる → 隔離・隠遁
· enclosure:閉じた空間
· closet:小さく閉じた場所
すべては、
👉 「閉じる」という一つの動き
から生まれています。
英語は、単語の集まりではありません。
一つの動きが単語をつなぎ、
世界の見え方を変えていきます。
次回は――
👉 第22回「gen はなぜ“産む”なのか」
この記事が面白かったら、
スキ・フォローしていただけると励みになります。
シリーズまとめはこちら
