第4回 なぜ take は「取る」だけでは終わらないのか――take(触)
この連載では、
英単語を丸暗記するのではなく、
語源を手がかりに、意味のつながりを読み解いていきます。
英単語は、孤立していない―語源でひらく意味の地図
※この連載は、第3回 「見る」は、立場と距離を含んでいる ー view (見)
から続いています。
take は、
「触れる」という感覚から始まった語です。
「触れる」といえば、
多くの人は touch
を思い浮かべるでしょう。
確かに、
touch は「触れる」という感覚を、
もっとも素直に表す語です。
けれど
英語では、take もまた
「触れる」ことから
意味を広げてきた言葉です。
見ることから
一歩進み、
世界に手を伸ばす。
そこから、
英単語の意味は、
大きく広がり始めます。
touch(触)とは何か
touch が捉えているのは、
接触そのものです。
触れたか、触れていないか。
境界に、指先が届いたかどうか。
touch は、
関係が生まれるその瞬間
を表します。
touch the wall(壁に触れる)
be touched by a story(ある物語に感動する)
どれも、
手に取るというより、
「触れた」という事実に重心があります。
touch は、
世界との距離がゼロになる、
その一瞬の語です。
take(触)とは何か
take の語源は、
「触れて、手に取る」という、
きわめて身体的な行為です。
触れた瞬間、
人は世界と関わり始めます。
take が意味を広げる瞬間
take は、
単に「取る」だけではありません。
take a seat(席に着く)
take responsibility(責任を引き受ける)
take time(時間がかかる)
take care(気を配る)
どれも、
何かに触れ、
関わり、
引き受ける
という感覚が共通しています。
take は、
触れるという行為から、
人との関わりや責任
を表す言葉へと進化したのです。
tag ― 触れて、印をつける
tag は、
軽く触れて、
「これは○○のものだ」と印をつけること。
荷物に付ける タグ(tag) は、
触れて識別するための札です。
また、
鬼ごっこは play tag と言います。
軽く触れた相手が「鬼」になる。
触れることで、
役割や関係が切り替わります。
task ― 触れられ、役割を引き受ける
そこから生まれた語が、
task です。
task は、
割り当てられた仕事、
引き受けるべき務め。
印をつけられ、
「これはあなたの担当だ」と示される。
触れられ、
指名され、
逃れられなくなる感覚です。
tax ― 触れてくる負担
さらに抽象化した語が、
tax です。
task と同じ流れの中で生まれ、
「課される負担」を意味するようになりました。
触れる → 役割を与える → 負担を負わせる
という、
人間社会の構造を、
そのまま引き継いだ言葉です。
taste / tasty ― 触覚から価値判断へ
taste は、
もともと、
「触れて確かめる」という感覚でした。
そこから、
味覚へ、
さらに、
好み
美的感覚
審美眼
という意味へと広がっていきます。
There is no accounting for taste.
好みは、
理屈で説明できない。
ことわざ
「蓼(たで)食う虫も好き好き」。
taste には、
身体の感覚と、
価値判断が、
刻まれています。
attach / contaminate ― 接頭辞が広げる意味
ここで、
接頭辞にも少し触れてみます。
attach
at(の方へ)+ tach(触れる)
→ くっつける、結びつける
contaminate
con(共に)+ tam(触れる)
→ (触れることで)汚染する
触れることは、
つながりを生み、
同時に、
影響を及ぼします。
ここで触れた at や con は、
語根の前につくことで、
意味の方向や関係性を広げる
役割をもっています。
take が教えてくれること
見るだけでは、
他人事。
実際に触れて体験して、
人は責任を持ち始めます。
次回予告
次回・第5回は、
stand(立) を取り上げます。
「立つ」という、
ごく単純な動作から、
英語はどこまで意味を広げてきたのか。
stand は、
英語の中でも、
最も多くの語を生んだ語根です。
授業や学び直しで、この語に引っかかった経験があれば、
ぜひ教えてください。
