【肩関節×筋機能】棘上筋と棘下筋の本当の役割とは?〜肩関節を安定させる腱板のメカニズムとそのエクササイズについて〜
肩が痛む方多いですよね。
最近はリハビリでも難渋する方が多いです。
そういった肩関節へのアプローチやトレーニングでは、「ローテーターカフを鍛える」「三角筋を鍛える」「肩を上げる筋肉を強くする」といった説明を耳にする事があります。
しかし、肩関節の安定やスムーズな運動は、ローテーターカフだけ、または三角筋だけで成り立っているわけではありません。
実際には、ローテーターカフと呼ばれる小さな筋肉群が肩関節の安定を支えた状態で三角筋が働くという協調性が必要です。
ローテーターカフの中でも特に重要なのが
棘上筋(supraspinatus)
棘下筋(infraspinatus)
です。
これらの筋肉は単に肩を動かすだけではなく、
上腕骨頭を関節窩へ押し付ける
三角筋による上方へのずれを抑える
肩関節の回転中心を安定させる
といった役割を担っています。
この役割のおかげで
「三角筋が動かし、腱板が安定させる」
という協調性がうまれます。
今回は6つの先行研究をもとに
棘上筋と棘下筋の活動パターン
肩運動時の詳細な役割
腱板のForce coupleメカニズム
リハビリで効果的とされるエクササイズ
について整理して解説していきます。
そして、セクション9では研究データを基に、肩甲骨の代償を抑えた肩関節運動を徒手的に誘導する方法を具体例としてまとめています。
この記事が、肩関節の機能を改めて整理するきっかけになれば幸いです。
《紹介する論文の一つはこちら!》
英語タイトル
“The disabled throwing shoulder: Spectrum of pathology part I: Pathoanatomy and biomechanics.”
日本語訳
「投球障害肩:病態スペクトラム 第1部 ― 病理解剖学とバイオメカニクス」
※その他の論文は最後にまとめています
1. 棘上筋と棘下筋の基本的役割
肩関節の安定と運動は、三角筋だけでは成立せず、rotator cuff(腱板)との協調によって成立します。
腱板は以下の4筋で構成されます。
棘上筋(Supraspinatus)
棘下筋(Infraspinatus)
小円筋(Teres minor)
肩甲下筋(Subscapularis)
この中でも特に重要なのが
棘上筋と棘下筋です。
両者は以下のように役割が分担されています。
棘上筋
主な役割
初期外転
上腕骨頭の圧縮
三角筋の剪断力の制御
棘下筋
主な役割
外旋
骨頭の後下方安定
挙上時の骨頭下方制御
つまり腱板は
「運動を作る筋」ではなく
「運動を成立させる安定筋」
として働くと考えられています。
2. 棘上筋の活動パターン
棘上筋の活動は肩外転角度によって変化します。

しかし重要なのは
筋活動量=機能的重要度ではない
という点です。
臨床的に重要なのは次の2点です。
▶︎初期外転
0〜30°では
三角筋のモーメントアームが小さい
上方剪断力が強い
そのため
棘上筋が外転開始を補助します。
▶︎最大トルク角度
バイオメカ研究では棘上筋の外転モーメントアームは約60°で最大と報告されています。
そのため、棘上筋の最大外転トルクは
約60°付近と考えられています。
3. 棘下筋の活動パターン
棘下筋は従来、外旋筋として理解されてきました。
しかし近年の研究では
骨頭安定筋としての役割がより重要視されています。
外旋時の活動
外旋運動では以下のような傾向があります。

そのため、90°外転外旋は棘下筋の活動が高い運動とされています。
挙上時の活動
興味深い研究として肩挙上時の筋活動分析があります。
その内容によると棘下筋は
外転
屈曲
scapular plane
など様々な運動で活動するというものです。
つまり外旋以外でも安定筋として働くことが示唆されています。
4. 腱板のForce Couple
肩関節の安定はforce coupleという概念で説明されます。
これは複数の筋が反対方向の力を出し合うことで関節中心を安定させる仕組みです。
①Coronal plane force couple
働く筋はというと
三角筋
棘上筋
棘下筋
小円筋
力の方向は
三角筋→ 上方剪断
腱板→ 圧縮+下方制御
これにより、上腕骨頭中心が維持されます。
②Transverse plane force couple
前後バランスとして
前→肩甲下筋
後→棘下筋+小円筋
これにより前後の関節安定が保たれます。
5. 棘上筋と棘下筋の役割の違い
両者は同じ腱板でも役割が異なります。
▶︎棘上筋
主な機能
初期外転
関節圧縮
外転補助
特徴
外転運動に関与
scapular planeで効率良い
▶︎棘下筋
主な機能
外旋
骨頭後下方安定
挙上時の骨頭下制
特徴
rotator cuffで最大体積
三角筋の上方剪断を抑制
6. 腱板機能低下で起こる問題
腱板が弱くなると次のような問題が起きます。
①骨頭上方移動
三角筋優位になると骨頭が上方へ移動します。
②肩峰下インピンジメント
骨頭上方移動→subacromial space減少
③挙上困難
最終的にpseudoparalysis(腱板断裂)などが起きる場合があります。
7. エクササイズの選択
研究で棘上筋・棘下筋の活動が高いエクササイズが報告されています。
▶︎棘上筋エクササイズ
代表的な運動として
scaption
肩甲骨の面(約30〜40度前方)に沿って腕を挙げる動作で、肩のインピンジメントを防ぎ、三角筋やローテーターカフを安全に鍛えるトレーニング方法です。
特徴
肩甲面挙上
インピンジメント少ない
棘上筋活動高い
推奨角度は30〜60°
▶︎棘下筋エクササイズ
研究で最も活動が高いもの
①side-lying external rotation
鍛える腕を上にして横向きに寝て、脇に丸めたタオルを挟み、肘を90度に曲げます。
肘を脇につけたまま、手のひらを天井に向かってゆっくり扇状に持ち上げます。
そして、肩の後ろ側の筋肉を意識しながら、ゆっくり元の位置(お腹の前)まで戻します。
特徴としては
三角筋代償少ない
棘下筋選択的活動
棘下筋を中心に機能を高めるので有効と考えられています。
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