辞める前に、必ず読んで。会社を辞めるとき、もらい損ねやすい「5つのお金」。
会社を辞めるとき、多くの人が損をしている。
理由はシンプルで、
「もらえるはずのお金」を知らないからだ。
退職するときには、給料以外にも、
本来なら受け取れるお金がいくつもある。
でも、会社が親切にぜんぶ教えてくれるとは限らない。
むしろ、会社の側からすれば、
余計なお金は払いたくないのが本音だ。
「辞める人」のための制度を、
わざわざ細かく案内する義務はない。
だから、自分で調べて、自分で動かないと、
本来もらえるはずのお金は、消える。
数十万円、人によっては百万円以上、
取りそびれているケースを、何度も見てきた。
この記事では、
会社を辞めるときに「もらい損ねやすい5つのお金」を、
具体的に書いていく。
これから辞めるかも、と少しでも思っている人は、
辞める前に読んでおいてほしい。
辞めたあとで気づいても、
取り戻せないものが多いからだ。
■ 【1】未消化の有給休暇
最初に、いちばん見逃しやすいものから書く。
それが、有給休暇の消化だ。
会社を辞めるとき、
残っている有給はすべて消化する権利がある。
たとえば、有給が20日残っていれば、
退職日を20日後ろにずらすか、
最後の20日を全部休みにすることで、
給料20日分を実質的に受け取れる。
平均的な月収の人なら、
これだけで20万〜40万円分の価値になる。
ところが、多くの人がこれをやらずに辞めている。
理由はだいたいこうだ。
「忙しいから」
「迷惑をかけたくないから」
「言いづらいから」
気持ちは分かる。
でも、有給は法律で保障された権利だ。
会社は、有給の取得を拒否できない。
辞める直前の有給消化も、当然認められる。
「迷惑をかけたくない」という気持ちは美徳だが、
それを理由に20万〜40万円を捨てるのは、もったいなすぎる。
辞めると決めたら、まず有給の残日数を確認する。
そして、それを全部消化するスケジュールを組む。
これは、辞めるときに最初にやるべき行動だ。
■ 【2】未払いの残業代
次に大きいのが、残業代だ。
「うちはみなし残業だから」
「残業代は出ない雰囲気だから」
そう思って、残業代をもらえていない人は多い。
でも、これは違法な状態の可能性が高い。
法律上、会社は残業をした従業員に
割増賃金を支払う義務がある。
みなし残業制度があっても、
みなし時間を超えた残業分は、別途支払い義務がある。
つまり、
「みなし残業40時間」と書かれていても、
実際に60時間残業していれば、
20時間分は別にもらえる。
これを請求できる権利は、
2年(2020年4月以降の分は3年)有効だ。
辞めるタイミングは、
未払い残業代を請求するチャンスでもある。
在職中は会社との関係を考えて
言いづらかったとしても、
辞めるなら、もう気にする必要はない。
請求のために必要なのは、証拠だ。
・タイムカードや勤怠記録
・出退勤を記録したメール、チャット
・パソコンのログイン記録
・自分のメモや日記
こういう記録を、辞める前に集めておく。
辞めてから資料にアクセスできなくなることが多いので、
動くなら在職中だ。
不安なら、労働基準監督署か、
労働問題に詳しい弁護士に相談するといい。
初回無料の相談を受けつけている事務所も多い。
■ 【3】退職金
退職金がある会社の場合、これも要チェックだ。
退職金は、会社によって制度がぜんぜん違う。
会社の就業規則や退職金規程に、
計算方法や受取り条件が書いてある。
ここで注意したいのが、
「自己都合退職」と「会社都合退職」で
退職金の金額が変わる場合があることだ。
多くの会社では、
会社都合(リストラ、退職勧奨など)の方が、
退職金が多くなる。
もしリストラや退職勧奨を受けた場合は、
「自己都合扱い」にされていないかを確認する。
会社の言いなりにサインしてしまうと、
本来もらえるはずの退職金が減る可能性がある。
また、確定拠出年金(企業型DC)に加入していた場合、
退職時にどう扱われるかを確認する必要がある。
放置すると、自動的に「特定運用」に移されて、
余計な手数料を払い続けることになる。
退職してから6ヶ月以内に、
個人型確定拠出年金(iDeCo)などへの移換手続きをするのが基本だ。
これも、知らないと損をする典型例だ。
■ 【4】失業手当(雇用保険の基本手当)
会社を辞めたあと、すぐに次の仕事につかない場合、
雇用保険の失業手当をもらえる可能性がある。
これは、もらい忘れる人は少ないが、
「もらえるタイミングや金額を最大化する」ことを
意識していない人は多い。
【自己都合と会社都合で、もらい方がぜんぜん違う】
自己都合退職の場合:
・原則として2〜3ヶ月の給付制限期間がある
・つまり、辞めてから手当が出るまで時間がかかる
・もらえる期間も、会社都合より短い
会社都合退職の場合:
・給付制限がなく、すぐに手当が出始める
・もらえる期間も長く、金額も多くなる傾向がある
ここでも、自己都合か会社都合かで、
受け取れる金額が大きく変わる。
リストラ、退職勧奨、ハラスメントが原因で辞める場合は、
本来は「会社都合」になることが多い。
それを「自己都合」にされていないか、
離職票の内容を必ず確認する。
【離職票の「離職理由」を必ず確認】
会社が出す「離職票」には、退職の理由が書いてある。
ここに会社の言い分しか書かれていない場合、
ハローワークでこちらの言い分も伝えることができる。
会社が「自己都合」と書いていても、
実態が会社都合に近ければ、
ハローワーク側で判断を変えてくれる場合がある。
そのために必要なのが、証拠だ。
・退職を促されたメールや録音
・パワハラを受けた記録
・無理な業務命令の記録
こういう証拠があれば、
本来の「会社都合」として認定されやすい。
これだけで、もらえる金額が
何十万円も変わってくる。
■ 【5】健康保険・年金関連
最後に、辞めたあとのお金の話もしておく。
会社を辞めると、健康保険と年金の手続きが必要になる。
ここでも、選択を間違えると損をする。
【健康保険の選択肢】
辞めたあとの健康保険は、3つの選択肢がある。
国民健康保険(自治体に加入)
任意継続(辞めた会社の健康保険を続ける、最長2年)
家族の扶養に入る
このうち、どれが安いかは人によって変わる。
任意継続は、会社負担分も自分が払うことになるため、
保険料が一気に2倍になる。
それでも、自治体の国保より安いケースもある。
両方の保険料を試算して、安い方を選ぶ。
任意継続は、退職から20日以内に手続きしないと
できなくなるので、辞める前に準備が必要だ。
【国民年金の免除制度】
退職後、収入がない期間は、
国民年金の保険料免除制度を使える可能性がある。
これは、所得が低い人や失業中の人が、
保険料を全額または一部免除してもらえる制度だ。
放置していると毎月1万7000円近くかかるが、
免除を申請すれば、その負担が減る。
将来の年金額には影響するが、
無職期間の家計を守るには有効な制度だ。
役所の年金窓口で、
「失業中なんですが、免除できますか」
と聞けば、教えてもらえる。
■ 退職前にやるべき、5つのチェックリスト
ここまでの内容を、チェックリストにまとめておく。
辞めるかも、と思った段階で、これを見ながら準備するといい。
□ 1.有給の残日数を確認する
→ 全部消化するスケジュールを組む
□ 2.残業代の記録を集める
→ 未払いがあれば、退職前後に請求を検討する
□ 3.退職金の規程を確認する
→ 自己都合か会社都合かで金額が変わるなら、要交渉
→ 確定拠出年金の移換手続きを忘れない
□ 4.離職票の「離職理由」を必ず確認する
→ 会社都合にできる事情があれば、ハローワークで主張する
→ 失業手当の金額や期間が大きく変わる
□ 5.健康保険・年金の手続きを準備する
→ 任意継続と国保を比較する
→ 国民年金の免除制度を確認する
これだけ確認しておけば、
辞めるときの「もらい損ね」はほぼ防げる。
■ よくある質問
【Q1】退職を切り出すタイミングは?
法律上は、2週間前に伝えれば辞められる。
ただ、引き継ぎなどを考えると、
1〜3ヶ月前が現実的だ。
ボーナス支給の規定がある会社では、
ボーナスをもらった直後に切り出すのが、いちばんダメージが少ない。
【Q2】会社が辞めさせてくれない場合は?
法律上、会社は退職を拒否できない。
2週間前に意思を伝えれば、辞める権利がある。
引き止められても、引き止めに応じる義務はない。
それでも止まらないなら、
退職代行サービスを使う手もある。
【Q3】退職届と退職願は、どう違う?
退職願は「お願い」、
退職届は「決定の通知」だ。
迷っているうちは退職願、
辞めると決めたら退職届を出す。
会社側が退職願を「保留」している場合は、
退職届に切り替えて出し直すと、止められない。
【Q4】辞める理由を、正直に言うべき?
正直に言う必要はない。
「家庭の事情」
「次のキャリアに進みたい」
こういう理由で十分通る。
本音を細かく説明すると、
余計なトラブルを招くこともある。
■ まとめ:辞めるときこそ、知識が武器になる
最後にまとめておく。
・有給は全部消化する権利がある(20万〜40万円分)
・未払いの残業代は、辞めるときが請求のチャンス
・退職金は「自己都合」「会社都合」で金額が変わる
・失業手当も、退職理由で大きく差が出る
・健康保険・年金は、選択肢を比較して安い方を選ぶ
辞めるという行為は、
ただ「会社を去る」ことじゃない。
働いてきた分、本来もらえるお金を
ちゃんと受け取り切るところまでが、退職だ。
会社は、こちらが知らないことを
わざわざ教えてはくれない。
知っている人だけが、ちゃんと取り戻せる。
これは、特別な才能や根性の話じゃない。
事前に調べて、ちゃんと動くだけでいい。
辞めるとき、自分の権利は自分で守る。
それが、これから先の人生を、ちゃんと立て直すための
最初の一歩になる。
