【別便・読み返しの補助線】【書評】J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』――傷つきやすさはなぜ世界を拒むのか
はじめに あの「インチキ」という言葉のあとで
無料記事では、『ライ麦畑でつかまえて』を、ホールデン・コールフィールドが大人の「インチキ」を見抜きながら、その先で社会に応答することには失敗してしまう物語として読みました。その整理は、いまでも間違っていないと思います。けれど、あらためて振り返ってみると、もう少し長く立ち止まりたい感覚も残りました。
というのも、ホールデンの拒絶を、ただ「未熟さ」や「社会参入の失敗」として片づけてしまうと、彼の言葉に含まれている切実さが、少しだけこぼれ落ちてしまう気がするからです。彼はたしかに極端ですし、独りよがりでもあります。ですが、その極端さの奥には、単なる反抗では済まされない傷つきやすさがあるのではないでしょうか。
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