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『よりみちじんせい』

第1巻〜第4巻 全80話『よりみちじんせい』完全版を公開します。

第1巻「最初のよりみち」
第2巻「氷解の輪郭」
第3巻「残像の名前」
第4巻「灯りのその先」

全80話を、ひとつの記事にまとめました。

この物語は、まっすぐ進めなかった人の話です。予定通りに帰れなかった日。乗るはずだった電車を見送った夜。知らない街で見つけた灯り。逃げ込んだ部屋。ついてしまった嘘。誰かに見つけてほしかった気持ち。そして、見つけられることへの怖さ。

主人公は、決して強い人ではありません。逃げます。見栄を張ります。嘘もつきます。人の明るさに傷つき、自分の弱さをうまく扱えず、遠回りばかりします。でも、その遠回りの中でしか見えない景色がある。

この物語を書きながら、私はずっとそのことを考えていました。人生には、本道から外れてしまったように感じる時間があります。

みんなが前へ進んでいるように見える中で、自分だけが立ち止まっているような時間。ちゃんと選べなかったことを、いつまでも胸の奥で気にしてしまう時間。平気なふりをしながら、本当は誰かに見つけてほしいと思っている時間。そういう時間は、できればなかったことにしたくなる。

でも本当に、その時間は人生の外側だったのでしょうか。遠回りしたから出会えたもの。逃げた先で始まった生活。嘘をついたから見えてしまった本音。誰かに見られることで、初めて知った自分の輪郭。

そういうものを、ひとつずつ拾いながら書いたのが、この『よりみちじんせい』です。

第1巻では、主人公が最初のよりみちに出会います。第2巻では、逃げた先の街で、嘘と生活が少しずつ混ざっていきます。第3巻では、見られること、書くこと、残像に名前をつけることと向き合います。第4巻では、よりみちを人生の外側ではなく、自分の歩幅として受け入れていきます。

物語は、現在と記憶を行き来しながら進みます。雪のホーム。ねぷたの灯り。田園都市線の夜。古い写真館。弘前の春。祭りの翌朝。そして、朝の光の中で薄く揺れる自分の輪郭。

派手な事件が起こる話ではありません。けれど、何かを選べなかった人、まっすぐ進めなかった人、どこかで自分の人生に置いていかれたような気がしたことのある人に、静かに届く物語になっていたら嬉しいです。

よりみちは、人生の外側ではなかった。迷いながら歩いた時間の全部が、いつか自分の人生そのものになっていく。そんな物語を、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。

第1巻「最初のよりみち」

第1話 最初のよりみち

灯りのある方へ歩いてしまうのは、ある程度の都会で生まれたからなのか、それとも、この容赦ない吹雪のせいなのか。自分でもよくわからない。ただ、暗い方へ向かう理由を、私はまだ見つけたことがなかった。

この街に来る前、雪は「遠くから眺めるもの」だった。テレビの向こう側や、記号化された天気予報の中にだけある、清潔な物質。

だから、ホームに立って自分の足元に積もる雪を見たとき、脳が現実を拒絶した。

ちゃんと帰るはずだった。授業を終え、元の街に戻り、何事もなかったかのように、昨日までの生活の続きをなぞる。そのはずだった。

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