a16z解説:Travis Kalanick氏の復活──Uber2011年の逃した提携・ステルスで築いたCloud Kitchens・鉱山や輸送へ広がるAtomsの物理世界コンピューティング
▶ 元動画: https://www.youtube.com/watch?v=z6gH_v0buUc
2026年7月23日
概要
Uberの創業者であるTravis Kalanick氏が、a16zのポッドキャストに登場し、自身の「復活」について語りました。この回は、Kalanick氏の新会社Atomsへのa16zの出資が発表されたタイミングで収録されたもので、Ben Horowitz氏やMarc Andreessen氏との間にあった「あと一歩で成立するはずだった提携」の因縁を含め、Kalanick氏の起業家人生を振り返る内容になっています。
前半では、2011年のUberのシリーズB資金調達において、a16zが提示した375ミリオンドル(約611億円。1ドル=163.03円換算)のバリュエーションが210ミリオンドル(約342億円)まで下がり、結局Menlo Venturesが出資者となった経緯が、双方の記憶違いも交えて赤裸々に語られます。この「逃した提携」がなければ、2017年のUberの混乱は起きなかったかもしれない、というのが両者の共通認識です。
後半では、Kalanick氏がUberを去った後、8ヶ月の苦しい期間を経てCloud Kitchens(現Atoms)を立ち上げ、8年間にわたってステルスで30カ国に数百の施設を築いてきた話が中心になります。物理世界をコンピューターとして捉える「Atomsベースのコンピューティング」という独自の思想と、そこから食・鉱山・輸送という3つの産業へ広がっていく壮大なビジョンが展開されます。
2011年、逃した提携の真相
話は2011年のUberのシリーズB資金調達にさかのぼります。当時のKalanick氏は、Uberがようやく軌道に乗り始めた時期でありながら、資金調達を徹底的に「完璧」にこなすことにこだわっていました。彼が用いたのは「オークション方式」で、最有力のリード投資家に価格を設定させ、他の投資家を追随させるという手法です。
Kalanick氏の交渉術は独特で、彼が「アンキャップド・アンカー(上限のない基準値)」と呼ぶやり方でした。相手と価格の中間点で折り合うのではなく、「これは今年シリコンバレーで最もホットなディールになる。価格はどこまで上がるか分からないが、少なくともこの金額だ」と低めから始めて吊り上げていくのです。この手法で、前回ラウンドの2倍から始まった価格が最終的に3倍まで上昇し、a16zとの間で375ミリオンドルのバリュエーションでまとまりかけました。Yuri氏がほぼ400ミリオンドル(約652億円)で上回りかけたものの見送り、最終的にa16zが勝者となったのです。
ところが、その後Kalanick氏のもとにMarc Andreessen氏から夕食の誘いが届きます。Term Sheet(投資条件書)を先に送ってほしいというKalanick氏の求めに応じず、寿司店での会食の席で、Andreessen氏は「375について話したが、パートナーシップの合意が得られなかった。できるのは210が精一杯だ」と切り出したといいます。高い勢いで頂点まで吊り上げたディールの底が抜けた瞬間で、Kalanick氏は他の投資家たちに「210が新しい価格だ」と伝え直さなければならず、信用を失うほど気まずい状況に陥りました。結局、Shervin氏率いるMenlo Venturesが出資者となったのです。
Horowitz氏の記憶は少し異なります。ピッチは非常に印象的で「これは勝てる」と感じたものの、当時16もの取締役会の席を抱えていた彼は、この案件をAndreessen氏とJohn O'Farrell氏に委ねたといいます。従業員ストックオプションプールをめぐる何かがあったようで、気づいたときにはShervin氏がディールを手にしていた、というのがHorowitz氏の記憶です。
「あの時Markが取締役会にいれば」
この逃した提携は、Horowitz氏とAndreessen氏にとって長く「悔やまれる案件」となりました。Uberが2017年に経験した混乱は、Horowitz氏かAndreessen氏が取締役会にいれば起こらなかっただろう、というのが両者の一致した見解です。
Horowitz氏は、あの提携が成立していればUberは今日、はるかに大きく重要な企業になっていただろうと語ります。フード配達では当時Uberが圧倒的に優勢だったため、DoorDash($DASH)のようなフード配達の勝者にもなっていたはずであり、自動運転でもリーダーになっていたはずだ、というのです。Kalanick氏によれば、彼が去った時点でDoorDashの市場シェアはわずか5%で、Uberの自動運転プログラムはWaymoに次ぐ2位で追い上げていました。
その後もKalanick氏とHorowitz氏は、CEO向けのバーベキューなどで交流を続けましたが、Kalanick氏がLyft($LYFT)の側にいたHorowitz氏に「勝っている」ことを容赦なく見せつけてくる関係が10年近く続いたといいます。Kalanick氏とEmil Michael氏は、オフィス近くの隠れ家的なレストランでAndreessen氏やHorowitz氏と定期的に食事をしては、「この人たちが関わってくれたら最高なのに」と思いながら店を出ていたそうです。両者の間には、Larry Bird氏とMagic Johnson氏のような、深い相互尊敬とライバル関係が入り混じった独特の緊張感がありました。
2017年後の8ヶ月と、Cloud Kitchensとの出会い
2017年、Uberを去ったKalanick氏には、数々の訴訟や調査が待っていました。彼は自身がUberで下したすべての決断を今なお支持していますが、「線ぎりぎりまで攻めすぎた」という指摘は認めています。ハードスクラブルな小さなスタートアップの子供が、うまくいって巨大化した事業に持ち込んだ「攻め方」が問題だったというのです。
ここでKalanick氏とHorowitz氏が共有するのが「海賊が海軍になるとき」という教訓です。挑戦者として巨人に立ち向かうときの激しい攻め方は、自分が巨人になったときには通用しない、まったく違う目で見られる、という考え方です。Horowitz氏自身も、a16zを立ち上げた当初は他のVCを激しく罵倒していましたが、風向きが変わるのを感じ、Kalanick氏の身に起きたことを思い出して「もう海賊ではない」と社内で戒めたといいます。
Kalanick氏は、Uber時代のあるエピソードを披露しました。Lyftのドライバーをリクルートして引き抜くプログラムを社内で「Shoplifting(万引き)」と呼んでいたところ、取締役だったGoogleのDavid Drummond氏に「その名前は使えない」と指摘され、独占禁止法研修も経て、プロジェクト名を「North American Championship Series(北米選手権シリーズ、略称NACS)」に変更したというのです。「10歳のバスケットボールチームにふさわしい名前」でなければならない、というのが法務からのアドバイスでした。
そんな苦しい8ヶ月を経て、Kalanick氏は知人が始めていたCloud Kitchensと出会います。この知人は不動産の達人で、1つの物件に30のキッチンを配置し、200平方フィートの配達専用キッチンとして貸し出すというマルチテナント方式のアイデアを持っていました。Kalanick氏はこの会社を買収し、本格的に事業を推進していきます。
「食のコンピューター」という思想
Kalanick氏がCloud Kitchensに惹かれたのは、複雑さそのものと、表面的には地味に見えるものの中に隠れた「セクシーさ」でした。彼にとってこの事業の意味は「質の高い食事の調理と配達を、スーパーへ買い物に行くコストに近づくほど効率化できるか」という一点にあります。それが実現すれば、Uberが車に対してやったことをキッチンに対してやることになる、というのです。
Kalanick氏はこれを実現するための3つの要素を挙げます。1つ目は製造と物流のハブとなる不動産、2つ目はロボットによる自動生産、3つ目は自律走行の配達ロボット(彼が「autonomous burritos=自律走行するブリトー」と呼ぶ、温度を保って食事を運ぶ車輪付きの箱)です。この3つが揃えば、1食あたり12ドル(約1956円)かかっていた配達コストが50セントから1ドル(約82円から163円)まで下がり、人件費・不動産費なども含めて、最終的に8ドルから10ドル(約1304円から1630円)で高品質な食事が届けられる計算になります。
Kalanick氏の未来予測の手法は特徴的です。まず「20年後、ロボットが人間より優れた食事を作っているか」という誰もがイエスと答える簡単な問いから始め、次に「では10年後は、7年後は、5年後は」と、現実を「今」の方へ引き寄せていくのです。誰もが起こると認める未来について、あとは「いつ」「誰が」の問題になり、そこで「LFG(行くぞ)」となるわけです。
現在、Atomsは30カ国に数百の施設を持ち、ロボット生産で50%のコスト削減を実現しつつあります。ロボット製造ラインは第4四半期に立ち上がる予定です。
8年間のステルスという「ハードモード」
Kalanick氏は、この事業を8年間にわたってステルス(非公開)で運営してきました。2017年の混乱で1日150本もの否定的な記事が出ていた状況を踏まえ、そうしたネガティビティを持ち込まずにチームが構築に集中できる環境を作りたかったのです。
しかしステルスでの運営は「ハードモード」でした。数千人規模の会社でありながら、採用も顧客獲得もLinkedInに「ステルス」としか書けない状態でコールドで進めなければなりませんでした。興味深いのは、長期間ステルスを続けると、物語に「断絶」が生まれ、メディアが数年前のギャップを埋めながら記事を書くのが難しくなるため、ステルスが自己成就的に維持されやすくなるという現象です。
会社は米国ではCloud Kitchensとして知られていますが、ラテンアメリカでは「Casinos」、韓国では「Kitchen Valley」、中国では「Flash Kitchen」を含む複数の名前、ロンドンでは「Food Stars」、中東では「Kitchen Park」など、地域ごとに異なる名前を使い、点と点をつなげにくくしていました。法人名自体も「City Storage Systems」という意図的に退屈な名前で、これは「物理世界のためのストレージ=デジタル化された不動産」という思想を反映したものでした。
Atomsベースのコンピューティングという世界観
Kalanick氏の根底にあるのは、Uber時代から温めてきた「物理世界のデジタル化」という思想です。彼はこれを「Atomsベースのコンピューター」という枠組みで説明します。CPUがビットを操作するのに対して、原子を操作するのは製造業。ストレージがビットを保存するのに対して、原子を保存するのは不動産。ネットワークがビットをA地点からB地点へ動かすのに対して、原子を動かすのは輸送・物流。この3つが原子ベースのコンピューターにおける中核的な計算資源になる、というのです。
Kalanick氏はこの比喩を徹底的に押し進めます。1万平方フィートの施設は「1万平方フィートの半導体」であり、30のキッチンを持つ「30コアプロセッサー」。食事が動く廊下は「ネットワークバス」、アイスクリームやジュースを置く冷蔵ストレージは「エッジに置かれた事前計算済みアイテム」であり「Akamaiのサーバー」、食事を運ぶ配達員は「TCPパケット」だというのです。実際に、彼らはキッチンの容量と信頼性に基づいて需要をどれだけ送るかを管理するのにTCPの輻輳制御アルゴリズムを使っています。
この思想はUberの末期、ディープラーニングや機械学習に深く入り込んでいた頃に生まれました。Kalanick氏は当時から、物理世界はデジタル世界よりもはるかに多くの変数と確率分布の軸を持つため、アルゴリズムでは解けず、経験的に理解するしかない点で「この手のものにとってより面白い」と主張していたといいます。これは、あらゆるものを計算でモデル化できるというAI時代の結論を、彼が先取りしていたことを意味します。
鉱山への進出と超指数関数的成長
自律走行への再参入がきっかけとなり、Kalanick氏は新たな会社を設立します。食の中核企業を通じて自律走行に資金を出すのは、不動産会社が重厚なソフトウェア企業を運営するようなもので、投資プロファイルが違いすぎたためです。パートナー企業からの純粋な自律走行事業への需要もあり、昨年末に別会社を作りました。
Uber時代の自律走行の右腕だったEric Meyhofer氏(UberのATG=Advanced Technology Group出身)は既にフードロボティクス部門を率いており、もう一人の重要人物だったAnthony Levandowski氏は、自律走行の鉱山会社Prontoを運営していました。Kalanick氏はProntoの最大の投資家であり、これを買収して鉱山事業に参入したのです。
鉱山は最も美しく興味深い自律走行のユースケースの一つだと、Kalanick氏は語ります。彼らのミッションは「地球の産業に電力を供給する、より生産性の高い鉱山」。金鉱のCEOに「年間20%多く金を採れるようにしませんか」と提案でき、実証すれば契約が取れるのです。鉱山は人間にとって最悪の仕事の一つでもあり、自律化によって生産性だけでなく安全性も劇的に改善します。作業員が命を懸けている現場を実際に見ると胸が痛むといい、その安全性の向上は生産性の向上と並んで特別な意味を持ちます。
Prontoは7、8年間リーンなスタートアップとして運営されてきましたが、今ちょうど人間の生産性を上回るポイントに到達したところです。自律走行の世界では、人間の生産性を超えた瞬間がアクセルを踏むタイミングであり、現在Atomsの鉱山事業は「超指数関数的な成長」の真っ只中にあります。アマゾンの奥地やサウジとイラクの国境といった過酷な場所で、機械に自律走行キットを設置し、各鉱山で変革管理を進める必要があり、顧客からはもっと速くと迫られている状況です。Kalanick氏はチームに「リーンなスタートアップからマッスルなスタートアップへ」と語りかけています。
「アイデアではなく起業家に投資する」
これらの事業は、a16zの出資を機に「Atoms」という一つの企業体としてまとめられました。Horowitz氏に事業の全体像を見せた際、Kalanick氏は「20個の時計を持ったトレンチコートの男」のように「どの時計が欲しい?」と尋ねたところ、Horowitz氏は「トレンチコートごと欲しい。あなたがやることすべてでパートナーになりたい」と応じたといいます。これが、鉱山や輸送や食といった個別事業ではなく、トップ企業のレベルで一つの株式構造にまとめる契機となりました。
Horowitz氏は、企業がどう築かれるかという物語が業界やメディアによって常に誤って語られていると指摘します。FacebookもGoogleもTeslaも「このアイデアを思いついた」という語られ方をしますが、同じアイデアを持った人間は大勢いたのです。なぜ皆がもう一つのTeslaを作れなかったのか。それは、その方程式の中に「非代替的で極めて稀な人物」が一人しかいなかったからだ、というのがHorowitz氏の見解です。だからSpaceXも一つしかない。
Kalanick氏がここで挙げるのがJeff Bezos氏の例です。オンライン書店のアイデアを持った人間は数え切れないほどいたのに、Amazon($AMZN)は一つしかない。そしてAWS(Amazon Web Services)は、書店とは本質的に何の関係もない、まったく新しいものでした。Amazonが持っていたのは、大規模にシステムを運用することの「知識」であり、それが転用可能だったのです。
Kalanick氏は「想像力への唯一の制約は経営能力だ」というBezos氏流の考え方に共感します。UberもUber RidesからUber Eats、自律走行、Uber Freight、Uber AI Labsへと展開したように、足場さえ確立すれば、制約の中で想像力を働かせて興味深いことができるようになる。だからこそ「どこから始めるか」が重要なのだ、というのです。ただし、隣接するカテゴリーへの展開には、その分野の「知識」が不可欠だと付け加えています。
底辺から始めるという美学
Horowitz氏は、Kalanick氏を「あれだけの金を稼いでもなお、プレーし続けたいと望んだ極めて稀な人物」と評します。しかもKalanick氏は、Uberでの2万人規模の全社会議から一転して、買収したばかりの6人のスタートアップの前に立ち、同じように「行くぞ」と檄を飛ばしたのです。その朝6人のスタートアップに出社した社員たちは、1時間後にはUberの創業者が自分たちのCEOになっているという状況に直面しました。
Kalanick氏とHorowitz氏は、ペントハウスに到達した人物が新しいことを始めようとしても、地上階まで降りて底辺から積み上げることを望まないケースを何度も見てきたといいます。しかしトップから始めることは決してうまくいきません。底辺から始めることには謙虚さがあり、さらに「反・名声」の側面があります。
ステルスで底辺から始めることの意味は、社員全員が「有名になるため」ではなく、一緒に働く仲間と日々の仕事そのものから充実感を得られる点にあります。会社が「外部からのステータス」のために何かをしていると感じ始めると、それは危険で不安定な状況を招きます。意思決定が「内的な正しさ」ではなく「外部からの承認」に基づいて行われるようになり、真の北極星を見失うのです。
Kalanick氏はこの観点から、大手AI研究所への鋭い批評も展開します。研究所が自ら墓穴を掘るような発言をするのは、社員がその「外部からの承認」に依存しているからだ、というのです。「良いAI研究者でありたい」と願う社員のために「我々は全ての仕事を奪う」と語る。それが本当かどうかも分からないのに。もしそう思うなら、口を動かすのではなく、その問題を解こうとすべきだ、というのがKalanick氏の主張です。ステルスによって「人間としての承認欲求」を意図的に飢えさせてきたことが、ステルスを脱する今、強力な感情的知性として機能するだろう、と彼は語ります。
Industrial AIという新カテゴリー
Kalanick氏は、Atomsが位置する新たなカテゴリーを「Industrial AI(産業AI)」と呼んでいます。Atomsの立ち上げ時に書いた「Physical AI(物理AI)」のビジョンレターは哲学的で学術的すぎたため、より実践的で具体的なものにしたかったのです。
Industrial AIとは、ソフトウェア・センサー・ロボティクス・機械のスタックによって産業を自動化するものであり、それを一つずつ産業単位で進めていくものです。「Physical AI」と言うと「ヒューマノイドをやっているのか」「軍事関連か」と誤解されますが、Atomsは非ヒューマノイド系であり、軍事でもありません。「産業を丸ごと自動化・AI化する」というこの定義は、彼らが何者であるかをはるかに明確にしました。
ある意味で、AtomsはUberの進化形です。「物理世界のCisco($CSCO)」から始まり、それを他の部分へ拡張してコンピューターを築き、今その部品を追加している。ただし、そのコンピューターは「産業」を中心に据えたものであり、産業特化型のコンピューターでありながら、ある意味では一般化されたネットワークなのです。輸送を手がけるのは、ロボットには「車輪基盤」が必要だからであり、あらゆる産業は最終的に物を動かすため、フルスタックで産業を自動化するには車輪基盤が不可欠だからです。
第二次産業革命との共鳴と「変化への抵抗」
Kalanick氏とHorowitz氏は、今起きている変化を「第二次産業革命」になぞらえます。Carnegie氏、Rockefeller氏、Frick氏、Ford氏といった産業家たちが直面した急速な変化と、彼らが受けた抵抗には多くの共通点があるというのです。
ビットの世界から来た起業家が規制を恐れるのに対し、Uber以降に台頭した起業家は規制を恐れない、というのがHorowitz氏の見立てです。しかしビットが物理世界の原子を制御し始めると、規制当局が本格的にゲームに参入してきます。規制とは何千年もの間、物理世界に関するものだったからです。
Horowitz氏は、忘れ去られた製造業の再学習にも触れます。かつて世界一だった米国の製造能力は、Elon Musk氏のような例外を除いてほぼ失われました。製造を知る人材が欲しければMusk氏のところから引き抜くしかない状況であり、その再学習の始まりが、実は冷却や電力供給を含めて大きな製造問題であるデータセターなのだといいます。
皮肉なことに、長年「製造業の雇用が失われる」と嘆いていた当の人々が、その雇用が戻ってくることに強く抵抗しています。ニューヨーク州知事がデータセンターを禁止したように、政治的な抵抗は当時と酷似しています。Kalanick氏はこれを「変化への抵抗」と呼びます。価値ある未知の真実を見つける能力が高いほど変化は速く訪れ、変化が速いほど自然の摂理として抵抗が強まる。だからこそ、抵抗を圧倒するほどの進歩をもたらし、できる限り信頼を築いて敵より味方を増やさなければならない、というのです。「誰もが進歩を愛するが、変化には耐えられない。そしてこの二つはたまたまセットになっている」というのが、Kalanick氏の核心的な洞察です。
米国の連邦制が州同士の競争を生み、データセンターを歓迎する場所が残っていることは幸運だ、そうでなければ欧州のようになっていた、とHorowitz氏は付け加えています。
求める人材と、今参加する意味
ステルスを脱したKalanick氏は、いよいよ公然と人材を集める段階に入りました。参入する産業を一気に3倍に増やしたため、それぞれが数兆ドル規模の機会となっています。
Kalanick氏が探しているのは、チームを鼓舞できるエピックなリーダーたちです。Emil Michael氏(現・国防次官)のような、圧倒的なディールメイキングと戦略的な動きができるコーポレート開発・事業開発のトップ。彼と共に線ぎりぎりを攻められるジェネラルカウンセル(法務責任者)。そして鉱山事業を率いるCEO。自律走行や重厚なロボティクスにわたる技術的リーダーシップも全方位で必要としています。
Kalanick氏は「金持ちの採用でうまくいったことがない。誰かに数億ドルを稼がせると、再び雇うのは難しい」と冗談交じりに語ります。だからこそ、ステルスを脱した今、自分たちが何者で何を目指しているかを人々に理解してもらい、公然とチームを組めるようになったことを、彼は「復活」の大きな恩恵の一つと捉えています。
今この会社に参加することは、UberとCloud Kitchensで得たすべての教訓と実証済みの知見という「後ろ盾」を得ながら、なお巨大な機会が前方に広がる十分に早い段階で加わることを意味します。鉱山で働く子供たちを救い、誰もが健康的な食事を手頃な価格で得られるようにし、人々に時間を取り戻させる。それが、Kalanick氏が「相当なミッションだ」と語る、Atomsの目指す未来です。
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