AIエージェントが中小医療機関の事務作業を代替する ── Lassieの挑戦
▶ 元動画: https://www.youtube.com/watch?v=Fpg_8aiBxx4
2026年7月30日
概要
本エピソードでは、歯科医院をはじめとする中小医療機関の事務管理をAIで自動化するスタートアップ「Lassie」を取り上げる。共同創業者のStein氏とFrederick氏、そしてa16zの関係者が登壇し、事業立ち上げの経緯や技術的アプローチ、市場戦略について議論した。Lassieは、ソフトウェアを単なる情報のデータベースとして提供するのではなく、実際の事務労働そのものを代替するエージェント型AIの構築を目指している。小規模事業者における深刻な人手不足と、非効率な紙ベースの業務フローを背景に、同社は歯科市場から展開を始め、将来的にはあらゆる中小企業の運営を自律化する構想を持つ。
シリコンバレーの過大評価とアイオワの過小評価
AIはシリコンバレーでは過大評価されているが、アイオワでは過小評価されている。従来のソフトウェアは、紙の書類をグリーンスクリーン端末上のデータベースに置き換えたに過ぎず、実際の作業は依然として人間が行わなければならなかった。Lassieが提供するのは、数十時間分の労働をすでに肩代わりできるエージェントであり、導入を検討する医療従事者はこれを診療所運営の手段としてすぐに受け入れる。Dr. Quanの言葉にあるように、Lassieは人間を置き換えるのではなく、人間があまりに多くの役割を被っている状態から解放するものだ。
創業の原点:歯科医Dr. Quanとの出会い
Lassieの創業は、共同創業者のStein氏が担当医であるDr. Quanから自身の医院経営の裏側を見せられたことに端を発する。Stein氏は起業すべき課題を探してアムステルダムからシリコンバレーに移住し、当時はRobinhoodで成長部門を担当していた。年に2回通う歯科医院で、Yelp最高評価を得ていたDr. Quanが月200時間も保険請求や書類作業に追われ、人手不足から自ら残業している現実を目の当たりにし、強い衝撃を受けた。Stein氏の母親は1970年代に病院で働き、現金を銀行に運んで手作業で支払いを処理していたが、それと同じ問題が現代の米国で未解決のままであることに気づいた。なお、当時Stein氏に虫歯はなく、治療中ではなく診察後にDr. Quanから話を聞くことができた。
問題の普遍性:スクラントンの消化器専門医と数十万の小規模事業
Dr. Quanが特別な事例なのかを確かめるため、両氏は他の医師にも話を聞き始めた。ペンシルベニア州スクラントンの消化器専門医の下で働いた際にも、まったく同じ手作業の実態を確認した。数十万もの小規模事業体が、いまだに手作業で事務処理を行っていることが判明し、これは解決が難しいが取り組む価値のある問題だと確信した。
医師たちのペインと全アクセス許可の獲得
Robinhoodの成長チーム出身のStein氏と、Superhumanでプロダクトを担当していたFrederick氏が、医師たちに「請求業務を代行し財務を引き継ぎたい」と申し出るのは異例の提案だった。しかし医師たちは皆、自分たちの問題について何時間も話したがり、この問題が夜も眠れなくさせ、患者ケアへの情熱がありながら仕事を辞めたくなるほどの痛みであることが明らかになった。HIPAAやセキュリティ、経験不足の懸念があったにもかかわらず、Dr. Quanは「毎晩5時に来て座って仕事をしていい」と言い、スクラントンのDr. Shaも「息子のように教えるから」とすべての情報へのアクセスを許可した。
製品開発の変遷:2020年からの自動化基盤とAI追い風
Lassieの事業は2020年に開始された。当初から業務の自動化と自動運転にこだわっていたが、当時のモデルは性能が低く、特に推論モデルは現在のような形では存在しなかった。あらゆる仕事の自動化には、業務のコンテキスト(診療所の履歴データや患者記録など)と、実際の作業を実行するツールの両方が必要であり、これは人間でもエージェントでも変わらない。同社はまずコンテキスト層とツール層を構築したが、当時のインテリジェンス層は未熟だった。初期の基本的な自動化では高度な推論は不要だったものの、その後モデルが大幅に向上し、既存のコンテキストとツールの上にインテリジェンスを置き換える形で製品が賢くなり、大きな追い風となった。中核ビジョンはツールの提供ではなく、業務そのものの自動化にある。
大規模モデルの実際的限界:データの海と業務知識の空白
興味深いことに、モデルは膨大なデータで訓練され、非常に巨大であるにもかかわらず、実際にはこの種の業務をどのように遂行すればよいのかを本質的に理解していない。特定の保険者に対する請求方法など、業務の標準手順書や文書類は存在するものの、現場のオフィスマネージャーの頭の中にある暗黙知はインターネット上で簡単にアクセスできる形にはなっていない。Lassieは自社が蓄積したERPの履歴データから、そうしたワークフローを推論できるという強みを持つ。後の世代の推論モデルを使い始めた際も、当然業務の実行方法を知っているだろうと想定したが、実際には細かなニュアンスまでは把握していなかった。このギャップを埋めるため、同社はスタッフから業務の好みや過去の処理方法に関する入力を得て、エージェントを賢くするプロダクトUXに多大な労力を費やしている。Frederick氏は、より少ないデータで高速に学習できる小型モデルの登場にも期待を示しており、ピクサーのランプのような形で知性が遍在する未来を構想している。
ソフトウェアの起源と限界:紙からデータベースへ、しかし手作業は残存
a16zの関係者は、ソフトウェアの起源は紙のファイリングキャビネットをデータベースに置き換えることだったと指摘する。その原点は、IBMとAmerican Airlinesの共同プロジェクトであるSabre Systemsで、航空券の予約管理を紙からデジタル化したことに始まる。Sabreの綴りにAが二つ入っているのは、American AirlinesのAに由来する。その後、HRではPeopleSoft、法律ではLexisNexis、会計ではQuickbooksやNetSuiteと、あらゆる分野で同様のデジタル化が進んだ。しかし、これらは情報へのアクセスを容易にしただけであり、実際の作業は依然として人間が行っていた。1950年と2000年を比較しても、同規模の企業でHR部門の人数は変わらず、紙のファイルを守る警備員が、データを守るIT部門やCISOに置き換わったに過ぎない。
労働を代替するソフトウェアの市場機会
同関係者は、現在のソフトウェアは情報の保存だけでなく、データベースに対する変更の実行、すなわち労働そのものを代替できる段階に達していると論じる。HRであればバックグラウンドチェックの実施やオンボーディング、福利厚生の説明などが、会計であれば未払い請求書への督促電話などが、ソフトウェアによって実行可能になった。2023年時点のAI、すなわち次の単語予測の技術では、診療所運営やバックグラウンドチェックを統計的推論だけで任せることは到底できなかったが、現在は状況が一変し、市場規模が大幅に拡大した。同関係者はこれを、フィンテックがToastのような形で決済処理を組み込み市場を拡大したのと同様の構造だと説明する。Toastは1985年にも存在し得たが、年商500万ドルのレストランがMS DOSのソフトウェアに10万ドルを支払うことはなかった。しかし決済処理を統合し2%の手数料を得ることで、実質的に10万ドルの収益を得られるようになり、市場が成立した。しかし、労働の自動化はそれとは比較にならない規模の機会をもたらす。重要なのは、多くの中小企業では単にコストの問題ではなく、必要な人材をそもそも見つけられないという現実である。
廃業に追い込まれた歯科医Sloopの教訓
a16zの関係者のかかりつけ歯科医だったRonald Sloop氏(75〜80歳、アシュケナージ系ユダヤ人)は、フロリダで診療所を営んでいたが、帳簿を担当していたキーパーソンの女性が退職した後、後任を見つけられず診療所を若手医師に売却し引退した。現在は南カリフォルニアに移住し、ゴルフなどをして過ごしている。Sloop氏はLassieの発表を知り、「これがあれば引退しなかった」と同関係者の父親に語ったという。これは単なるコスト削減ではなく、人材採用が不可能であるために発生する「市場の失敗」をAIが解消できることを示している。地球上の誰もが1ドルを支払う一方で、製造コストが100ドルかかるものが存在する場合、それは市場の失敗であり、それが「Econ 101のグラフにおける需要供給均衡点の右側にあるすべて」である。例えば、アメリカのすべての歯科医院にオランダ語を話す受付がいないのは、オランダ語しか話せない患者が来る確率は100分の1に過ぎないのに、そのスタッフに4万ユーロの人件費を支払わねばならないからだ。無料か1ドルで済むなら、すべての歯科受付にオランダ語の対応者が存在するだろう。ソフトウェア市場は1兆ドル規模と決して小さくはないが、その周囲にはVisaが巨大な時価総額を持つ金融取引の市場が同心円状に広がり、さらにその外側には労働の市場が桁違いの規模で存在している。
歯科医院市場の規模とビジネスモデル
米国には約16万件の歯科医院が存在し、それぞれが年間約20万ドルの管理コストを負担している。Lassieがすでに数百の医院を担当する中で目の当たりにするのは、ハーバード大学の学位を持つ医師自身が深夜まで管理業務に追われ、仕事を嫌いになりかけている日常である。小規模事業のオーナーは患者に時間を使いたいのであって、管理業務やスタッフと共に働くことに時間を使いたいわけではない。しかし、そもそもそのスタッフすら見つからないのだ。AIが仕事を奪うというよりも、多くの場合、人を見つけること自体が不可能なのである。医師たちはスタディクラブの友人に評判を尋ねたり、Googleで検索したりしてLassieの実態を確認した上で、非常に迅速に導入を決断する。このビジネスが成り立つ理由は、そのコストが損益計算書上の人件費予算から拠出される点にある。同社はすでに、月30時間の労働を提供する最初のエージェントに対して5桁の料金を請求しており、Dr. Sloopがかつて必要としていた月200時間の労働の自動化余地は依然として大きい。医院経営者はLassieを単なるソフトウェアツールではなく、診療所運営そのものを委託できる存在として認識している。
自律エージェント構築の挑戦:Human in the loopの排除
保険支払いの調整や患者請求のような業務では、最終的な責任を人間に残すわけにはいかない。また中小企業にはツールを使いこなす専任のスタッフが存在しないため、ソフトウェアは完全に自律して動作する必要がある。現在の多くのAI企業は、依然としてソフトウェアエンジニアが最終的なデプロイを判断する「Human in the loop」の形態を取っているが、Lassieはそれを許容できない。保険支払いの調整や患者との請求コミュニケーションを引き受けるエージェントは、完璧に機能しなければならず、その構築に何年もの歳月を要した。Lassieは、まず創業者自身が診療所に常駐して実際の事務作業を代行し、自らの問題を自動化するアプローチを取った。製品がこれほどうまく機能するのは、自分たちがその仕事のやり方を熟知していたからに他ならない。現在では、診療所のスタッフがエージェントでは処理できないケースについて指示を出し、それを学習する仕組みが構築されている。また、Human in the loopを排除したエージェントを構築したのは、スケール可能で迅速な実装を可能にするソフトウェアを提供するためである。Dr. Quanはローンチビデオで、Lassieのおかげで子供のサッカーチームのコーチをしたり、試合を見に行けるようになったと語っている。
歯科医から歯科医への口コミ成長
Lassieを導入したいという願望と、実際にAIを導入して支払い処理を任せることの間には、依然として大きなギャップが存在する。しかし、そのギャップを埋めるほどの成果を上げた結果、成長のほとんどは口コミ、すなわち歯科医から他の歯科医への推薦によってもたらされている。実際にそれほど優れた性能を実現できた背景には、創業者たちがRobinhoodやSuperhumanといった消費者向けプロダクトの世界で培った、出荷に対する非常に高い基準の存在がある。
段階的自動化戦略:95%達成後のビジネス全体最適
Lassieは単一のプロダクトで100%の自動化を目指すのではなく、95%以上の自動化率に達した時点で業務を医院側に戻し、次の仕事の自動化に移る戦略を取っている。週に200件の元帳更新が必要だった作業が数件に減れば、10〜20時間の節約になり、経営は格段に容易になる。Stein氏は自身の3社目の会社経営を振り返り、10〜15年前に比べて、財務や給与、HRのツールが完全自律ではないものの膨大な時間を節約しているのと同様に、完全な自動化を待つ必要はないと指摘する。現在、何千人もの医院スタッフが、エージェントが処理できない数%のケースについてインプットを提供し、さらなる精度向上に貢献している。また、Lassieは既存の医院管理システムと統合するアプローチを採用しており、歯科医が多数のソフトウェアを切り替える負担は発生しない。
TiVoの寓話:スタートアップと既存企業のイノベーション競争
a16zの関係者は、自らがTrialPayを創業して約4年が経過した時点で、Stripeのようなサービスを構築すべきだったと気づいたと振り返る。当時Stripeは従業員5人だったが、退屈な決済処理というコモディティ事業を起点に顧客を時間的に先に獲得し、そのパイプを所有することで、より収益性の高いオファーベース決済といった機能を上に構築できるという構造を理解したのだ。
この教訓は、TiVoとReplayTVの例にも通じる。両社はデジタルビデオレコーダーを発明したが、優れた技術であっても企業としては厳しい結末を迎えた。Comcastのような既存大手に買収された場合、競合他社はその技術を動作させないようにするため、買収側には支配権に対するディスカウントが働く。ライセンス契約を結んでも顧客基盤を持つ既存企業に経済的利益の大部分を持っていかれるか、あるいは既存企業が数年後に粗悪なコピー製品を出す。結果として、スタートアップと既存企業の競争は「スタートアップが流通を獲得するのが先か、既存企業がイノベーションを獲得するのが先か」で決まる。
AI時代においては、既存企業が悪いエンジニアをAIで底上げできるようになるため、彼らの模倣能力は高まる。例えば、Workdayのような既存の巨大な人事情報システム上で従業員の身元調査を行うという「素晴らしいアイデア」は、Workdayに模倣される危険性が極めて高い。過去にも、Microsoft Outlookのひどい検索を代替する優れた検索を提供したX1という会社があったが、最終的にMicrosoftに模倣される可能性が高く、Yahoo!に買収される結末を迎えた。しかし、Lassieの場合は歯科ソフトウェアにWorkdayのような巨大な既存企業が存在しないことが大きな利点となる。同社が競合するのは、数週間前に辞めてしまった「Betty」のような事務スタッフや外部委託業者である。
さらに、複数のシステム間で保険請求や患者支払いの定義を統一するオントロジーの構築には年単位の作業が必要であり、これが強力な防御力を生んでいる。パブリックマーケットは「ソフトウェアは死んだ」「AIは素晴らしい」とVCとは正反対の評価を下しているが、AIは本質的にソフトウェアであり、ソフトウェアはAIだ。WorkdayやNetSuiteのような既存のソフトウェア企業がAI機能を実装しないのは、顧客がそれを要求している現状では「職務怠慢」に等しい。
中小企業向け流通戦略とセルフサービス導入
忙しく非技術的な経営者にどうリーチし、どう導入してもらうかが、Lassieの重要な課題である。Dr. Sloopのような歯科医は、午後7時に緊急患者の対応でオフィスに戻り、子供との夕食後に、退職したスタッフの代わりに自分で消耗品を発注しなければならないような多忙な生活を送っている。そのため、接触すること自体が極めて難しい。同社はStripeやRipplingのような消費者向け製品に近いセルフサービス型の導入プロセスを構築し、Robinhoodが口座開設の自動化でパイオニアとなったのと同様に、銀行口座の連携や保険ポータルの認証を抽象化している。現在では、医師が承諾すればほぼ自動でエージェントが設定される段階に近づいている。
データ駆動型市場開拓:全米歯科医マッピングと独自プレイブック
Lassieの市場開拓は、現在の最先端とされる手法、すなわち営業担当が大口顧客と会合を重ねて契約を取り付け、一挙に1000万ドルの年間経常収益を計上するようなモデルとは根本的に異なる。同社は文字通り数千、数万、数十万の小規模事業者を見つけ出さなければならない。そのために、全米の歯科医の所在地、経営者、使用しているシステム、さらにはIndeedに求人を出しているなどのインテントシグナルをマッピングし、ノイズを突き抜けて共鳴するメッセージで接触する独自のプレイブックを開発している。ClayやApolloでリードをエンリッチしLinkedInで見つけ出すような従来の営業手法は、Dr. Sloopがそうしたデータベースに存在せず、LinkedInにもいないため通用しない。AIを主流のアメリカ企業に届けるための、まったく新しい市場開拓モデルが求められている。
紙決済の残存とデジタル化革命
現在も中小企業の約70%が紙の小切手で支払いを受け取っており、Cignaのようにオンライン登録を意図的に提供せず紙小切手を送る保険会社も存在する。連邦政府が紙小切手からデジタル決済への移行を義務化したことで、業界全体に大きな追い風が吹いている。Lassieは、紙の支払いをデジタルに変換するプロセス自体をプロダクト化し、事業者情報や税務IDだけで自動的に切り替えを実行するエンジンを構築した。スタッフが紙での手作業を好むという複雑な心理的要因も、この移行が進まなかった理由の一つだった。
保険業界との相互作用:請求最適化とインセンティブの一致
歯科医院が扱う50〜100種類の診療コードを、AIエージェントは正確に処理し、適切なX線画像と治療計画を添えて保険会社に提出する。保険会社側には明確なルールがあり、それに従って支払いを行うだけである。また、保険会社には優良な歯科医をネットワーク内に維持するインセンティブがある。雇用主が毎年歯科保険プランを更新する際、ネットワーク内に良い歯科医がいなければ従業員は別の保険会社に移ってしまうためだ。
マスタープラン:歯科から全小規模事業の自律運営へ
Stein氏はLassieの構想を三段階で説明した。第一段階は、米国に約16万件存在する歯科医院への集中だ。年間約20万ドルの管理コストを自動化する市場は、経常収益だけで10億ドル規模に達する。第二段階では、理学療法士など他の医療機関種別への水平展開を図る。第三段階として、蓄積した知見を基盤に、あらゆる中小企業の運営を自律化するAIエージェントの提供を目指す。最終的に、企業のエージェントが記録システムへの読み書き、患者や消費者との対話、支払い、予約などを抽象化し、消費者のAIエージェントや保険会社のエージェントと対話しながら、全自動で業務が進行する世界を構想している。この構想は、アイオワやケンタッキー州パデューカだけでなく、Stein氏の出身地であるアムステルダムや、Frederick氏の出身地であるハンブルクなど、世界中の中小企業を支援することを最終目標としている。
AI時代の組織構築と中小企業経営の変容
Frederick氏とStein氏は、AI時代の組織構築について、優秀な人材の必要性は変わらないと指摘する。エンジニアリングやセールスで上位5%に入る能力と野心、そしてAIネイティブであることは、採用時に特に重視する要素だ。両氏が目指すのは2026年版の大規模組織であり、他社の2倍のアウトプットを出荷し、4倍のスピードで動くことを目標としている。財務部門をはじめ、あらゆる機能にAIを組み込むチームをどう構築するかが、今後の大きな課題だ。会社経営の根本が変わらないのは、オリンピックレベルのランニングに1日2回のトレーニングと限界までの努力が必要であるのと同じで、それは誰にでもできることではない。
Superhumanでの経験から、正しい理想顧客像(ICP)への厳格な焦点を当て、間違った診療所をオンボードしてしまうと自動化できない場合の離脱が極めて困難になることを学んだ。オンボーディングでは、映画の脚本のように設定されたチェックポイントを時間枠内で計測し、核心的製品価値に迅速に到達することにこだわっている。
一方で、誰でも「Betty」を雇えるようになれば、理論上は中小企業の起業が容易になるが、それによって競争が激化し、かえって経営が難しくなるパラドックスも生じうる。ReplitやLovable、Claudeのようなツールでソフトウェアの複製は驚くほど容易になったが、「ドクター・スロープの診療所」そのものを複製するのははるかに難しい。しかし両氏は、この変化を悲観していない。歯科医院や配管工の需要は現在の供給の2倍もあり、誰もが質の高い歯科治療を年2回受けられるようにすることや、オランダで経験したような良質なプライマリケアをアメリカでも実現することが、この技術の大きな機会だと考えている。これは、ヤンキースの往年の名選手ヨギ・ベラの言葉を借りれば「混みすぎていて誰も来なくなった」という状況とは正反対の、需要が供給を大きく上回る市場なのである。
なお、Lassieは現在積極的に採用を行っており、詳細はlassie.aiで確認できる。
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