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La Story(Les Echos)解説:創業50年のDecathlon──ストライキと従業員株式、自社ブランド戦略、Paul Sexas氏とツール・ド・フランス

▶ 元エピソード: https://shows.acast.com/la-story/episodes/decathlon-un-quinquagenaire-en-forme


2026年7月17日

概要

フランス経済紙Les Echosの日次ポッドキャスト番組「La Story」が、今夏で創業50周年を迎えるスポーツ用品大手Decathlon(デカトロン)を取り上げました。フランス人が最も好むチェーン店のひとつとして知られる同社は、昨年世界で約400万台の自転車を販売した企業でもあります。番組ではEco-Weekend担当のIsabelle Lesniac氏と、消費部門担当のRachel Cotte氏が、同社の歴史・経営戦略・社会情勢を語りました。

記事の柱は大きく3つです。ひとつは、50周年という節目の直前に起きた異例のストライキと、それを受けた従業員株式配布という対応。ふたつめは、創業時から続く「適正価格(juste prix)」と自社ブランド重視という同社独自のビジネスモデル。そして最後に、19歳の新星サイクリストPaul Sexas氏をチームDecathlon CMA-CGMの主力として擁し、ツール・ド・フランスを通じてブランドの露出を高める広報戦略です。

Decathlonは非上場企業でありながら、フランス市場で27%近いシェアを持ち、活動高は200億ユーロ(約3兆7000億円。1ユーロ=185.84円換算)を超えます。番組は、この巨大企業が創業者の素朴な発想からどう成長し、いまグローバル展開へと軸足を移そうとしているのかを丁寧にたどっています。

50周年直前に起きた異例のストライキ

Decathlonにとって、今回のストライキは初めてに近い出来事でした。6月初め、モンペリエをはじめフランス各地で従業員が怒りの声を上げました。従業員たちは、株主に多額の配当が支払われる一方で労働条件が悪化していると訴えました。

同社は9億1000万ユーロ(約1692億円。1ユーロ=185.84円換算)の利益を計上しており、労働組合の連合体の呼びかけで、購買力を守るためのストライキが行われました。約1000人のストライキ参加者が店舗前でビラを配り、株主に支払われる配当の額を非難しました。ここで押さえておきたいのは、同社が株式を上場していない点です。

Lesniac氏によれば、Decathlonは通常むしろ良い雇用主とみなされており、若い大卒者にとって非常に魅力的な就職先だといいます。同社の経営トップは、年間80万通の履歴書を受け取っていると語っていたそうです。給料は特別高くはないものの、生活と労働の質が重視される職場だと評価されているわけです。

背景には、同じMulliez(ミュリエ)家系の企業グループの事情があります。Decathlonは、フランスの八大富豪のひとつに数えられる北部の実業家一族Mulliez家が擁する企業群に属しています。この一族の企業には、Auchan(オーシャン)、Leroy Merlin(ルロワ・メルラン)、Boulanger(ブーランジェ)などがあり、Decathlonはその中でも好調な優良企業です。Decathlonが、グループ内で不振に陥ったAuchanなどの損失を補わなければならない状況が、賃上げ拒否の一因になっていました。

6月中旬の新たな抗議行動の翌日、経営陣は世界中の従業員一人あたり2000ユーロ(約37万円。1ユーロ=185.84円換算)を無償株式の形で配布すると発表しました。同社は、この前例のない仕組みが1年以上前から準備されていたものだと説明しています。すでに5万6000人の従業員が株主となっており、これは全従業員の54%にあたります。彼らはDecathlonの資本の13%を保有しています。最初の従業員株式制度は1987年にさかのぼります。

素朴な発想から生まれた「スポーツの量販店」

50年前、スポーツ用品は都心部の専門店で売られる、決して大衆的とはいえない高価な商品でした。創業者たち、とりわけMichel Leclerc氏の革命的な発想は、「スポーツのハイパーマーケット」を作ることでした。フランス人が最もよく親しむ10種目のスポーツをひとつ屋根の下に集める、という着想から、10種競技を意味する「Decathlon」という名前が生まれました。郊外に1000平方メートルの店舗を構え、車でアクセスしやすく、どんな懐具合の客にも合う価格帯をそろえたのです。

Lesniac氏は、七人の先駆者の一人と呼ばれるBenoît Poisa氏に取材し、その波乱に満ちた始まりを聞きました。Poisa氏は当時24歳で、電気会社の営業担当として働いており、商業や流通のことは何も知りませんでしたが、スポーツ好きだったことからこの冒険に加わったといいます。事業を始めたとき、あったのは一区画の土地と、小川のそばの少しさびれた小さな家だけで、それが本社代わりでした。フランス国内325店舗の第一号店は、猛暑のさなかの1976年7月27日に開店しました。

その始まりは、決して洗練されたものではありませんでした。採用面接に行ったPoisa氏は、Michel Leclerc氏が実業家というより「ボーイスカウトの隊長」のような格好をしていたことに驚いたと語ります。面接では学歴や経歴ではなく、スポーツの実践経験ばかりを問われました。Poisa氏はヨットやテニス、スキーをたしなむものの、決してチャンピオンではなく、流通のことも何も知りませんでした。それでも第一号店、そして第二号店の立ち上げを任されたのです。

「私は何も知りません」と言うPoisa氏に、Michel Leclerc氏はこう答えたそうです。「たいして難しいことじゃない。四つの壁と屋根と扉があればいい」。Poisa氏は屋根の高さをどう決めればよいか分からず、自分のアパートの天井の高さである2.35メートルを測り、少し足して最初の店舗を3.50メートルにしたものの、低すぎたため第二号店で修正したといいます。狩猟用品の売り場を作る際には狩猟連盟に助けを求め、最初の宣伝では、サッカークラブLOSC(リール)の試合中に駐車場でステッカーを車に貼って回り、地元での知名度を上げました。Peugeot(プジョー)など一部の仕入れ先が納品を拒んだため、彼らは自ら製品を企画・設計・製造せざるを得ず、それが今日に至るまで同社の強みとなりました。

「À fond la forme」──広告と自社ブランドで築いた地位

初期のスローガン「スポーツマンの領域(le domaine des sportifs)」は、ジムやスポーツクラブと混同されてしまったため、「すべてのスポーツマンのためのすべて」という新しい表現に変えられました。1980年代にDecathlonの名を広く知らしめたのが「À fond la forme(全力で健康に)」というスローガンで、これは広告代理店Euro RSCGのJacques Seguela氏が手がけたものです。

Seguela氏は当時をこう振り返っています。競合のIntersport(アンテルスポール)がいたため「スポーツ」という言葉は使えず、しかもDecathlonはNikeやAdidasのようなトップレベルのスポーツではなく、ラテン語本来の意味での「アマチュア=スポーツを深く愛する人」のためのものだった、というわけです。つまり、普通の人々のためのスポーツを打ち出したのです。

50年を経た現在も、同社は好調です。市場全体はコロナ禍以降やや勢いを欠くものの、Decathlonは市場平均を上回る成長を見せています。同社は売上高ではなく、マーケットプレイスや中古品、レンタルも含めた「活動高(volume d'affaires)」で語ります。この活動高は昨年2.36%増、今年に入ってからは3.1%増でした。フランス市場でのシェアは5年で2ポイント伸び、現在では27%近くに達しています。活動高は200億ユーロ(約3兆7000億円。1ユーロ=185.84円換算)を超えます。2025年には中古品を150万点以上販売しました。

流通業界がフランスで、ネット通販や低価格を打ち出すLidl(リドル)などの圧力にさらされるなか、Decathlonが底堅さを保つ理由は「適正価格(juste prix)」という約束にあります。フランス法人トップのBastien Grand-Georges氏が繰り返す言葉で、革新的な製品を一流アスリートと共同開発しつつ、それをすべてのフランス人が手の届く価格で提供する、という発想です。2026年には技術系の入門価格帯商品の10%が平均15%値下げされました。Decathlonの売り場では、水着やリュックサックを2.99ユーロ(約556円。1ユーロ=185.84円換算)で見つけることもできます。

もうひとつの強みは、早くから自社ブランドに賭けた点です。かつて仕入れ先が納品を拒んだという制約から生まれた選択でしたが、これが差別化の決定的な要素になりました。Foot Locker(フットロッカー)を2025年に買収した米国大手のDick's Sporting Goods($DKS)が、AdidasやNikeなど第三者ブランドに大きく依存しているのに対し、Decathlonは自社の「パッション・ブランド」を中心に据えています。ただし、多数のブランドが増えすぎて共食いを起こしたため、2023年に大規模な整理が行われ、70以上あったブランドは現在14ブランド(一般向け9、専門4)にまで絞り込まれました。この改革により、重複する品目の15%が削減される見込みです。

国際展開と新星Paul Sexas氏

Decathlonは、単なるフランスのブランドではありません。活動の75%は国外で行われています。国際展開は早く、1986年にはドイツのDortmund(ドルトムント)に第一号店が開かれました。現在では世界に1902の店舗と倉庫を持ち、82の市場に進出しています。スペインやドイツ、インドで大きな成功を収めている一方、米国では一度も定着に成功しておらず、カナダも英語圏では苦戦しています。

そして、50周年の話題を後押ししているのが、フランス自転車界の新星Paul Sexas氏です。19歳で初めてツール・ド・フランスに挑む同氏は、チームDecathlon CMA-CGMの主力として、すでに大きな期待を集めています。スポーツディレクターのJulien Jourdy氏は、初週でステージ優勝を挙げ、Sexas氏が総合5位につけたことを大きな安堵とともに振り返りました。第一週で勝利を挙げたチームは多くないため、その意義は小さくありません。

Sexas氏をチームに擁することは、Decathlonにとって強力な露出の手段になります。同氏を装備で支えることで、一般向け製品だけでなく最高のアスリートも支えられることを示せるからです。すでに複数の自転車チームがSexas氏に強い関心を寄せており、DecathlonとCMA-CGMは彼を引き留めるために競り値をかなり高くつり上げる可能性があるといいます。

ツールがとりわけ光を当てるのが、Sexas氏の自転車・装備ブランドVan Rysel(ヴァンリゼル)です。世界的な露出は、国際展開を加速させたい同社にとって重要な意味を持ちます。高性能の自転車で熱心なサイクリストを取り込みつつ、手頃なモデルでより広い層にも訴える、という幅広い品ぞろえによって、高級化への歩みを示しながらも「誰もが手の届くブランド」というDNAを守る狙いです。

同社のスポンサー戦略は攻めの姿勢が特徴です。テニスのGaël Monfils氏、柔道のTeddy Riner氏、2025年からはブランドKipsta(キプスタ)を通じてサッカーのAntoine Griezmann氏、そしてSexas氏を起用しています。興味深いのは、これらの選手が広告に顔を出すだけではない点です。Decathlon自身が、これを単なる看板広告ではなく「共同設計(co-conception)」だと位置づけています。アスリートは製品開発に参加し、それを試し、必要な点をチームにフィードバックします。チャンピオンのために、彼らと共に開発された革新を、アマチュアのスポーツ愛好者にも役立てる、という発想です。Decathlon CMA-CGMのスポンサー予算は、両社合わせて4000万ユーロ(約74億円。1ユーロ=185.84円換算)にのぼります。

売上への効果を測るのは、まだ時期尚早だとされています。ただし今年上半期の自転車販売は前年比45%以上の成長を見せており、良い流れが続いています。とりわけ顕著だったのはネット上での露出で、今年上半期のオンライン言及数は前年比300%増を記録しました。

グローバル化と店舗革新のいま

創業者Poisa氏にとって、50年で大きく変わったDecathlonには戸惑いもあるようです。彼は「調子に乗ってはいけない」と語り、国際向けの新スローガン「Ready to play」や、テニスブランドArtengo(アルテンゴ)がより外国風・ラテン風に響く「Quickma」へと改称されたことに、なかなか馴染めないといいます。このグローバル化の背景には、経営トップのJavier Lopez氏が掲げる、現在の3億人の顧客を10年で20億人にまで広げるという目標があります。

同社は近年、興味深い革新も打ち出しています。ひとつは「Visio Store」です。高価な製品について、Villeneuve-d'Ascq(ヴィルヌーヴ・ダスク)に拠点を置く専門家に、かかりつけ医に相談するようにビデオ通話で相談できる仕組みです。ネットで予約でき、無料で30分間、購入したい製品の特徴を説明してもらえます。今年は1500人の顧客が利用し、相談の2回に1回が購入につながっているといいます。

もうひとつは、都心部の小型店「Decat City」です。IKEA(イケア)のモデルに近く、Decathlonの全品目を並べるのではなく、その地区で最もよく行われる3つのスポーツをしっかり代表させる店舗です。各店舗の店長には、何を前面に出すかを決める大きな裁量があります。たとえばモンパルナスの店舗では、ワールドカップの最中にもかかわらずサッカー用品がまったく置かれておらず、代わりにヨガやフィットネス、そしてカーゴバイクなどが並んでいます。都市部の客層に合わせた選択です。Decat Cityはすでにフランスに13店舗あり、新学期にはWestfield(ウェストフィールド)に14店舗目が開く予定です。

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