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La Story(Les Echos)解説:ガラス産業の脱炭素──Verallia溶解炉の電化・原子力長期契約・Cognac世界初の電気炉

▶ 元エピソード: https://shows.acast.com/la-story/episodes/hors-serie-edf-verralia-le-verre-plus-vert-episode-20-cap-el


2026年7月19日

概要

この記事は、フランス経済紙Les Echosが配信する日次番組La Storyの特別編で、EDF($EDF)の電化推進プログラム「Cap Électrification(電化への転換)」の一環として制作されたエピソードを解説するものです。ゲストは、ガラス容器大手Verallia($VRLA)フランスの購買責任者Samuel Hoth氏と、EDFの大口顧客担当責任者Claire Merveille氏です。テーマは、ガラス産業の脱炭素と、その要となる溶解炉の電化です。

ガラスはリサイクル率が高く環境に優しい素材として知られていますが、製造工程では原材料を約1,500度まで加熱する必要があり、この工程だけで業界のCO2排出の72%を占めます。ガラス産業はフランスで4番目に排出量の多い産業であり、脱炭素の難易度が高い分野です。従来はガス燃焼の炉が使われてきましたが、Veralliaはこれを電化することで排出削減を目指しています。

記事では、2024年に稼働した世界初となる大型100%電気炉(Cognac工場)や、ガス使用の大部分を電気に置き換えるハイブリッド炉、EDFとの原子力電力の長期供給契約、そして溶解炉以外の輸送・原材料調達まで含めたサプライチェーン全体の脱炭素の取り組みを紹介します。産業界の電化が、技術・資金・電力供給の三位一体でしか成立しない現実が浮かび上がる内容です。

Verallia──創業200年を迎えるガラス容器の世界3位

Veralliaは、飲料・食品向けガラス包装のリーダー企業です。パリ証券取引所に上場する産業グループで、売上高は30億ユーロ(約5573億円。1ユーロ=185.77円換算)を超えます。世界では30ほどの工場を通じて180億本以上の瓶や容器を生産・販売し、およそ1万社の顧客に供給しています。フランス国内には11の生産拠点と2,500人の従業員を抱えています。

Hoth氏によれば、同社はガラス製造工場のほか、リサイクルガラスを処理して炉に再投入する処理センターを2か所、瓶の装飾を施す工場を2か所持っているとのことです。飲料・食品向けガラスの世界生産で3位に位置し、1827年にフランス北部エーヌ県のVaux(ヴォー)にあるガラス工場から始まった、フランスで現在も稼働する最古の産業でもあります。来年には創業200年を迎えます。

素材としてのガラスの魅力は多く、100%かつ無限にリサイクル可能で、食品・飲料に対して中性であり最終消費者にとって安全です。さらに複雑な形状を実現できるため、顧客のマーケティング要求にも応えられます。

2040年カーボンニュートラルへの道筋

Veralliaの存在意義は「持続可能な未来のためにガラスを再構想すること」にあり、最大の課題が脱炭素です。ガラスには多くの利点がある一方、その製造工程が依然として非常にエネルギーを多く消費することを、同社は認識しています。

そこで数年前からCO2ロードマップを策定し、スコープ1(自社の直接排出)とスコープ2(購入電力に伴う排出)を2019年から2030年の間に46%削減する計画を進めています。Veralliaは2040年までのカーボンニュートラルを表明した初のガラスメーカーであり、Hoth氏はこの点に大きな誇りを示しました。目標達成の鍵は、ガスの消費を減らして製造工程を電化する、エネルギーミックスの転換にあります。

EDFのMerveille氏の役割は、大口顧客担当として、大手産業界のエネルギー供給の課題や、EDFグループと顧客企業に共通する諸課題に応えることです。両社の関係が大きく動いたのは2022年から2023年の冬でした。ウクライナ戦争の勃発でエネルギー危機が起き、電気とガスの価格が高騰した時期です。エネルギー多消費型の産業が存続の危機と将来への大きな問いに直面するなか、両社の対話が始まりました。

ガス依存からの脱却──2TWhという桁違いの消費量

Veralliaの電力消費量は年間約500GWh(ギガワット時)に達します。Merveille氏はこの規模感を、家庭でのケーキ作りにたとえて説明しました。チョコレートケーキを1,000ワットの炉で1時間焼けば1kWh(キロワット時)であり、その1,000倍が1MWh(メガワット時)、さらにその1,000倍が1TWh(テラワット時)になります。Veralliaが年間に消費するガスは2TWhにのぼり、電力の4倍以上に相当します。

つまり、当時のVeralliaはガスへの依存度が非常に高い状態でした。ガス価格が高騰し、欧州連合がロシアからの供給を段階的に停止する決定を下すなか、工場を大規模に電化するという野心的な脱炭素計画が本格的に検討されはじめます。

しかし電化は巨大な産業プロジェクトです。工場の心臓部である炉を、はるかに大きな炉に置き換える必要があり、投資額は膨大になります。この種の投資には長期的な見通しが不可欠で、それがなければ事業計画を立てられません。そこでVeralliaは10年にわたるロードマップを策定し、EDFと並行して長期的に見通せる解決策を検討しました。その結果、2025年に約10年間の原子力電力の長期供給契約を締結し、安定した価格を確保して次々とプロジェクトを進める土台を得たのです。

溶解炉という難所──排出の72%を生む1,500度の加熱

ガラス製造工程の核心は溶解炉の稼働です。この炉はガス80%、電気20%で稼働し、ソーダ灰、シリカ砂、石灰石、そしてリサイクルガラスといった原材料を1,500度まで加熱してガラスを生み出します。

脱炭素の第一の手段となるのが、カレット(cullet=リサイクルガラスの破片)です。Hoth氏によれば、混色カレットに加え、選別すれば白色カレットも得られるとのことです。カレットの投入には目覚ましい効果があり、炉への投入割合を10ポイント増やすごとに、CO2排出は5%、エネルギー消費は2.5%減ります。

ただし、2040年のカーボンニュートラルにはカレットだけでは不十分です。第二の柱として位置づけられるのが、まさに今回のテーマである溶解炉の電化です。エネルギーミックスの見直しを進め、2040年の目標達成を確実にする狙いがあります。

Cognacの世界初大型電気炉とハイブリッド化の多層戦略

原材料を1,500度まで加熱する炉の電化は、家庭用の電気オーブンのようにはいきません。Veralliaは技術革新に挑み、Cognac工場でその成果を実現しました。2024年に稼働したこの炉は、瓶を生産できる100%電気炉として、この規模では世界初となります。1日あたり180トンのガラスを生産でき、フランスのメーカーFIVが設計を担いました。

ただし電化には複数のハイブリッド化の段階があります。Hoth氏が説明したのが「スーパーブースティング」で、炉に25%の電気を投入して電力消費を高め、CO2排出を10%削減する手法です。さらにハイブリッド炉の設計も進めており、これは電気を80%消費してガス消費の大部分を代替します。年初にスペインのサラゴサで最初のハイブリッド炉を稼働させ、フランスではロワール県のSaint-Romain-le-Puy(サン=ロマン=ル=ピュイ)工場で自社設計による初のハイブリッド炉を稼働させる予定です。複数の電化技術を組み合わせて2040年のネットゼロを目指す姿勢がうかがえます。

EDFの伴走──排熱回収と系統接続の壁

EDFはこの電化をどう支えてきたのでしょうか。Merveille氏によれば、工場に近いエンジニアの専門チームが工程を熟知し、定期的に現場を訪れて支援できる課題を探しているとのことです。工場を訪れて印象的だったのは、1,500度の炉が放つ熱でした。この熱を再利用する価値があると考え、排熱回収を専門とする子会社Dalkia(ダルキア)が担当し、昨年Lagnieu(ラニュー)工場で最初のプロジェクトが実現しました。

排出削減の効果も具体的です。Cognacで稼働した電気炉ではCO2排出を60%削減でき、フランスで計画中のハイブリッド炉では50%の削減が見込まれます。フランスは脱炭素電力に恵まれているため、電化がそのままフランス全体の脱炭素に直結します。

もっとも、支援は技術面から始まりました。炉内の電磁気の影響についてEDFとVeralliaの研究開発部門が意見を交わし、系統接続についても議論を重ねました。これほど大きな電力消費になると通常の接続では済まず、配電網ではなく送電網への接続が必要になる場合があるからです。Veralliaほどの大電力を要する接続には、時に4年もの待機期間が生じます。この課題に対し、EDFはEDF創立80周年の機会に、将来の顧客需要を見越して変圧器を一定数調達し、電化を加速すると発表しました。

資金の壁を越える──補助金とC2Eによる炉の資金調達

技術以上に重要なのが資金です。Merveille氏によれば、長期的な見通しで事業計画を再構築するだけでなく、投資額そのものを捻出する必要があり、これはVeralliaのような産業界にとって非常に重い負担になるとのことです。

EDFは複数の面で支援しています。第一に、専門家チームがADEME(フランス環境エネルギー管理庁)や欧州連合への補助金申請書類の作成を支援します。第二に、省エネ証書制度を活用します。フランスでC2E(省エネ証書=Certificat d'Économie d'Énergie)の大口義務者であるEDFは、年間一定数の証書を購入する義務があり、Veralliaがプロジェクトで生み出す省エネ分を買い取ることで炉の資金の一部を賄っています。

投資額は相当なものです。Cognacの電気炉は5,400万ユーロ(約100億円。1ユーロ=185.77円換算)で、うち700万ユーロ(約13億円)がフランス2030プログラムに基づくADEMEの補助金です。Saint-Romainのハイブリッド炉は5,800万ユーロ(約108億円)で、うち1,400万ユーロ(約26億円)がADEMEの補助金でした。

ただし脱炭素の採算は炉への投資だけでは決まりません。利用可能で低炭素かつ競争力のある電力も必要です。Veralliaは2025年末にEDFとCAPN(原子力生産割当契約=Contrat d'Accès au Parc Nucléaire)を10年間の期間で締結しており、これは記事配信時点では既に発効済みの契約です。この契約により、低炭素で競争力のある電力価格の見通しを長期にわたって得られます。

競争条件の不均衡──国境を越える炭素補償の課題

この見通しは、ガラス市場が非常に競争的であるだけに決定的な意味を持ちます。フランス市場は主に輸入瓶によって競争にさらされており、その割合は40%に達します。

Hoth氏が最後の重要な論点として挙げたのが、炭素補償です。フランスのガラス産業は現在この恩恵を受けられていませんが、スペインをはじめとする一部の外国の競合はこれを享受しています。彼らはその競争力を武器にフランス市場へ供給しているのです。ガラス産業は炭素補償の対象として認定されており、Veralliaはこの適用を強く待ち望んでいます。

採算を成り立たせるには、競争力のある低炭素電力に加え、RTE(送電網運営会社)やEnedis(配電網運営会社)による迅速かつ低コストの接続支援、そして炭素補償を早期に享受するための公的支援が必要だとHoth氏は整理しました。

炉を超えた脱炭素──輸送と地域生産

脱炭素は溶解炉にとどまりません。Veralliaの間接排出、いわゆるスコープ3は総排出の40%を占め、そのうち70%が輸送と原材料・包装材の調達に由来します。

輸送面では、顧客のできるだけ近くに拠点を置く方針をとっています。シャンパーニュ地方には同地の顧客向けの工場を、Cognacにはコニャック向けの工場を構え、さらにシャンパーニュ地方では出荷に電気トラックを活用しています。原材料の調達には脱炭素な鉄道輸送を最大限に発展させ、長距離の顧客への配送には鉄道と道路を組み合わせるモーダルシフトも進めています。バリューチェーン全体で間接排出の削減に取り組む姿勢がうかがえます。

多様な解決策の組み合わせで2040年ネットゼロへ

Veralliaの最終目標は、ガラス産業における脱炭素のリーダーであり続けることです。CO2排出の削減と中和を2040年までに約束した唯一のガラスメーカーであり、そのコストを負ってでもこの立場を守る覚悟です。電化が鍵である一方、Hoth氏は解決策が一つだけではないと強調しました。瓶の軽量化により同じエネルギーで生産量を増やす取り組みや、再利用の推進も並行して進めています。

Merveille氏はこれを受け、脱炭素には多様な手段があり、電化への入り口も多様だと述べました。EDFはパン職人のような小規模事業者からVeralliaのような大手産業、さらにはサービス業まで、あらゆるプロジェクトに寄り添う姿勢を示しています。C2Eによる資金調達、専門家向けに新設した銀行との提携、研究開発による技術支援、長期のエネルギー価格の提示など、幅広い支援の選択肢を用意しているとのことです。

産業界の電化が、技術・資金・電力供給・制度という複数の歯車が噛み合って初めて前進する営みであることを、この対話は鮮明に示しています。日本のガラス・素材産業にとっても、脱炭素の採算を成立させる条件を考えるうえで示唆に富む事例だと言えるでしょう。

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