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La Story(Les Echos)解説:猛暑・債務・支払い遅延に喘ぐフランスの病院

▶ 元エピソード: https://shows.acast.com/la-story/episodes/canicule-dette-delai-de-paiement-lhopital-en-surchauffe

2026年7月20日

概要

本記事は、フランス経済紙Les Echosが配信する日次ポッドキャスト番組La Storyの回を解説するものです。今回はフランスの病院システムが直面する複合的な危機、すなわち断続的な猛暑(カニキュール)による医療現場の逼迫、深刻化する財政赤字、そして取引先企業への支払い遅延という三つの問題を取り上げています。

パリック・フェイ(Pierrick Fay)氏が進行役を務め、Les Echosで医療分野を担当するソレーヌ・プルナック(Solène Poulenac)氏が解説にあたっています。フランスでは1か月半以上にわたって猛暑が続き、救急外来への搬送が増加する一方、多くの病院では病室や廊下が高温状態にあり、患者にも医療従事者にも過酷な環境が生じています。

政府は緊急対応として1億ユーロ(約185億7000万円。1ユーロ=185.70円換算)を投じて移動式エアコン3万台の配備を進めていますが、これはあくまで応急措置にすぎません。より根本的には、病院の財政赤字が累積し、税金・社会保険料の未払いや取引先への支払い遅延という形で問題が噴出しています。

背景には、新型コロナウイルス対策として実施された給与引き上げが十分に補填されなかったこと、物価高騰による経費増、そして活動再開の遅れという構造的な要因があります。任期末を迎えた政府には抜本的な対応が難しく、病院システムの再編という「タブー」に踏み込めない状況が浮き彫りになっています。

猛暑に直面する病院の現場

フランスでは2026年夏、断続的な猛暑が続き、7月20日にはテュル(Tulle)で気温39度を記録しました。同地の病院の救急外来には、高体温症で言葉を発せなくなった91歳の男性が搬送されるなど、深刻な事例が報告されています。

プルナック氏によれば、猛暑は救急外来への搬送増加を招くため、病院は「Orsan 3計画」と呼ばれる警戒態勢に入り、通常の手術を延期して患者受け入れの余裕を確保する事態になっています。この警戒態勢は現在も継続中です。

現時点では集中治療の飽和には至っていないものの、多くの病棟が満床に近い状態にあります。より切実な問題として、病室が高温にさらされ、医療従事者も他の多くのフランス人と同様に猛烈な暑さの中で働いています。そこに患者が次々と搬送されてくる状況です。猛暑による超過死亡も確認されていますが、その正確な死者数はまだ判明していません。

移動式エアコンをめぐる緊急対応

こうした状況を受け、政府は緊急に予算を投じる方針を示しました。1億ユーロ(約185億7000万円)の予算枠で、緊急に移動式エアコン3万台を購入する計画です。

保健相のステファニー・リスト(Stéphanie Rist)氏は7月10日、すでに7500台のエアコンが医療・福祉施設や高齢者向け介護施設に納入されたと説明し、7月15日までに1万5000台、遅くとも8月初めまでに3万台を納入する予定だと述べました。

ただし、これらはあくまで応急的な冷却手段であり、この夏を乗り切るための緊急措置にすぎません。今後何年にもわたってすべての施設に空調を整備するための投資ではない点に注意が必要です。

猛暑対策は政治的な争点にもなっています。地域圏議会議員のロラン・ウォキエ(Laurent Wauquiez)氏は7月16日、ヴィエンヌ(Vienne)の病院に移動式エアコン3台を届け、地域圏として最終的に1500台を購入すると約束しました。最初の150台の配備に150万ユーロ(約2億7855万円。1ユーロ=185.70円換算)を投じ、戦略的な在庫を確保する狙いだといいます。病院の運営側も政府の計画を待たずに購入を進めており、パリ公立病院連合は猛暑の初期段階で1800台を発注しています。

長期的な適応には巨額の投資が必要

長期的に病院が気候変動に適応するには、フランス公立病院連合が求めるように、膨大な投資が必要になります。同連合は記者会見で、建物の改修のために5年間で50億ユーロ(約9285億円。1ユーロ=185.70円換算)規模の「グリーン基金」の創設を訴えました。

同連合の事務総長によれば、多くの病院は1980年代の気候を前提に設計されており、適応が急務だと指摘しています。政府側も、この問題に特化して予算を配分する方針を示しています。政府は、コロナ後に病院向けに100億ユーロ(約1兆8570億円。1ユーロ=185.70円換算)超の投資予算を投じたと説明し、2003年以降40%の病院が「冷却化」されたとしています。

しかし、病院の建物群は膨大であり、公式報告書でも一定の老朽化が指摘されています。近年の改修や新築の建物であっても、今回のような極端な暑さは必ずしも想定されていませんでした。病院の不動産資産の状態に関する包括的な診断が存在しない点も、対応を難しくしています。

長期的な視点では、フランス公立病院連合は資産の維持、設備の近代化、病院や高齢者向け介護施設の気候変動への持続的な適応のために、年間70億〜90億ユーロ(約1兆2999億円〜1兆6713億円。1ユーロ=185.70円換算)を要求しています。

累積する財政赤字と税・社会保険料の未払い

こうした投資の必要性は、病院の財政状態が近年著しく悪化しているという文脈の中で生じています。コロナ後に赤字が拡大し、直近では全施設合計で累積27億ユーロ(約5013億9000万円。1ユーロ=185.70円換算)の赤字に達しています。前年の29億ユーロ(約5385億3000万円。1ユーロ=185.70円換算)よりはわずかに改善したものの、依然として厳しい状態です。政府が委託した調査でも、財政状況の深刻さは「前例のないもの」と評価されています。

赤字の累積に加え、病院の債務も膨らんでいます。特に税金・社会保険料の未払いは20億ユーロ(約3714億円。1ユーロ=185.70円換算)を超えています。病院は給与にかかる税や、職員の年金にあたる保険料を支払う義務がありますが、これらが期日通りに納付されず、年金基金に対する債務として積み上がっているのです。取引先への支払い遅延と並び、これらは病院の財政が極度に逼迫している症状にほかなりません。病院には十分な資金がなく、支払いが遅れがちになっているのです。

コロナ後の支援策が効果を発揮しない理由

コロナ後、政府は「セギュール・ド・ラ・サンテ(保健分野の労使協議)」と呼ばれる19億ユーロ(約3528億3000万円。1ユーロ=185.70円換算)規模の計画をはじめ、病院部門を支えるために多額の資金を投じました。特に病院職員の給与改善が図られました。

しかしプルナック氏によれば、病院は求められた通り職員の給与を引き上げたものの、その負担増が国から完全には補填されなかったといいます。給与引き上げは段階的に実施され、パリで決定された内容が地方や現場に反映される過程は容易ではありませんでした。

加えて、コロナ後には強いインフレが発生し、病院の経費が急増する一方で、活動の再開は遅れました。職員の欠勤や手術の延期が重なり、遅れた医療への対応に追われました。病院はこうした状況を「はさみ効果」と表現しています。経費の急増と収入の伸び悩みが数年にわたって積み重なった結果が、現在の巨額の累積赤字なのです。

病院間の格差と国の対応

もっとも、すべての施設が同じ状況にあるわけではありません。財務監査を担う財務総監察局と社会問題総監察局の報告書は、財政状況が非常に不均一であると指摘しています。給与引き上げの補填が不十分だったという構造的な問題に加え、経営の巧拙による差もあります。

出生率の低下により産科が縮小したり、手術室の稼働が低いといった、活動が停滞したままの部門が地方に存在することも背景にあります。同じ地域に近接して複数の病院があり、人口が減少している場合、病院システムの組織のあり方そのものが問われることになります。

2026年初めの時点では、税金・社会保険料の債務残高の60%がわずか20施設に集中していました。海外県や、ノルマンディー地方の複数の病院で困難な状況が見られるといいます。

政府の対応は極めて難しい状況にあります。過半数を失い、大きな政策を打ち出せないうえ、病院というテーマは政治的に極めて敏感です。地域圏医療庁を通じて病院と連携し、再建計画を検討させる指示は出されているものの、任期末を迎えており、抜本的な対応は期待できないというのが実情です。財務・社会問題の監察局は、数年にわたって病院システムの組織を再考する必要があると指摘していますが、部門の閉鎖を含む再編は現在の「タブー」となっています。

取引先企業を苦しめる支払い遅延

支払い遅延に苦しむのは国だけではありません。病院に商品やサービスを提供する企業も、大幅な遅延に直面しています。プルナック氏が取材した救急搬送事業者は、支払い遅延によって中小企業が深刻な打撃を受けている実情を語りました。抗議すると一時的に状況が改善するものの、数か月後には再び悪化するといいます。病院の資金繰りの問題が構造的だからです。

企業側は数か月にわたって警鐘を鳴らしており、複数の業界団体が首相府に書簡を送っています。企業の書簡によれば、支払い遅延は200日から300日に及ぶこともあるといいます。病院の支払い法定期限は50日ですが、調査会社アルタレス(Altares)によれば、5月時点で法定期限を25日超過する遅延が生じていました。民間企業は支払い期間を短縮する傾向にある一方、病院では悪化しているのです。中東情勢の緊迫や原油価格の高騰、倒産の増加といった、企業にとって不安の大きい環境の中で、この問題は生じています。

北部選出の上院議員オリヴィエ・エノー(Olivier Hainaut)氏は6月初め、清掃・警備・集団給食などの分野で多くの病院委託業者が倒産の瀬戸際にあると訴え、公立病院の取引先に対する債務が75億ユーロ(約1兆3927億円。1ユーロ=185.70円換算)に上ると指摘しました。

中小企業を代表する団体(旧CPME、現在は「起業家連盟」)の会長アミール・レザ・トフィギ(Amir Reza Tofighi)氏は、支払われない企業が経営破綻の危機に瀕していると訴えています。民間企業が支払いを遅らせれば制裁を受けるのに対し、国が支払わない場合には罰せられないという不公平感が強まっています。年初以降、支払い期限を守らない企業への競争・消費・不正防止総局(DGCCRF)による監視が強化される中、企業側は国に対して範を示す責任を果たすよう求めています。

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