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DIVE TO OIL

私「ちょっとすみません、M野さん!
今だいぶカスタマー(配膳)厳しいので行ってもらってもいいですか?」
M野さん「いいけどどうし…って、ええ?!ええ?!」
私「新メニュー開発してしまいまして…」 
M野さん「いや、いや、ええ?!」
私「腕の素揚げ…」
M野さん「お客様ァァァア!ごめんなさい、店員の腕が素揚げになってしまったのでちょっと提供遅れますゥゥゥウ!!!」

閉店1時間前に唐突に新メニューを開発してしまう私であった。
(完)

↑この記事に登場する店です。

ことの経緯を説明すると、
某チキンを油の中から取り出そうとして
手を滑らせてしまい、トングを油の中にダイブさせそうになったんです。
トングが油の中に落ちるのを阻止しようとしたところ、
意図せず新メニューを開発してしまったわけです。

DIVE TO OIL

DIVE TO OIL
(ラストサビ)
灼熱の油に腕揚げられて
M野は慌ててバンズ飛ばす
見なれたシフトにも別れを告げて
壊れた細胞を悼もう

定められた時間までは
仕事こなし明日病院行こう

Y'Omogi〜en〜Ciel「DIVE TO OIL」

↑本家L'Arc〜en〜Ciel「DIVE TO BLUE

目に映る世界がスローモーション。
私は咄嗟に
お前トングだけを死なせなりはしない!俺がお前トングを守る!」
と謎の正義感を発動させてしまい
気づいた時には油の中でトングを掴んでいたんですね。

…結局お前トングを救えなかった。
すまない…

出来上がったのは
トングの素揚げ腕の素揚げ

あの一瞬で私は見ました。
腕が油に浸されジュワワワァァァアという音と共に
泡に包まれるのを。
いつも揚げているポテトとチキン、それにアップルパイと変わらないのです。

なぜか冷静で、揚げ途中の腕の素揚げ
トングの素揚げを掴み、
さらにそのトングの素揚げチキンを掴み
引きあげたんですね。
つまり完成したのは、
◽︎チキン(従来メニュー)
◽︎腕の素揚げ(新メニュー)
◽︎トングの素揚げ(新メニュー)
の3つです。

いらぬ正義感のせいで犠牲になったのは
その日の夕方に店長が嬉々として交換した揚げ油。
だって、さすがに
腕の素揚げ”とかいう不衛生極まりない新メニューを作った油で揚げた食品、お客さんに出せないじゃないですか。
新手のバイトテロですよ、全く。
否、バイトテロ通り越してバイオテロ。

ただ、このチキンに関しては
お客さんが人格者だったので
私の腕と共に揚げられたチキンを回収してくださり、
なんと
「お大事に」
という言葉までかけてくださいました。
なお、この日の相方M野さんは
シフト入るたびに“焼き指”を作っていたので裏メニューの方の定番でした。

焼き指】〈名〉
誤って鉄板に触れてしまい、火傷をした状態の指を指す。

Yomopedia

そんな焼き指M野さんと腕の素揚げ私の2オペですからね、
頼れるものは何もないわけです。

2オペの我々に課された任務は
◽︎今入っているオーダーを捌ききること
◽︎残り1時間で入るオーダーへの対応
◽︎バイオテロでだめになった油の交換
◽︎掃除
◽︎レジしめ
◽︎機器メンテナンス

トマトを湯剥きするが如く氷水に
腕の素揚げを浸しながら私はM野さんに提案しました。

「店長が“最後の砦”とか言っておいてすごい頻度で使うアレ、今こそ使う時じゃないですか?」

というわけで揚げ物系メニュー全てに
最後の砦こと“売り切れシール”を貼っていきます。

最後の砦の乱用
店長が疲労困憊してくると、
店長が個人的に「作るのがダルい」商品が売切れる現象。
実際には売切れていないため、エア売り切れとも。

Yomopedia

一体、店長の“最後” は何回くるのでしょうか。

それはさておき
この日ありがたかったのはこの段階で
店内飲食人数ゼロだったことです。

最後の砦売り切れシールを貼るに至るまでの経過を実際の会話を元に再構成してお送りします。

M野さん「よもちゃん、こんな時にアレなんだけどさ。」
私「なんでしょう?」
M野さん「伝説のバーガーの話知ってる?」
私「何ですかそれ。」
M野さん「店長がそこ(作った持ち帰り用バーガー梱包するところ)に最後の砦売り切れシール置いてて…」
私「ええ。」
M野さん「“”シールと最後の砦売り切れシールを間違えてさ、(紙で包んだ)スパモッチ(スパイシーモスチーズバーガー)に最後の砦売り切れシール貼ったんだよ。」
私「で、どうしたんですか?M野さんが上から“”シール貼ったんですか?」
M野さん「いや、自分で気付くだろうと思って放っておいたら…」
私「そのままお客さんに持たせた…?」
M野さん「そう!」
私「絶対面白がってるじゃないですか!絶対そのまま持ち帰ることに期待してるじゃないですか!」
M野さん「20分くらいしたら店に電話きて…」
私「ええ。」
M野さん「お客さんが“伝説のバーガー”入ってるんですけど大丈夫ですか?って!」
私「え?」
M野さん「電話越しにお客さんが吹き出して、なんかずっと“モノはあるのにないってこと”とか“売り切れ味”とか言って無限に電話切ってくれなくて…」
私「それはきつい。」
M野さん「多分10分くらい“伝説のバーガー”の話してた。」
私「だいぶきつい、面白すぎて。」
M野さん「俺が電話とっちゃったからオーダー溜まり続けるし…」
私「で、溜まったオーダーってどうなったんですか?」
M野さん「え?捌いたよ。キャッシャー(レジ)にいた店長が。」
私「それ溜まってないに等しいじゃないですか、店長だし。」
M野さん「それがさ、電話切ってからオーダー表見たらドリンクとデザートしかなかったんだよね。」
私「そんなことあります?…あ。」
M野さん「気付いた?」
M野さん&私「せーの!」


最後の砦売り切れシール

このことから着想を得た我々が下した決断は
店長の秘密兵器“売切れシール”を油を使う商品写真に貼り付けること。

外のメニュー表にも、
レジ前のメニュー表にもとにかく貼る。
貼って貼って貼りまくる。
調子に乗ってM野さんの背中にも1枚貼っておきました。

そして腕の素揚げにはM野さん特製
ゴミ袋製冷却装置”を装着。
そうこうしているうちにラスト20分になったシフト。
店の前を素通りしていく人々を安堵しながら眺めつつ、
「このままゼロだといいんですけどねェ」
とぼそっと言った途端に鳴り響く店の電話。

M野さんと私は戦慄しました。
“この期に及んでデンチュウ電話注文だとォ?!”
恐る恐る電話をとるM野さん。

「はい、こちら●●バーガー××店、M野でござ…
ああ、なんだ、店長。」
なんなんだその安堵なのか怒りなのかわからない名乗りと店長へのリアクションの差。

(スピーカーモード)
店長「あのさァ、休憩室の俺のテーブルのところにさァ、変ななんか青いのない?青いの!なんだっけ、青いやつ、帽子だ!帽子帽子。」
M野さん「(見に行きもせず)ないでーす。ブチッ」
私「ええーー、さすがに見てみましょうよ、青い変なのあるかもしれませんよ。」
M野さん「シフト入る前見た時青いのはなかったから。緑のはあったけど。」
私「それ、緑のこと青って言ってるんじゃ…?」
M野さん「あ、そっか!青信号の原理か!折り返そ。」

店長への折り返し電話などをしている間に、
結局営業時間は終了。
新メニュー開発後、お客さんはゼロ。
最後の砦売り切れシールだけが堂々と写真の上で胸を張っています。

私たちが最後の砦売り切れシールを乱用したせいで、
翌日店長が使う分が足りなくなり
本当に在庫が切れた商品写真の上に貼られたのは
“辛”シールでした。
甘いフローズンケーキの写真の上に“辛”シールです。

なお、腕の素揚げは1ヶ月かけて元の腕に戻りました。

本日も何が言いたいのかわからない当店にご来店いただきありがとうございました。
またのご来店、お待ちしております。

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