少年少女、それはクリップ
「先生って磁石みたい。」
昼食のラーメンをすする合間に娘が言う。
「先生の周りには人がたくさん集まるの!先生が歩くとみんながついてく。…私もね。」
唇にふやけた海苔が貼り付いている。
「引き寄せられた私たちはクリップ。」
…aikoでしょうか?
いいえ、我が子。
ほんの30秒ほどの間に、語感の悪過ぎるaikoと
守備範囲が狭過ぎる金子みすゞが爆誕してしまった。
でも、ちょっと待ってほしい。
カブトムシは甘い匂いに誘われて、自分の足で匂いの元に歩いていく。
クリップは磁力に誘わ…
違うな。
もはや不可抗力、誘われるもなにも磁石が近付いてきたら否応なしに吸い寄せられる運命。
カブトムシはメスに存在を知らしめるべく甘い匂いを発するけれど、
先生は何も意図せずガッチリと生徒の心を掴んで離さないのだ。
参観日の休み時間、
先生は左腕に2人、右腕に1人ぶら下げて
1人を甲羅にして歩いていた。
4体の児童を装備した先生の後ろには5人の児童が連なっていたし、
教室の前を通ればその磁力に吸い寄せられてドアから子どもがするする出てきて気付けば大きな人の群れができていた。
たしかにゴッソリとクリップを吸い上げる磁石みたいだな、先生。
ふむふむと納得する私の前に置かれたラーメンはのびのびである。
思い返せば、私にも磁石がいた。
でも、素直じゃないクリップの私はその磁力から逃れることに必死だった。
本当はすぐにでも吸い寄せられたかったのに。
壁を作った。
でも、その強過ぎる磁力で私は自分で作った壁にぴったり貼り付いて身動きが取れなかった。
「先生、ありがとう。大好きだよ。」
あの時、素直に言えていたらな。
みんなみたいに、先生の腕にぶら下がれていたらな。
私のしょうもない感傷を全部吸い込んだラーメンはのびのびを通り越して膨らんでいる。
…時が経つほど大きくなるタイプの後悔の如し。
丼の中は干上がっている。
流し過ぎた涙の後先の如し。
「お母さん!ラーメン増えてるよ!」
ふと、我に帰る。
少しどころかかなり背の高い先生に引き寄せられた娘は…
そう、左腕にぶら下がっていた2人のうちの1人である。
素直になれなかった私の代わりに、
しっかり素直を実現していく娘の姿に過去の私が救われる。
「私、先生のこと一生忘れない!忘れられない!忘れたくない!」
詩人でしょうか、いいえ、娘。
私は私の恩師に手紙を書こう、そう決めた。
空に向かって、手紙を書こう。
ありがとう、先生。
私、先生のこと一生忘れません。
大事な思い出をクリップで留めて、明日へと進んでいく。
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よもぎちゃーん!
はーい!
何が好き?
ポテトチップスよりも
お・ぬ・し