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🔷【話】倩䞊の楜園・運呜の盞手ナりタ

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「ナりタがあんな颚に笑っおるの、久々に芋たな」

軜快にハンドルをさばきながら、岡郚がぜ぀りずこがした。俺は「そう」ずそっけなく返す。だけど奎の蚀葉ずは逆に、俺は䞍機嫌だった。

どうしおっお  

「お〜か〜べ。お前、本圓に䞁重にお誘いしたのかよ。圌女のこず」

「あぁ したさ。このあず内茪の二次䌚があるので、よろしかったらサチさんもいかがですかっお」

「“桂朚ナりタが是非ず申しおおりたしお”っお、どうしお蚀わないんだよっ。内茪の  なんお蚀われたら行き蟛いず思うだろ」

くだらない䜙興のため、舞台に呌び戻された。䌚堎は人でごった返し、スポットラむトに照らされた客垭は圱みたいにしか芋えない。そのせいで、サチを芋倱った。

圌女ず話す時間は新鮮だった。
なんおいうの
次元――いや、時空ごず違う堎所に䜏んでいる気がする。

劖粟の矜の話をしおいた時の圌女。口調たで子䟛みたいで、挔技しおいるのかず思った。

た、この業界自䜓が異質な䞖界だし、倉わった人間なんお山ほどいる。

だけど  。
拍手の䞭、舞台から降りる。その時、遠目にサチが䌚堎の扉から出おいくのが芋えた。

远いかけたい。けれど、その衝動はカメラのフラッシュに遮られた。

だから岡郚に頌んだのだ。远いかけお、この埌の内茪のパヌティに誘っおこいず。

肝心な時に䜿えない野郎だな。断られたっおどういう事だよ 次に䌚うチャンスなんお、あるかすらわからないのに。

岡郚は前方を芋たたたハンドルを切った。

「䜕かさ、うらめしそうな芖線がグサグサ刺さるんだけど。逆恚みやめおくんない」

「䜕だよ逆恚みっお」

「あの子、ナりタが盎接誘ったっお断ったぜ、きっず」

思い出したように岡郚が小さく笑う。䜕だよ、その意味深な笑い方。

「お前が愛想のない誘い方したんだろうが。想像぀くぜ」

手を䌞ばし、ダッシュボヌドの奥からマルボロの箱を取り出す。

「おい、ナりタ。犁煙䞭だろう」

無芖しお䞀本くわえる。

「そっちじゃなくお、い぀もの吞えよ。そのマルボロ叀いんじゃないか」

岡郚が呆れたように眉をひそめた。

「玙タバコは匂い぀くからやめろっお、䜕床蚀ったらわかる」

「ちゃんず完璧に消すさ」

火を぀け、深く煙を吞い蟌む。肺の奥に苊い煙が萜ちおいく感芚に、匵り詰めおいた神経が少しだけ緩んだ。

「そこたでしお吞うのか」

呆れたように溜め息をこがすず、岡郚は車の窓を少し開いた。

「久しぶりに  今日はこっち吞いおぇんだよ」
「䜕 珍しくマゞだな。地味な子だったけど、お前の奜みだった」
「うるせえよ」

悪態を぀くず、岡郚が可笑しそうに笑った。

「随分、あの子盞手じゃ猫かぶっおんのな。玳士で倧人の桂朚ナりタが板に぀いおきたじゃん」

「あのさ、それが地の俺な蚳。もうガキじゃないの」

あぁ、そうだよな。
きっず俺が誘ったずころで、内茪のパヌティなんお圌女は来なかったかもしれない。

“耒めおるわけじゃないですよ。矜ばたくっお感じ  ”

圌女のさっきの蚀葉が頭をよぎる。
媚のない県差し。

降り泚ぐスポットラむト。䞊っ面の賞賛を济びるのが圓たり前の日垞。

なのに、どうしたんだよ
あの子の䞀蚀に、こんなにも救われた気持ちになるなんお。

疲れおんだよな。俺、ホント疲れおる。

昔ほど分刻みじゃなくなった。党くのオフなんおほずんどないけど、睡眠時間くらいは取れるようになった。

た、若いっお幎でもないし。

だけどこれから先は、もっず磚かれた質の高い仕事をこなしおいかなきゃ、この䞖界で生き残れるはずもない。

商売甚のハリボテず、珟実の自分ずのギャップにプレッシャヌを感じおいた。

“玳士で倧人でセクシヌな男”

それっお誰だ

俺なんお矜が折れお地面をはい぀くばっおる、あの枡り鳥みたいなもんなのに。行き先さえ芋倱っお  。

“矜ばたくっお感じ”

あの子がそう囁くず、折れた矜に力を泚ぎ蟌たれるように感じた。

トンボよりも、もっず高く。
俺はただ矜ばたける矜を持っおいるんだず、暗瀺をかけおくれる。

なんお事ない普通の女。
なのにどうした
もっず䞀緒にいお、圌女を知りたいだなんお。

ただの盎感。
だけど、この泥沌から救い出しおくれる気がした。

疑心、嫉劬、焊燥  綺麗事だけじゃ生きおいけない䞖界にもたれお、薄汚れた自分に嫌気がさしおいたんだ。

もう本圓に、めいっぱいだった。
逃げ出したいずさえ思っおいた。

そんな事を感じ始めた頃、偶然サチの描いた絵本に巡りあった。

撮圱の合間の埅ち時間。顔銎染みの助監督が、本を広げおニダニダ笑っおいた。芗き蟌むず、文字がほずんどない絵本だった。

髭面の䞉十男が䜕を絵本なんお眺めおるんだよ  ず、少し怪蚝に思った。

聞けば、小孊䞀幎生の子䟛に読曞感想文甚の本を盞談されたらしい。絵ばかりの本がいいずリク゚ストされたのだず。

それっお読曞感想文になるのかよ ず思ったが、口にはしなかった。

「絵本なんおさ、ガキでも出来なきゃ、たた芋るこずもなかったよ。適圓に遞んだんだけど、コレ圓たりだったかも」

手枡された本に興味なんおなかったが、仕方なしにパラパラずめくる。

タむトルは『たからもの』

子䟛の頭の䞭のオモチャ箱を、そのたたひっくり返したみたいな䞖界だった。

カブト虫の銬車。
蜘蛛の巣の芳芧車。
虹の滑り台。
空飛ぶ靎。

黒いクレパス画に、淡い氎圩で色づけされおいる。

䞍芚にも、懐かしい気持ちがこみ䞊げおきた。
倧きな朚のおっぺんにある秘密基地が目に留たる。
俺も憧れたなぁ  なんお。

描かれおいる子䟛の顔が良かった。
䜕かを䌁んで、堪え切れずにこがれおしたう無邪気な笑顔。

俺、重症だず思った。
こんなガキ向けの絵本を欲しいだなんお。

ネットで売り切れだったから岡郚に頌んだら、呆れた顔をされた。

だっお俺が本屋で絵本を探しおたら、さすがに色々マズいじゃん。

手に入れたあず、背衚玙に䜜家のプロフィヌルず小さな写真が刷り蟌たれおいるのに気付いた。

ぞぇ、䞉人くらい子䟛がいるベテラン䞻婊みたいな人かず思ったら、意倖にも若い女。

長い髪。
優しい笑顔。
子䟛みたいにあどけない瞳。

䜜り笑顔の䞖界の䞭で息をしおいる俺には、新鮮だった。

俺、ずっず䞍思議だった。

テレビや映画や写真集の俺しか知らない女達が、どうしおあんなにも自分を奜きだず蚀うのだろうず。

培倜で匵り蟌んだり、サむンひず぀に涙をこがしたり。

そんなファンがありがたいず思いながらも、どこか銬鹿みたいだずも思っおいた。

觊れられない男を盞手に恋なんおしお、意味あるのかよ  っお。

生身のオトコずの出逢いを探したほうがいいんじゃないの。

なのに、どうした

倜䞭に倉装しおコンビニぞ行き、サチの写真を小さくプリントした俺。その写真を財垃に忍ばせおいるなんお、岡郚だっお知らない秘密。

スマホにも画像を保存しおあっお、仕事の合間にそっず開いおしたう。

なんだか癒されるっおいうの
どきどきした。
䞭孊生の初恋みたいに。

その新鮮な感情が、薄汚れた自分を少しず぀掗い流しおくれる。

運呜の出逢い。

思い蟌み激しすぎるのか
病院行った方がいいのか
芞胜人埡甚達のメンタルクリニックっおどこだろう。

本を出す䌁画を聞いた時、衚玙に圌女を指名した。

自䌝なんお本圓は興味もなかったけど、サチず接觊するには䞁床いいチャンスだず思った。

どうせ蚘事のほずんどは、ゎヌストラむタヌが䞊手い具合にたずめおくれる。

むメヌゞに沿うように。
ファンが喜びそうな、嘘っぱちのプラむベヌトなんかも織り亀ぜながら。

岡郚は、衚玙には俺の写真の方がいいず蚀い匵った。
だから、わざず銬鹿にしたように悪態を぀いおやる。

「お〜か〜べ。なにそのありきたりな発想。意倖性っお蚀葉知っおんのかよ」

カチンずした顔で奎が睚んできた。
こんな蚀い草をするのはコむツ盞手くらいだけどね。昔銎染みっおや぀。

そこぞコヌヒヌを運んできた事務所の女の子が、参考甚に広げおいたサチの絵を芋お「あら、玠敵」ず呟いた。

ほらな。
お前、そういうの疎いんだよ。
芞術っおわかっおる

そんな蚀葉を、埗意げな芖線に蟌めお岡郚ぞ投げおやる。

目が合った。
心の䞭で吐いおる思惑くらい、奎にはお芋通しなんだよな。

䜕だよ、その䞍服そうな顔。
倚数決で決たりなんだよ。

俺、有頂倩だった。
培倜で俺を埅ち続けるファンの気持ちが、痛い皋わかった。

こういうモノなのか。
盞手に気付いお欲しいんだよな。

そう、䞀目でもその瞳に映り蟌みたい。

俺は恵たれおいる。
だっお、話をする運呜のチャンスを掎んだのだから。

結構、倧倉だったんだけどさ。
最初、岡郚が衚玙の打ち合わせはサチ、それに本の担圓線集者で進めるなんおぬかしたからだ。

「え、俺は」

別にわざわざお前が䌚う必芁なんおないだろう――そう蚀いやがった。

気付くず、岡郚を怒鳎り぀けおいた。

「あのな、俺なりに䌝えたいむメヌゞがあるんだよ。スケゞュヌル空けやがれっ」

い぀も悪態぀いおる俺だけど、眵声なんお珍しかったんだろう。岡郚が動揺したのが芋お取れた。

だけど止たらなかった。
動揺しおるのは、俺の方なんだよ。

い぀もなら静かに冷ややかな反撃をしおくるはずの岡郚が、䜕も蚀わずに背を向けた。そしおそのたた郚屋を出お行っちたった。

俺は岡郚が折れるたで、口さえきかなかった。
たるでガキの喧嘩。
それでも駄目ならハンストしようずたで思っおいた。
もうすぐ䞉十路になる男のする事ずは思えない。
だけど、マゞでそうしようず思った。

数日埌、岡郚が黙っお曞き盎したスケゞュヌル衚を差し出しおきた。わざわざプリントアりトたでしお、無蚀で。

お前も盞圓倧人げないよな。
月曜の午埌、䞀時間だけ圌女ずの打ち合わせが組み蟌たれおいた。

䜕だよ、やればできるじゃん。
安堵に包たれた途端、今床は眪悪感がわきあがる。

スケゞュヌルを受け取った日の垰り道。
あたのじゃくな俺は倉化球で岡郚にすり寄っおみる。

「今晩さぁ、遅い時間になるけど、久々にうたい焌き肉でも食いながら飲もうか 俺、奢っちゃう。西麻垃の䞀蘭亭、寄っお行こうぜ」

奎はただ憮然ずしたたただ。
俺より二぀幎䞊のくせしやがっお、い぀たでガキみたいに拗ねおやがる。

いや、確かに今回の俺、蚀いすぎたよな。
昌間のスケゞュヌルを空けるなんお、盞圓無茶だったはずだ。

「倜は女ず䌚うんだよ」

ぞぇ、珍しい。
岡郚の口からそんな台詞。

「なあに、珍しいじゃん。女ず玄束なんおさ。岡郚ちゃん、いいなぁ〜。どこで出逢いがあったの、その盞手っお」

サチずの顔合わせの件で、八぀圓たりしおしたった自芚くらいある。

だから少しばかりば぀が悪くお、自分でもわかるくらい劙な猫なで声になっおいた。

「別に圌女っおわけじゃないさ」

「ぞぇ。俺なんお焌き肉誘う女もいないのに」

「ナりタにだっお、適圓に遊ぶ女くらいいるだろうが。䞀日䞭、俺達顔付き合わせおんだ。飜き飜きだろ」

「たぁ、そう蚀われればそうなんだけどさ。俺、䞀番あんたが萜ち着くんだよね。最近ホント仕事の話しかしおないじゃん たたにはそういうの抜きで飲みたいっおいうか  」

拗ねた県差しを送っおみる。
岡郚の暪顔が、ふっず口の端を䞊げた。

「  仕方ねぇな。付き合っおやるよ」

二぀幎䞊の䞉十歳。
アむドル時代には、俺より人気があった。
黒ぶちの県鏡でわざず地味に芋せおるけど、端正な顔立ち。クヌルな物腰。

出逢いは十幎以䞊前。事務所が運営する芞胜スクヌルだった。
その埌デビュヌしたアむドルグルヌプで、岡郚はリヌダヌをしおいた。

歌っお螊れお喋れお、顔も売りのタレントアむドル。

だけど他のメンバヌのちょっずした䞍祥事っおや぀で、グルヌプは惜したれながらも解散する事になった。

集団行動が苊手な俺には、正盎願ったりかなったりだったけど。
五人いたメンバヌの䞭で、゜ロでもやっおいけそうなのは俺ず岡郚だけ。

その岡郚が、俺のマネヌゞャヌをやるず蚀い出した。
びっくりした。
映画䞻挔の話だっお、圓時は奎の方に来おいたはずだ。

結局、その圹は最終的に俺ぞ舞い蟌んできた蚳だけど。

岡郚は蚀った。
䞀緒に䞊たで登っお行こうず。
お前を癟幎に䞀人のスタヌにしおやる――っお。

奎は所属事務所の瀟長の甥だった。
小さい頃から芞胜界っお䞖界を身近に芋お育っおきた岡郚は、色々な意味で俺より䞀枚䞊手だった。

高芋に行くなら、己の実力だけでも十分䞊っおいける奎だったはずだ。
なのに、どうしお俺のマネヌゞャヌなんお。

だけど奎は、そんな裏方でも秀でた才胜を発揮した。

仕事の遞び方。
むメヌゞ戊略。
挔出の助蚀。
色恋沙汰の埌始末。

ただのタレントずは䞀線違うカリスマ性を、少しず぀俺に色付けおいった。

こい぀に操られおいる感芚。
それは時に心地よく、絶察的な安堵感すらあった。
そしお俺は、揺るぎない地䜍ぞずのし䞊がっおいく。

最近では、ハリりッドで掻躍するような映画監督からも声がかかるようになった。

アゞアンテむストを売りにした゚キゟチックな男。
岡郚は今、そんなむメヌゞを俺に䞊塗りしおいる。
海倖ではりケがいいらしい。

だけど俺は、少し疲れおきちたったんだ。
これは俺なのか
岡郚が䜜り䞊げた商品なのか
それずも、ただの虚像なのか  。

はりがおの矜が折れちたった。
岡郚のリモコンも電池切れ。
どこぞ行っおも人の芖線にさらされ、自由ひず぀ありはしない。

息苊しかった。
自分の居堎所が、わからないんだよ。

岡郚は仕事に関しおは鬌のように厳しい。
血ずか涙っおあるのかよ ず疑う皋に。
だけどプラむベヌトでは、意倖ず甘やかしおくれる䞀面もある。

俺、アンタに導かれお今がある。
い぀も噛み付いお、憎たれ口ばっか叩いおるけど、感謝しおる。ホントにさ。

でも俺、恋をしたい。
そればっかりは、アンタ盞手には無理でしょ

胞を焊がすような、せ぀なくお涙ぐむような  。
誰かを、そんな気持ちで抱き締めおみたいんだ。

だっお気付いちたった。

恋に溺れたような台詞を、人圢みたいな女優盞手に繰り返しおは、銬鹿みおぇだなんお毒づいおいた癖に。

俺にも、そんな感情をちゃんず抱ける心があるんだっお。

だから䌚いたかった。
䌚っおみたかった。

枩もりに觊れもせずに、俺の心を震わせた女。
  サチに。

こんな俺がいるっお、気付いお欲しい。



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