🎦【映画 レオン】その後の物語、勝手に創作してみた(ショートショート)
不屈の名作。映画はあのラストでいい。
もちろんそう。
でも、あれ?マチルダ殺し屋にならないのかな~って
思った人も多いのでは。
細かいことは脇に置いといて。
ちょっと、勝手にその後のもしも……を書いてみた。
(二次創作)
映画レオンは熱狂的なファンが多い。わたしもそうだ。
🔷【警告】その後の物語を許容できる方だけご覧あれ。
可愛い弟もレオンも、もういない。
ウサギのぬいぐるみが
あの子に会いたいと話しかけてくる。
うん。分かってる。
きっとあの子、まだあの部屋にいるよね。
ベッドの下かな、戸棚の中かな。
きっと見つけてあげたら、両手を広げて抱きついてくる。
愛しい弟。
寄宿舎は退屈だ。
でもタバコはやめた。
数学は少し理解できるようになった。
レオンの植物は、
少しだけ根を張った。
ほんの少し前まで
あの子と暮らしてたアパート。
レオンの部屋には、
もう別の誰かが住んでいる。
見知らぬ洗濯物。
知らない笑い声。
でも、家族が殺された部屋だけは、
まだあの日のままだった。
黄色い規制線。
剥がれかけたドア番号。
誰も住んでいない。
違和感しかない。
どうして、
この部屋だけ片付けずに残っているんだろう。
部屋の中に滑り込む。
廊下には小さなあの子の亡骸の軌跡が
チョークで刻まれたまま。
もう、消えそうなくらい擦れている。
その時だった。
階段を上がってくる足音。
いやな予感がして、物陰へ隠れる。
黄色いテープをまたぎ部屋へ入ってくる気配。
現れたのは、
見覚えのないジョギングウェア姿の男だった。
高そうなスニーカー。
乱れていない呼吸。
ひとり。
誰かが続けて来る気配はない。
男は携帯を耳に当て、電話をしている。
「……これ以上なにを調べろっていうんだ。こんな安アパートで」
冷ややかな声。
寒気がこみ上げ、物陰で息を止めた。
「スタンフィールドが勝手に暴れたせいで面倒になった」
男はうんざりしたように笑う。
「所詮ジャンキーだ。スタンがいなくなってせいせいしている。使いやすい犬だったが、首輪を外すと面倒だった。だいぶ稼がせてもらったしな」
男は靴先で、床を忌々しげに擦った。
「例の殺し屋の件で、上がまだ苛ついてる」
さっと指先が冷たくなるのが自分でもわかる。
「腕利きだったそうだな、……ああ、上も重宝していたようで」
レオンの事だ。
「たかだか掃除屋のひとりや二人、騒ぎすぎなんだよ」
その男は腕時計を見た。
「……ああ、悪い。ジョギングの途中なんだ」
スマホをウェアのポケットに突っ込むと、
男は踵を返して玄関へ向かった。
足音が遠ざかる。
静寂。
そっと、廊下に視線を走らせると、
あの子のチョークの人型が、ほとんど消えていた。
さっきの男がイラつきながら、スニーカーで踏みつけていた場所。
部屋を出て、
ゆっくりと屋上への階段を見上げた。
背中の奥が熱かった。
怒りなのか、悲しいのか分からない。
屋上からはニューヨークの街がよく見える。
レオンと二人で射撃練習をした懐かしい場所。
フェンスが目に入る。
給水塔の裏へ手を伸ばす。
重厚な箱の感触。
ほら、
ちゃんとまだある。
蓋を開き
あの時のライフルを握りながら、
そっと目を閉じた。
わかってる。
この街には、
汚い大人が沢山いる。
全部なんて無理。
でも。
レオンを“たかが掃除屋”と呼び
弟の最後の痕跡を踏みにじった
あいつだけは――
”だいぶ稼がせてもらったしな”
こいつらみたいなのがいるから、子供が死ぬ。
箱の隅にねじ込まれていた茶色い布地を敷く。
見守ってねと祈りを込めて、
あの子のウサギのぬいぐるみを脇に置いた。
身体が覚えている。
初めて触った時から、
ライフルの扱いは得意だった。
レオンは少し困ったような顔で丁寧に教えてくれた。
『ここを繋いで回せ』
添えられた指の感触が蘇る。
油の匂い。
指先が、迷いなくパーツを繋いでいく。
スコープの向こうで、
さっきまでアパートにいた男が公園を横切っていく。
一定のリズムで走る背中。
あの子の片鱗をまき散らしながら、アスファルトを踏むスニーカー。
呼吸。
風。
ひと月前、
レオンは隣で見守ってくれた。
さっきまであったわずかな風が止む。
……レオン、怒るかな。
一回くらい、いいよね。
だって。
あいつは、
レオンもあの子も奪ったんだから。
引き金へ指先を添えた瞬間、
ふいに背中越しの気配を感じた。
牛乳の匂い。
静かな呼吸。
屋上の床に敷いた布が、静かに軋んだ。
振り返らなくても分かる。
だから小さく呟いてみた。
「あたしの愛しい殺し屋さん」
あの時はペイント弾だった。
今日は実弾。
でも、へまはしない。
一発で仕留めて、
速やかに消える。
だって、
レオンはそう教えてくれたから。
「大人になっても人生はつらい?」
前にそう問いかけた時、レオンは
「つらいさ」
と答えた。
あたしは少しだけ軽くしたいの。
これからを生きるために。
人を殺したら後戻りできなくなるともレオンは言った。
もうとっくにあなたに囚われている。
でもそれでいい。
静かに息を止める。
懐かしい銃声が、
鼓膜を震わせた。
【END】

さあ、映画の世界観に浸った後はもちろんお約束のこの曲。
スキやコメントいただけたら嬉しいです。
12才の女の子に愛された、殺し屋。
永遠の傑作「レオン」どうしてこんなに切ないんだろう。
