故郷(毎週ショートショートnote)

駅前の商店はシャッターを降ろし、足繁く通った本屋は跡形もない。それでも電車一本で大都市に行けるという立地条件からか、比較的新しい家々が建ち並ぶ。
だけど、実家近くを通っていた路線バスは数年前に廃止になり、そちら方面の客は久しぶりだとタクシーの運転手は話していた。
この地を出る前から、若者の多くは進学や就職を期に都会へ行き、余程のことがない限り帰ってこない。
流行り物は周回遅れで、通販に頼れない物は断腸の思いに暮れる。気になるイベントも移動費と宿泊費を考えると断念ばかりさせられる。
愉しむこと以外に、勉学も仕事も選び放題。ずっと都会で生き続けるつもりだった。
車窓から見慣れた山が見え、国破れて山河あり。その一文が頭を過った。
私は破れた。都会で叶えるはずだった夢は、儚くも砕け散った。
故郷を離れ、ずいぶん年月が経ったというのに変わらない景色に、何故か小学校の校歌の一フレーズが頭の中によみがえる。
あの頃の私が何気なく過ごした日々が、差し戻されるかのように。


お題はこちらの「思い出相続税」から。

スランプに陥っておりまする……