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『カフネ』——家事代行から始まる、姉と元恋人の物語が沁みた|宵町観賞録

2025年本屋大賞を受賞した、阿部暁子さんの『カフネ』を読みました。Audibleで聴けると知って、長めの執筆時間に一緒に流していた作品です。

タイトルの「カフネ」はポルトガル語で、愛する人の髪にそっと指を通す仕草、と解説にありました。本の中でその言葉がどう回収されるのかを意識しながら、読み進めました。

ざっくりあらすじ

主人公は、最愛の弟を急死で亡くしたばかりの姉・野宮薫子。弟の遺志に従って、会ったこともない弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになります。ところが、せつなは無愛想で、薫子は怒りと疲労でその場で倒れてしまう。薫子自身も、離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていたところでした。

せつなが作ってくれた一皿の手料理と、家事代行サービス「カフネ」という仕事。そこから、二人の時間が少しずつ動き出していきます。

刺さった点

痛みを、急がずに書いているのが一番残りました。弟を亡くした薫子の感情を、「癒やし」や「前向き」のほうへ急かさない。読み手に対しても、せつなに対しても、距離の詰め方が丁寧で、「まだそこにいていいよ」と言われているような感触がありました。

「食べること」の描き方が具体的なのも印象的でした。料理の工程や香り、冷蔵庫の中身まで書き込まれているのに、レシピ小説の雰囲気にはなりません。食べることが、生きることと同じ重さで置かれている。そこが心地よかったです。

関係の描線が細い。姉と元恋人という、くっつきも離れもできそうな距離にいる二人の間に、いろんな湿度の会話が重なっていきます。一人の物語ではなく、二人の物語で進んでいく感触が好みでした。

読み心地

テンポは静かめで、派手な山場で盛り上げるタイプではありません。それでも途中で止まらなかったのは、家事の細部と会話のリズムが、読んでいて気持ちいいからだと思います。感情の動きはゆっくり・深く、という印象です。読み終えたあと、自分の部屋を軽く片づけたくなりました。

書いている身として気になったこと

「静かに痛みを書いて、それでも読者を離さない」のは、自分には難しいタイプの文章です。盛り上がりで引っ張るのではなく、細部の手触りで読ませる。どの段落もサボっていない書きぶりで、真似してみたいと思いました。

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喪失のあとの生活をゆっくり立て直していく話に引っかかりやすい人には、刺さるかもしれない。食べる場面を丁寧に書く小説が好きな人にも、相性がいいかもしれない。

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#本屋大賞 #カフネ #阿部暁子 #Audible #読書記録 #小説 #宵町観賞録

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