伴走支援は集客段階から始まっている――「誰に、どの言葉で出会うか」が、すでに支援を規定している
■ 伴走支援は集客段階から始まっている
――「誰に、どの言葉で出会うか」が、すでに支援を規定している
伴走支援という言葉から、多くの人は「契約後に始まる支援」を思い浮かべます。
定期的な面談があり、課題整理があり、行動計画があり、そのようなイメージです。
しかし、成長ドライバ理論の視点で見ると、伴走支援はそれよりもはるか前から始まっています。
それは、経営者が「この人に相談してみよう」と思った、その瞬間です。
■ 集客とは、期待を形成する行為である。
経営支援における集客は、単なる営業活動ではありません。
集客とは、「どのような支援が行われるのか」という期待を、事前に形成する行為です。
経営者
「正直なところ、すぐに答えをくれる人だと思って来ました。」
この言葉が出てくるとき、支援はすでに難しい局面に入っています。
なぜなら、経営者の期待が「助言」や「解決策」に向いているからです。
成長ドライバ理論の視点では、ここで一つの影響の伝播が始まっています。
集客時の言葉が支援の進め方を規定し、経営者の構えを固定し、結果として伴走支援の可能性を狭めてしまうのです。
■「答えを出す人」として集客した場合に起きること。
例えば、次のような集客メッセージを考えてみましょう。
「業績改善の具体策をお伝えします。」
「課題解決を短期間で実現します。」
これらの言葉は魅力的ですが、その言葉で集まってくる経営者は、どのような状態でしょうか。
多くの場合、早く答えが欲しい、判断の負担を減らしたい、自分で考える余裕がない、という状態にあります。
この状態で伴走支援を始めると、支援者は「助言者」として振る舞うことを期待されます。
結果として、経営者の意思決定、判断基準、覚悟といった領域に触れないまま、部分的な改善だけが積み重なっていきます。
成長ドライバ理論で言えば、ビジネスモデルやシステム化だけが動き、経営者や理念のドライバには触れられない状態です。
このズレは、後になって必ず表面化します(東渕, 2017, 2020)。
■「一緒に考える支援」として出会うということ。
一方で、集客の言葉を次のように変えると、出会いの質は大きく変わります。
「経営の迷いを整理する支援です。」
「答えを出す前に、一緒に考える時間をつくります。」
この言葉に反応する経営者は、すぐに答えが出ないことを受け入れており、自分で判断する覚悟をどこかで持っています。
経営者
「何を相談すればいいかも、正直まだ整理できていません。」
この一言は、伴走支援が成立する重要なサインです。
成長ドライバ理論の視点では、この時点で「社長(ドライバ)」がすでに動き始めていると捉えることができます。
■「初回面談で、すでに支援は始まっている。
集客を経て行われる初回面談は、情報収集の場ではありません。
伴走支援の性格が決まる場です。
伴走支援者
「今日は、答えを出す場ではありません。
どこで考えが詰まっているかを、一緒に見たいと思っています。」
この一言によって、経営者は「評価される場」から解放され、「考えてよい場」に入ります。
この時点で、行動環境が整えられ、サポートの見通しが生まれ、影響の伝播に耐えられる関係がつくられます。
これは、契約書に書かれていない重要な支援プロセスです。
■ 集客段階で、何を約束しないか。
伴走支援者にとって重要なのは、集客段階で「何を約束しないか」です。
短期間での成果、明確な正解、成功モデルの適用。
これらを約束してしまうと、支援者は後から自分で自分の手を縛ることになります。
成長ドライバ理論の観点では、経営は文脈依存的であり、ドライバ間の影響は企業ごとに異なります。
そのため、結果を先に約束すること自体が、理論と矛盾します。
■ 集客は、支援者自身の覚悟を問う。
最後に強調しておきたいのは、集客は経営者だけでなく、支援者自身の覚悟も問うという点です。
答えを出さない支援、すぐに成果を見せない支援、影響の連鎖に耐える支援。
これらを選ぶということは、支援者自身が「評価されにくい道」を選ぶということでもあります。
成長ドライバ理論を基盤にした伴走支援は、集客段階からすでに始まっており、そこで交わされる言葉が支援の質を決定づけています。
次章では、こうした前提のもとで、伴走支援がどのようなプロセスを経て進んでいくのかを、時間軸に沿って整理していきます。
参考文献
Argyris, C., & Schön, D. A. (1996). Organizational learning II: Theory, method, and practice. Addison-Wesley.
March, J. G. (1994). A primer on decision making: How decisions happen. Free Press.
東渕則之 (2017). 「成長ドライバ理論による良い会社づくりのアプローチ」松山大学論集
第29巻第3号, 55–100。
東渕則之 (2020). 「成長ドライバ理論が拓く総合経営診断の新たな地平 ―その理論と実践報告―」日本経営診断学会論集19, 50–56。
