「良い会社」と「偉大な会社」は同じなのか― 成果では見えない“経営のメカニズム”を考える ―
成果で見れば、この二つは明確に区別されます。
では、会社が動いているメカニズムで見たときは、どうでしょうか。
『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』という有名な本があります。原題は Good to Great です。
直訳すれば、「良い会社から偉大な会社へ」です。
では、この本でいう「良い会社」「偉大な会社」とは、どのような会社なのでしょうか。
簡単に言うと、ジム・コリンズたちは、長い期間にわたって市場平均を大きく上回る成果を出し続けた会社を「偉大な会社」として捉えました。
ここでいう「成果」とは、売上や利益だけではありません。株主価値、すなわち株価の長期的な累積リターンです。企業のさまざまな活動の結果が最終的に反映された指標として、株価を用いている点に特徴があります。
つまり、かなりはっきり言えば、成果で見ています。
これはとても分かりやすい考え方です。
■Good to Greatが示したもの
実際に成果を出している会社には、何か理由があるはずです。
その理由を探ろうとしたのが、この本です。
同書では、レベル5リーダーシップ、ハリネズミ・コンセプト、規律の文化、弾み車など、有名な考え方が示されています。
どれも非常に示唆に富んでいます。
ここで、それぞれをごく簡単に整理しておきます。
レベル5リーダーシップ:謙虚さと強い意思を併せ持ち、個人ではなく会社の長期的成果を最優先にするリーダー像。
ハリネズミ・コンセプト:「情熱」「世界一になれること」「経済性」が重なる領域に集中するための思考枠組み。
規律の文化:外からの統制ではなく、自律的に規律を守る人材と行動が組織に根づいた状態。
弾み車:小さな正しい取り組みの積み重ねが回転を生み、やがて加速して大きな成果につながるという考え方。
これらは非常に重要な示唆を含んでいます。
ただ、ここで一つ注意が必要です。
株価は、確かに企業活動の結果を統合的に表す指標ではありますが、それ自体が「なぜその成果が生まれたのか」を直接説明してくれるわけではありません。市場環境や将来期待の影響も含まれるため、企業内部の状態との関係は間接的になります。
つまり、
結果は見えても、その背景にある仕組みや動きは見えにくい
という側面があります。
■メカニズムという見方
ここで、見方を少し変えてみます。
コリンズは、偉大な会社に「どのような特徴があるか」を示しました。
一方、成長ドライバ理論は、良い会社が
「どのようなメカニズムで動いているか」を見ようとします。
ここでいうメカニズムとは、単なる要素の並びではありません。
要素がどのように関係し合い、どのように動き、どのようなプロセスを通じて結果が生まれているのか。
その全体です。
■構造とは何か
この意味で、成長ドライバ理論では会社を「構造」として捉えます。
ただし、ここでいう構造は、一般的な意味とは少し異なります。
構造とは、要素の配置だけでなく、相互作用やプロセス、すなわち“どのように回っているか”までを含んだものです。
言い換えれば、それは会社の動き方そのものです。
■相互作用としての経営
成長ドライバ理論では、良い会社を、
社員を大切にし、社員と会社がともに成長する会社
と考えます。
そのために重要なのが、
社長、理念・ビジョン、ビジネスモデル、システム化・型決め、行動環境という五つのドライバです。
これらは一方向ではなく、相互に影響し合います。
現場が経営に影響し、
仕組みが理念の浸透を左右し、
ビジネスモデルが行動を規定します。
すべてが影響し合いながら動いています。
■成果はどのように現れるか
ここで、成果の捉え方も変わります。
成長ドライバ理論では、成果を単一の指標で捉えません。
社員の成長。
仕事の仕組みの進化。
顧客満足の向上。
そして財務成果。
これらは独立したものではなく、つながっています。
社員の成長、仕組みの進化、顧客満足は先行して現れ、
財務成果は時間差を伴って表れてきます。
ただし、一直線の関係ではありません。
それぞれが影響し合いながら重なり、
結果として財務に表れます。
成果は、構造の中で相互作用しながら現れるものです。
■会社の健康診断という方法
この考え方を具体的に測定するのが、「会社の健康診断」です。
会社の健康診断では、
・社長
・理念・ビジョン
・ビジネスモデル
・システム化・型決め
・行動環境
という構造そのものを測定します。
あわせて、
・社員の成長
・仕組みの進化
・顧客満足
・財務成果
も把握します。
これにより、
成果と構造を同時に見ることができる
ようになります。
■まとめ
コリンズは、偉大な会社を発見しました。
成長ドライバ理論は、そのメカニズムを説明します。
会社の健康診断は、それを測定します。
この三つは対立するものではなく、補完関係にあります。
そして最後に残る問いは一つです。
会社は、どのように動いているのか。
ここに向き合うことが、良い会社づくりの出発点になります。
