伴走支援のプロセス全体像――診断から、変化が定着するまで

伴走支援のプロセス全体像
――診断から、変化が定着するまで

ここまでで、成長ドライバ理論が経営をどのように捉えているのか。
なぜ助言ではなく伴走が必要なのか。
そして、伴走支援が集客段階から始まっている理由を見てきました。
ここでは、それらを時間軸に沿って整理し、伴走支援がどのようなプロセスで進んでいくのかを示します。
重要なのは、伴走支援が直線的な手順ではなく、行きつ戻りつを前提としたプロセスであるという点です。

■プロセスを描く理由。
経営支援の現場では、しばしば次のような問いが出てきます。
経営者
「結局、何から始めて、どこを目指せばいいのでしょうか。」
この問いに対して、単純なロードマップを示すことは簡単です。
しかし、成長ドライバ理論に基づく伴走支援では、あえて詳細な手順書を示しません。
なぜなら、経営は文脈依存的であり、ドライバ間の影響が企業ごとに異なるからです(東渕, 2017, 2020)。
そのため、プロセスの目的は「正しい順番を守ること」ではなく、「判断を誤らせない構造をつくること」にあります。

■ 第1段階-診断によって、全体像を共有する
伴走支援の最初の段階は、診断です。
これは評価や格付けのためではありません。
経営者と支援者が、同じ地図を見るための行為です。
伴走支援者
「この診断は、できているかどうかを見るものではありません。
良い会社づくりがどこでが止まりやすいかを見るためのものです。」
診断を通じて可視化されるのは、
・強みと弱み
・ドライバ間のズレ
・経営者自身の判断の癖
といった要素です。
この段階で重要なのは、すぐに行動に移さないことです。
まず大切なのは、これまで経営者が決められなかった理由を、自分なりに理解することです。
やる気や覚悟が足りなかったからではなく、判断を難しくしていた背景や前提に目を向けることが優先されます。

■ 第2段階-対話によって、意味づけを行う
診断結果は、それ自体では意味を持ちません。
意味づけは、対話の中で行われます。
経営者
「こうして見ると、
理念と現場の間で、ずっと迷っていた気がします。」
伴走支援者
「その迷いは、どの判断場面で強く出ていましたか。」
この対話を通じて、診断結果は「数字」や「項目」から、経営者自身の経験と結びついた理解へと変わっていきます。
組織学習論では、こうした意味づけのプロセスが変化の前提条件であるとされています(Argyris & Schön, 1996)。

■ 第3段階-小さな行動実験を設計する
理解が進んだ後に、初めて行動が検討されます。
ここで重要なのは、「大きく変えない」ことです。
経営者
「まずは、会議の進め方だけ変えてみようと思います。」
このような小さな行動は、
・行動環境
・システム化・型決め
・信頼
といったドライバに限定的な影響を与えます。
成長ドライバ理論の視点では、これは意図的な影響の制御です。
一気に複数のドライバを動かすと、影響の伝播が読めなくなります。
だからこそ、行動はまずはあえて小さく設計されます。

■ 第4段階-揺り戻しを前提として関わる
実際、行動を始めると、必ず揺り戻しが起きます。
経営者
「一度は任せてみたのですが、
やはり途中で口を出してしまいました。」
この揺り戻しは、失敗ではありません。
むしろ、影響の伝播が現れ始めたサインです。
伴走支援者は、この段階で評価や修正を急ぎません。
なぜ揺り戻しが起きたのか。
どのドライバに影響が出たのか。
それを一緒に振り返ります。

■ 第5段階-変化が「型」として定着する
試行錯誤を重ねる中で、次第に変化は個人の工夫から、組織の型へと移行していきます。
・判断基準が共有される。
・会議の進め方が定着する。
・任せ方に一定のリズムが生まれる。
この段階では、支援者の関わりはさらに控えめになります。
変化の主体が、完全に経営者と組織側に移るからです。
成長ドライバ理論に基づく伴走支援のゴールは、
「支援が不要になる状態」をつくることです。

■ プロセスは、行きつ戻りつで進む
ここまで五つの段階として整理しましたが、実際には直線的に進むことはほとんどありません。
診断に戻ることもあれば、対話に時間をかけ直すこともあります。
この往復運動こそが、経営の現実です。
成長ドライバ理論は、この揺らぎを前提としたプロセス設計を可能にします。
次稿では、こうしたプロセスを支える伴走支援が、
うまくいく場合とうまくいかない場合で、何が分かれているのかを整理していきます。

参考文献
Argyris, C., & Schön, D. A. (1996). Organizational learning II: Theory, method, and practice. Addison-Wesley.
March, J. G. (1994). A primer on decision making: How decisions happen. Free Press.
東渕則之 (2017). 「成長ドライバ理論による良い会社づくりのアプローチ」松山大学論集
第29巻第3号, 55–100。
東渕則之 (2020). 「成長ドライバ理論が拓く総合経営診断の新たな地平 ―その理論と実践報告―」日本経営診断学会論集19, 50–56。

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